15.【セイテン】第二回ユーザーズ会議①
◆パルセノス侯爵邸 ガゼボ リカルド(17歳)視点16
「きゃん!きゃん!」
今日はミリアとリコスが遊びに来ている。いや遊んでいるのはリコスとカゲローだが…
「エステル様は?」
「公爵家に行って未来の公爵夫人のお勉強らしい」
と言っても、たぶん公爵夫人がエステルを甘やかし倒しているんだろうけど。
エステルがせっかく家に来ても夫人に取られるって、レオンがぶつぶつ文句言ってたっけ。【氷】の貴公子様が段々溶けてきたな~。
「ミリアが来るって言ったら、リコスの為にカゲロー置いて行ったよ」
うちの天使が優しすぎるっ!そろそろ聖なるモノにジョブチェンジするんじゃないか?
「新入生も入ってきたけど、結局ヒロイン見つからないね~。やっぱり【悪役令嬢ルート】確定かなぁ」
確かに未だ【聖属性】を持つ者は現れないし、エステルのルートなら『エステルが攻略対象の誰かと結ばれる』はレオンの事だろう?じゃあもう特に警戒する事も無いのか?
そもそもヒロインが現れたとしても、攻略対象がほぼ売約済みだ。
レオンは言わずもがな、ステファンは留学中のディアナ嬢と『毎日』手紙を遣り取りするくらいラブラブ。
ヨハンも辺境伯令嬢である婚約者にメロメロだ。なんでも2歳下の14歳らしいが、趣味は武者修行で辺境の猛者たちも一目置いているらしい。戦ってる姿が【戦女神】だと言っていたな…ちょっと見てみたい。
カイゼルに至っては、だいぶ前に婿入りしたんだが、先日娘が生まれてパパになったそうだ。赤毛の強面がめちゃくちゃニヤケててだいぶ引いた。ステファンも引いてた。
残るは隣国の第二王子だけど…来る予定はなさそうだしなぁ。
◆ 同 ミリア(16歳)視点5
「本来ならそろそろ聖女に覚醒するイベントとかあったはずだけど…【悪役令嬢ルート】だとヒロインの覚醒も無いのかもしれないね」
「エステルのルートだと、最後にバトル的なモノがあるんだろ?あの『薙ぎ払え』のヤツ」
「そうなの~ あ~もう!詳細が出てこない~」
頭をポカポカしてみるが、やっぱり思い出せない。お金無くてプレイ出来なかった事が悔やまれる…
「借金してでもやっておけばよかった~~~」
「な~に言ってんだ。借金してまでするもんじゃないぞゲームなんて…経済観念があって偉いじゃないか!」
…褒められて嬉しいんだけど、親目線?なのが…ちょっとだけ残念…かな。
[おまけ]~侍女は見た~
エステル「今日はミリア様が来るそうですわ。密室に二人きりとか許しません!お庭のガゼボで!影ちゃんも置いていきますけど、アリサもしかと見張るように!」
アリサ ガゼボの柱から(じーーーーーーーーーー……)
ミリア (めっちゃ柱のかげから見てくる家〇婦のヤツ~~~しかも結構近い~)
◆アエトース公爵邸 レオン(17歳)視点5
私も最終学年になり、いろいろ忙しい状況になりつつある…筈なのだが、
「レオ~ン。これに着替えなさぁい。エステルちゃんはこっちにいらっしゃい♡」
休日のエステル嬢との茶会を度々母上に邪魔されていて、今日も今日とて……
「母上。いったい何を」
「いいから!さっさとしなさい!エステルちゃんは隣の部屋でお着替えね~」
と、彼女を連れて行ってしまった。
仕方なしに置いて行った服を手に取る。貴族が着る服ではないな、裕福な平民が着る様な…。
「はぁ~い!じゃあいってらっしゃ~い♪」
同じく平民風ワンピースに着替えたエステル嬢がエントランスに立っている。
「えっと、母上?」
「やぁね~デートよ!お・し・の・び・でぇ・と♡きゃ~~~」
…自分の母親(アラフォー世代)がくねくねしているのを見るのは正直言ってキツイ。エステル嬢の顔も少々引き攣っているな。
しょうがない。行くか…
「エステル嬢はどこか行きたい所はありますか?」
「えっ!あ、えっと…レオン様にお任せしますわ」
惚けていた彼女に声をかけると、驚いて少し跳ねた。うん、愛らしい。
「…その、その様な格好のレオン様を見たのは初めてで…」
私もエステル嬢のその姿は初めてだよ。
「…ちょっとワイルドで…カッコいいと…ちょっと!ちょっと思っただけですわ!」
また私の息の根を止めるつもりか…。母上…もしかして新手の修行ですか?
「(まったく…)エステル嬢は何を着ても可愛いですね。他の男どもに見せるのが勿体ないです。私から絶対離れないで下さいね」
悔しいので仕返しに褒め殺ししておいた。顔が真っ赤だ…ふふ。
「レオン様!レオン様!ほらっ見て下さい!なんて面白いんでしょう!」
淑女という名の猫はどこかに落としてきたのかな?行った先々で感動が待ち受けている様で、好奇心旺盛な面もあるのだな…新発見だ。母上に少しだけ感謝しておこうか。
「よ~う。楽しそうだなぁ、お嬢さん。俺たちもまぜてくれねぇか」
ニヤニヤと下卑た笑いを浮かべた破落戸が三人…あと見張り役が二人いるな。護衛が動こうとしたが、あまり騒ぎを大きくしたくない。巷ではまだエステル嬢の噂が完全に消えたわけではないからな。
護衛に『動くな』と目線を送る。
「何ですかあなた方は?見ての通り“ふたりきり”でデート中なのです。邪魔しないでください」
「は!お上品はやつだな!貴族か?」
「色男、金持ってんだろ?恵んでくれよ~」
「お嬢さん。もっと面白いところに連れて行ってやるぜ~イテっ!」
エステル嬢の方へ手を伸ばしてきたので叩き落とす。汚い手で触るな。穢れるだろうが…
彼女はこの状況に困惑しているが、今日は影ちゃんが留守番でよかった。ここでアレを出したらまた噂が再燃するからな。
それに、たまには婚約者らしい所も見せないと。いつまでもリカルドに負けているわけにはいかない。
「知っているか?我が国の王様はとても勤勉で優しい方だが、貴族であれ平民であれ【怠惰】な輩が嫌いでな。お前達みたいな奴の事だよ。そして私も大嫌いだ。とっとと失せろ」
「んだとお‼………ひっ⁉⁉」
殴りかかってきた男の腕を掴み、そのまま
「や!やめろ‼」
ピキピキと音を立てて掴んだ場所から氷が発生する。
本当ならこの辺り一帯を凍らす事も出来るけど、エステル嬢が風邪をひくと困る。
徐々に氷は広がって、男の肩にまで到達していた。
「【氷属性】持ちか⁉離せっ‼」
男は仲間の所まで飛び退った。賢明だな…内臓まで凍れば命に関わる。
「早く溶かさないと腕が無くなるぞ。いいのか?」
「おいっ火!いやっ湯か‼」
「いくぞ!はやくしろっ!」
破落戸達がバタバタと去って行く…。その事に周囲の人間が驚いているくらいで、騒ぎにはなっていない。
…ただ…あれは…?
「はわわわわ……」
「ん?」
キラキラ眼のエステル嬢。
「すごい!すごいですわ!ピキピキって!カッコいいですわ!」
猫…完全にどっか行ったな。きゃいきゃいとはしゃぐ彼女は年相応でやっぱり可愛かった。
「王宮の王太子殿下に『伝えたい事がある』と先触れを出しておいてくれ。帰ったら王宮へ行く」
護衛の一人に使いを頼む。
「はっ!」
破落戸達が消えた裏路地に入って行ったフードの男…顔など見えなくてもわかる。
あれは、サーヴラ・クロタリアス公爵だ。




