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14.断罪したい男と断罪させない女

◆聖バルゴ学園 卒業式 リカルド(17歳)視点15


 今日は三年生の卒業式。


 会場には卒業生とその親。教師陣に来賓のお偉いさんが多数。会場に入りきらないので在校生は今日は来ない。

 下級生は俺たち生徒会だけだ。


 因みに三年生の役員が抜けるので、見かけによらず実は成績優秀者のミリアにも入ってもらった。【前世チート】ってヤツだな。

 ステファンが変わらず会長でレオンが副会長に昇格、ヨハンが書記でミリアが会計。

 エステルが『お兄様と一緒がいい!』と“かわいい”我儘を言ったので、二人で庶務だ。仕方ないな~ ニヤニヤ


 式が始まり、学園長の挨拶・来賓の祝辞・卒業生の言葉…と続いていく。


 そうして、在校生の挨拶としてステファンが壇上に上がった。

 キラキラ王子様に三年生の女子が桃色吐息だな~…あぁ一部の保護者席も…か。


「……皆さまの往く道に幸多からん事を。以上を持ちまして送辞とさせ」

 パチ…パチ…パチ まだ祝辞の途中にも関わらず、一人分の拍手が場内に鳴り響いた。


「さすが王太子。素晴らしいお言葉だ」

 最前列の端に座っていたオーフィスが、立ち上がって壇上に近づいていく。


「オーフィス君!なにを」

 教師が止めようとするが、

「ちょっとこの場を借りて、殿下とここにいる皆に聞きたい事があってな」


「…ほう。なんだ?」

 やはりこのタイミングか。


「巷では、そこにいるエステル・パルセノス侯爵令嬢の噂話で持ち切りだ。皆も聞いた事あるだろう?」


 会場がざわざわし始める。エステルはレオンに支えられているが、少し顔が青い。こうなる可能性は全員で周知していたので、エステルも覚悟の上だが内心ショックだろう。


「でも彼女が傲慢だったりするのは、彼女が【闇属性】持ちだからだ」


 会場のざわめきに「ひゅっ」と息を吞む音が混じるの聞いたオーフィスは、手ごたえを感じているのだろう。

 壇上に上ると、


「【闇属性】ゆえに傲慢で、自分より下位の者に辛辣にあたると聞いたぞ。そこに居る子爵の娘に厳しく当たっているところを見た者も多い。それにその隣の男に近づく令嬢達を、闇魔法で使役している黒い魔物に排除させているらしいじゃねえか」


 勝った!とばかりに、指差してエステルとレオンを傲岸不遜に見下ろした。レオンの周囲の空気が冷える。

 普段は冷静な奴だが、怒ると【氷属性】だけあって周りが氷点下になる。風邪ひくから止めて!寒い!

 


「異議あ~り。有り寄りのあ~り」


 片手をピンと上げたミリアの間延びした声に空気が温む。さすが元ヤマンバヒロイン。

「はあぁぁ⁉」


「えっと、オーフィスさんでしたっけ?まるで私がエステル様にひどい事されたみたいに言いますけどぉ。あなたはソレ見たんですか?何日の何時何分ですか?まさか、まさかですけどぉ人に聞いただけ~なんて曖昧な答えなんかじゃ納得しませんよ!」


 さぁさぁ!とオーフィスを問い詰めるミリア…強い。


「…な…んだこの女」


「そもそも厳しくされたって言ってますけど、マナーについて注意されてただけですし~貴族がマナーに厳しいの当たり前ですよね?そんな事言ってたらマナーの先生は全員いじめっ子になっちゃいますよぉ?」


 ミリアのマシンガントークに、オーフィスがたじろいでいる。まさかそっちから攻撃が来るとは思わなかったのだろうな。

 ミリアは『薙ぎ払え』スチルを見てから【エステル推し】なんだからな~。


「くっ…ではあの黒い闇魔法についてはどうなんだ!実際に排除された女達から聞いたんだぞ!レオンハルトを好きだったのに嫉妬したエステル嬢の力で排除されたと!」


「え、違いますわ。レオン様から浅はかにも、【お兄様】に乗り換えようとしていた令嬢に『お仕置き』したのですわ」

 しれっと答えるエステル。…んん…?周囲も首を傾げている。ん~~~


「私はまだ、私の事で嫉妬するほどエステル嬢に心を傾けてもらえてないですし、エステル嬢が何かするのはリカルドがらみが殆どですからね」

 レオンもしれっと言う…ん~~~~~ん?


「え、もしかして…俺に女性が寄り付かなかったのって…」


「わたくしの『おかげ』ですわ!」

 胸を張ってドヤ顔のエステル。そうか…モテないわけではなかったのね…けど、うちの天使ってば…


「「「「ブラコンッ!!!! (満場一致)」」」」

 

 皆の心が一つになった瞬間だった。

 


「で、結局のところ従兄弟殿はいったい何が言いたかったのか?まさか、このブラコンでポンコツのエステル嬢は【闇属性】で危険!だから【光】以外に【闇属性】も持ってる私も危険で【王太子】は向かない!とかかな?」


 ステファンもしれっと突然のカミングアウト。


「「「「「ええええええええーーーーーーー!!!!!!」」」」」



「な…なんで自分で…」


「いつか公表する事だし別に今でも構わない。王も『お前の好きにしろ』と言っていた」


「くそっ!…皆、聞いただろう!ステファン殿下は【闇属性】だ!あの黒い魔物を使役して、何を始めるか分からないんだぞ!」

 追い詰められたオーフィスが苦し紛れに言う。


「影ちゃんは良い子です!でないとリコスが懐いたりしません!」

「きゃん!きゃん!」

 そうだ!そうだ!って言ってるみたいだな。


「わ、わたくし!パルセノス侯爵令嬢の【影ちゃん】とペタルーダ子爵令嬢の【リコスちゃん】が遊んでる姿を見るのが好きでしたの。もう卒業で見られなくなるのが残念なくらいですわ」


 卒業生の令嬢がしょんぼりそう言ったのをきっかけに、「わたしも」「おれも」と賛同者が現れる。

すると、エステルの影からカゲローがひょっこりと出てきた。


「きゃうん!」

 戯れだす2匹(?)。張りつめていた空間が一気にほんわかムードに変わる。

「「「「「「かわいいぃぃ~~~~~」」」」」」


 もう誰もオーフィスの事を見ていない。

「もう諦めたらどうかな。従兄弟殿。ディアナは私のものだから」

 ステファンは黒い微笑みでオーフィスを震え上がらせた…



 因みに、後で知ったんだけど「ひゅっ」と息を吞んだのは、隠れ【闇属性】の方々で、あれ以来ステファンを信奉しているらしい…。結果オーライってヤツなのか?

 





◆王宮 王の執務室 ステファン(17歳)視点5


 卒業式で起こった騒動の詳細を父上と宰相に報告する。


「そもそもオーフィスの計画には無理があったと思いますね。エステル嬢の噂も…リカルドに育てられた彼女が傲慢になるわけがない」


 父上と宰相は揃って『うんうん』頷いている。学園内の者たちも同じ気持ちだろう。噂を鵜呑みにしていたのはパルセノス侯爵家を知らない者たちで、普通の王都貴族は歯牙にもかけなかったそうだ。


「【影ちゃん】についてもヤツはよく調べていなかったのでしょう。【影&リコス】の人気は、今や私とレオンの人気を超えていますから…ふふ」


「お前はどうなのだ?属性を公表して大丈夫だったのか?」

「問題ありません。私の周りには得難い者たちが集まっていますので、この程度では揺るぎませんから」

 卒業式を思い出す…私が何もしなくても彼らが動いてくれていた。



「ところで伯父上の様子はどうなのです?」

 あの場にクロタリアス公爵も居た筈だが、オーフィスを助けに来る事は無かった。


「ああ、影からの報告だと…」

 どうやらあの後、放心状態のオーフィスを怒り心頭で連れ帰ったようだ。その怒りは、『卒業式を騒がせた事』なのか、それとも『役立たずであった事』なのか…おそらく後者だろうが。



 伯父上の過去に父上も多少は同情している。ご自身が生まれなければ、異母兄であるサーヴラ殿が玉座に座っていたはずだから…


 けれど私は父上がお生まれになって、現王で在られて良かったと思う。

 父が居なければ私の存在も無いわけだが、そんな理由では無い。


 あの得体の知れないサーヴラ・クロタリアスという男が国王になれば、おそらくこの国はとんでもないことになる。だから私は、何があってもこの命を散らすわけにはいかない。


 もしその様な事態に陥ったならば、絶対にあの二人は道連れにしてやるつもりだ。

「ふふ……」


「殿下…また黒いのが漏れておりますよ」

「宰相、うちの子コワイ…」





[おまけ]~属性あつかい~


ステファン「会場の皆は、私が【闇属性】な事で確かに衝撃を受けたでしょうが、エステル嬢の【ブラコン属性】暴露の後では些かインパクトに欠けました」


王  「私も見たかったぞ。それ」


宰相  「仕事なんかしてる場合じゃありませんでしたな」


王  「……おま言う?」







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