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17/30

17.侍女アリサの思うこと

◆パルセノス侯爵邸内 アリサ視点3


 季節も巡り、わたくしもまた一つ歳を重ねました。ふふ…【詳細】のご期待には沿えませんよ。


 リカルド様も18歳と成られ、学園生活ももう終盤に差し掛かっておいででございます。

 卒業後は次期侯爵として本格的に領主の仕事を手伝われる事でしょう…いえ、幼少のみぎりから関わっておられましたか。(神童案件:孤児院改革・教育改革・治水対策・公共施設医療施設の増設 etc)


 …あとは【お嫁様】ですね。わたくしがお見受けしたところ、よくこちらにいらっしゃるミリア・ペタルーダ子爵令嬢が最有力候補ではないでしょうか……

 申し訳ございません。見栄をはりました。他に候補はいらっしゃいません。彼女一択でございます。


 エステルお嬢様の、ブラコン関連のあれやこれやを躱せる唯一無二のご令嬢にございますれば、絶対に逃がすわけには参りません。ええ、既に旦那様や奥様も準備万端でお待ちです。


「あ、アリサさん。やっぱり今日もエステル様はお出かけですか?」

「はい。本日は公子様と美術展を見に行かれました」


「えっと…柱のかげからだと話辛くないですか?前に出てきていただいて大丈夫ですよ。アハハ…」

 ありがとうございます。実は半分しか見えない状態の体勢は少し辛うございました。


「アリサ…今日もミタってたのか」(リカルド様語録:見張る=ミタる)



 エステルお嬢様はあと2年もしないうちに嫁がれる事でしょう。お話によると、公爵家の皆様はエステル様をとても大切になされているご様子…良かったですね。とても感慨深いです。


 まだ小さかったリカルド様が、ご自身の年齢を顧みず『育児に参加する』とおっしゃた時は、普段表情筋が仕事を放棄しているわたくしですら頬が引き攣る事態となりました。


 小さなお子様が、より小さなお子様を【叱り】【あやし】【宥め】【見守る】…パルセノス侯爵邸は何処よりも温かい空気に包まれた職場となり、かく言うわたくしも『絶対に辞めたくない』と思っておりました。

 



 15年前のパルセノス邸。


「きみがエステルのじじょか、たがいにせっさたくましていこう。よろしくたのむ」ペコリ


 切磋琢磨=互いに励ましあい、向上を目指す事…であるが、当時まだ(ギリ)10代だったアリサは難しい言葉が分からなかった。


 15歳の時、実家から行儀見習いと称した口減らしで放り出された。学園に行けなかったので学は無いのだ。幸いパルセノス邸で、厳しくも優しい侍女頭に基本的なマナー等を教わり現在に至る。


「こちらこそ、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます」ペコリ


 言葉の意味は分からなかったが、とても賢そうなお坊ちゃまだわ。高位貴族のお子様はやはりうちの弟達とは次元が違うのね。後で色々と教えていただこうと思った。(ミタる方法ものちに教わる)


 そんなふたりのやり取りに終始あわあわする侯爵夫妻。そして4年後に、この侍女から娘の友人を買うお金を要求されるとは、夢にも思わない侯爵夫人であった。




 ミリアお嬢様に新たなお茶を給仕しておりますと、

「リカからアリサさんの事聞きました。エステル様のお世話をしていた時タッグを組んでいて、とても助けてもらったって。エステル様もアリサさんの事すごく感謝されてるんでしょうね」


 嬉しい事を仰る。もしそうならば、身に余る光栄でございましょう。

「感謝してるから、アリサの小言も素直に受け入れているんだと思うぞ」


 幼少期に比べ、最近は小言の量もめっきり少なくなりました。

 それだけエステルお嬢様が、わたくしの注意を聞き入れてくださったという証なのですね。

 その小言が言えるのも、もうあとどれ程でしょうか。


「アリサさんって万能侍女っぽいから頼りになりそう」

「俺に子供が出来たらやっぱり侍女はアリサだな。安心して任せられる」


 ミリアお嬢様は使用人にも気を配って下さる素敵なお嬢様で、我々使用人の間でも密かに人気でございます。

 時折リカルド様にも通ずる不思議な感性を披露されますが、そこも魅力的に感じます。


 お二人にお子様が出来たあかつきには、きっと【お世話係争奪戦】が始まるのでしょうね。ふふ…誰にも負けるつもりはございませんよ。



 子沢山な家庭の長女に生まれ常に弟妹の面倒を見続け、親の愛情など欠片も感じた事がございませんでした。

 【闇属性】であった事も要因の一つだったのでしょう。役目が終わる頃には、学費を惜しんで口減らし同然に外に出され連絡すらもありません。

 あの家には最初からわたくしの居場所は無かったのでしょう。とはいえ、それを悲しいと思う気持ちすら湧いてくることが無いわたくしも、大概薄情なのかもしれませんが…。



 パルセノス侯爵家に雇われ、エステルお嬢様の侍女に起用されリカルド様と共闘する毎日は、わたくしにとって掛け替えのないものでございました。そしてまた、エステルお嬢様の侍女という職が無くなったとしても、新たな居場所を用意してくださいます。


「有難うございます。わたくしもおふたりのお子様にお会いできる日が楽しみです」

「「エエッッ⁉⁉」」


 ふふ…おふたり共お顔が真っ赤にございますよ。これできっとお互いを意識なさいます事でしょう。


 わたくしいい仕事をいたしましたでしょう?エステルお嬢様には『余計なことを』と怒られてしまうかもしれませんが、お嬢様にもそろそろブラコンを卒業していただかなければなりませんしねぇ。


 わたくしはアワアワされているおふたりを残し、その場を後にしたのでございます。




[おまけ]~戻ってミタ(る)~


リカルド「ミ、ミリア!気にするな。モブの俺なんかが」


ミリア 「リカは、わたしにとってモブなんかじゃ無いよ!ヒーローなんだからね!」


リカルド「……ミリア(真っ赤)」


ミリア 「えへへ…(真っ赤)」


アリサ  ガゼボの柱から(じーーーーーーーーーー……)





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