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13.悪いうわさと黒い汗(?)

◆聖バルゴ学園 生徒会室 リカルド(16歳)視点14


 確かに俺は鈍いのかも知れない。けど…


「殿下やレオンは知っていて、何で教えてくれなかったんだ?」


 普通それとなく気づかせてくれるもんだろう?この前の忘れ物の時も…

 後でアリサに聞いて崩れ落ちたよ。俺の頑張りを返せっ!


「いや、あまりに気づかないから父上が面白がってな。いつか自分で分かるまで教えるな…と、レオン達にも口止めしていたんだ。許せ」


 クスクス笑いながら言うな!いまスッと目をそらしたカイゼル殿も知っていたんだな!通りで…あの時微妙な顔してて、てっきり殿下から離れる護衛の心配顔だと思っていたぞ!


「リカルド先輩!大丈夫です。僕は昨日教えてもらいました。先輩より後です!」

 今日から生徒会役員になったヨハン【攻略対象その4】が、ちょっとよく分からない慰めをしてくれる…


「でも『むしろ10年も気づかせない影ちゃん殿が凄過ぎる』と父が言っておりましたよ!」

 一層落ち込むリカルドとは対照的に、体?をくねらせてテレテレしている影ちゃんである。


「うう…お兄様ごめんなさい…」


 涙目の天使…エステルが悪いんじゃないよ!

「おいコラ!カゲロー!エステルを泣かせるな!」


「「「カゲロー???」」」

 何か悔しいから、こやつを『ちゃん』付けとかで呼びたくない!


「王家の【影】とややこしいだろ」

「…リカって命名に太郎・次郎ってつけるタイプだったのね」

 あ、確かに…元日本人の感性だったな。




「影ちゃん、リコスと仲いいんだよね~」


リカルドにバレてから遠慮なく遊べるようになって、楽しそうな2匹(?)


悔しいがカゲローは役に立つし、今まで俺の知らないところで、エステルを守ってくれていたんだよな…

「一応感謝はしてるぞ。カゲロー!でもやっちゃいけない事もあるからな。要相談だ」


 男子トイレに令嬢を放り込むのは駄目だ。主に男子が困る!俺が入っている時でなくて良かった…ホント


「ふふ…リカは良いお父さんになりそうだね」

 ミリアの純粋な笑顔に、心臓が大きく跳ねる。


「でも鈍いのは確かだね。わたしも男だって『半年も』思われてたしさ~」

「ぐふっ」

 トドメを…刺された……。






 オーフィス視点1


 場末の酒場 オーフィスは女給を二人侍らし、酒を飲んでいた。この国は18歳から飲酒が認められている。


「くそっ!」

「ご機嫌斜めですねぇ。この後【お部屋】で慰めてあげましょうかぁ」

 女給の一人が、豊満な胸をオーフィスの腕に押し付けて媚びた目線を送ってきた。


 先日の王宮廊下でのやり取りを思い出す。クラバットを指して尊大に嘲笑うステファン…(あくまでオーフィス目線)


「闇属性特有の嫌な笑い方だ」

 自分の父もよくそんな顔で笑っている…そして自分に『王太子になれ』と言ってくるのだ。


「何のはなしぃ~?おしえて♪おしえて~♪」

 もう一人の女が酒を継ぎ足し、オーフィスにしな垂れかかって来た。こちらはスレンダー体型であまり食指が動かない。


「最高に嫌いなヤツがいるんだよ」


 王太子の地位にはそんなに執着していない…ただ、

「俺のディアナ(初恋)を奪いやがったクソがな!」


 ディアナ・アルデバランは、アルデバラン公爵家の次女で現在17歳。隣国に留学中のステファンの婚約者である。


 プラチナブロンドに琥珀の瞳で微笑む美しい彼女…

 女遊びの激しいオーフィスではあるが、ディアナに対しては純愛に近い。


 どうにかして彼女を手に入れたいオーフィスを、父サーヴラが『ディアナは王太子妃になる娘だ。ならお前が王太子になればいい』とそそのかしてくる。


 そうだ、アイツが【闇属性】なのを公表してやればいいんだよ。大々的に!逃げ場のない公の場で!


 その為にはまず【闇属性】が忌むべき者であると知らしめねぇとな。


 …そういえば、アイツの腰巾着の妹が【闇】持ちで、面白いモノを連れていたな…アレを利用するか。

 【闇属性】の評判を最悪にすれば、ステファンを推す声も無くなるだろう…。


「アイツを引きずり降ろして、俺がディアナを手に入れる……おいっ!店主!部屋を借りるぞっ!」

 そう言って残った酒を煽り、豊満な方の女を腕にぶら下げて店の奥に消えて行った。




「『俺の』ねぇ…ふふ、野心駄々洩れ~♪さ・て・と……マスター!用事思い出しちゃったから、アタシ今日はもうあがるねぇ~♪」


 立ち上がったスレンダーな女は、【殿下初恋の君】の後輩にあたる【影】であった。

 特殊能力【読心】持ちで、相手が油断している状況下に限り、触れている相手の心を読む事が出来る。


「殿下に報告♪報告♪あと今日の業務日誌に『殿下は2歳だけど。オーフィス公子の初恋はけっこう遅め』って書かなきゃ~♪」


 宰相に余計な(面白)情報を与えているうちの一人でもある。

 そしてさり気なく初恋の黒歴史を拡散される、知らぬが花のステファンであった。





[おまけ]~ある日の【影】待機部屋Ⅱ~


影A「なぁ~殿下ってば初恋2歳って、早くないか?」


影B「そういえばその位の時、天井に向かって赤い薔薇を差し出してたな。あれってそういう事だったのかぁ」

  







◆聖バルゴ学園 生徒会室 ステファン(17歳)視点4

 

「っくし…」


 誰か私の陰口を言っているのかな? (おしい【影口】ですよ)


「殿下?風邪ですか?季節の変わり目は注意しなくちゃですよ。はいティッシュ」

 季節はめぐり、二学年も半ばに差し掛かった。リカルドの育児脳は絶好調のようだ。


「お前…のん気にしているが、あの噂の件。聞いているのだろう?いいのか?」

 巷では何故かエステル嬢の悪い噂が流れているのだ。聞けば『闇属性ゆえに傲慢で高飛車で横柄』なご令嬢なのだそうだ。しかし、この噂は学園内では聞かない。郊外や城下の市中で囁かれているのだ。


「【傲慢】・【高飛車】・【横柄】ってヤツでしょ」


「ごうまん・たかびしゃ・おうへい…G・T・Oだね!リカ!」


「『言いたいことも言えないこんな世の中』だから【噂(毒“POISON”)】がばら撒かれてるってわけか?」

「アハハ!うまい~うまい~」パチパチ


 …なんだか心配しているこちらが馬鹿みたいだ。お前たち本当にお似合いだよ。



「ただ今戻りました」

 レオンとエステル嬢が配達作業から戻ってきた。影収納の能力がとても役立つので、エステル嬢も生徒会に入って貰う事にしたのだ。


 戻るなり影ちゃんが出てきて、ミリア嬢のリコスと戯れだした。…確かにほっこりする。

 なにせ、リカルド曰く『ワイルドな赤髪+射殺す様な赤眼+眉間に皺の【強面】だが一定数需要があるイケメン』のカイゼルまでもが、若干にやけているからな…一般の生徒たちは普通にノックアウトだろう。



「噂の元は分かっていらっしゃるのでしょう?」

 ヨハンが皆にお茶を配りながら言う。我々の中で茶を入れるのが一番上手い。…女性陣は精進するように。


「ああ、以前に【影】から報告があったからな。卒業を前に本格的に動き出したのだろうな」

 噂の元凶はオーフィスだ。


 【闇】持ちのエステル嬢を貶めて、【闇属性】のイメージを悪くする。その後、私の事を公表して失脚させるのが狙いなのだろう。…浅はかな事だ。


 しかしそのせいで、エステル嬢にキズをつけてしまうとは…。

 私が負い目に感じている事を気遣って、リカルド達はふざけているのだろう。


「おそらく舞台はヤツの卒業式。心して掛からねばならんな」

 その時にエステル嬢の汚名も返上させてもらおうか。


「殿下…笑顔が黒々しいですよ。ヨハンがちびったらどうします」

「あ、父からいろいろ聞いているので大丈夫です!リカルド先輩」

 な・に・を???







[おまけ]~ヨハン君9歳のある日~


宰相 「いいか、将来お前がお仕えするステファン殿下は時々黒いモノを出されるが、あれは【生理現象】にちかい…例えば汗の様なものだから、怖くはないからな」


ヨハン「黒い汗?ですか?…そういえば家庭教師から『カバの汗は赤い』と習いました!」


宰相 「ほう。ヨハンは勤勉だなぁ。ハハハ」


ヨハン「えへへへ~」




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