03 元手を増やす
「ところで、リオ、これから平民になるんだと言ってたね」
漁師のおかみさん、名前はイサさんが真面目な顔で俺に言う。
「はい、いや、うん」
言葉使いも平民っぽくすべきだよな。
「じゃあそんな誘拐されそうな服はやめて平民らしい服を着ないと」
!! そういや今の俺のシャツ、シルク! 貴族令息の服!
「ああ! それはそうだ!」
「顔も綺麗なんだし」
「顔、キレイ……」
そっと己の顔を撫でた。でもよく分からん。
鏡がなくてわからんかった。俺、顔揃いか。
この漁師の家には鏡はなかった。この世界では質のいい鏡もやはり高級品で貴族の家にいた時も俺の子供部屋には鏡はなく、親の部屋にしかなかった気がするし、己の容姿も特に気にしてない子供だった。
「そうだよ? とても綺麗な顔だよ」
イサさんがにこにこして言う。
「ふむ……」
「気をつけなよ? 女の子じゃなくても変な趣味のやつはいるんだし」
確かに。それはいるだろう。どこの世界にも。
「ひとまず街に行く、そんで中古でいいからそれっぽい服手に入れるよ」
素直に忠告に従う気だった。
「服なら俺の倅の昔の服をやろうか? その服で平民街の店に行くのは危険だ」
漁師の親父さん、名前はザック。がいいことを言ってくれた。二重の意味で。
それは確かにそーだよね!!
「ところでお二人に息子さんいたんだね?」
姿がずっと見えないけど、生きてるんだよな?
生きててくれ、死んでたら気まずい。
「ああ、今は船乗りで遠くにいるけど」
ああ、生きてて良かった、そんで、船乗りとして海に出てるならそこそこ育っているのか。
「なるほど」
「ほら、この服」
ザックが木箱の中から少年サイズの古着を出してくれた。
ツギハギあってもひとまず着れるならそれでいい。
「ありがとう」
この恩はいずれまた必ず。俺は早速貰った服で着替えをさせて貰った。
そんでひとまず街の道具屋なら鏡くらいあるだろうと考えた。
顔のレベルによってはやれる幅は広がるだろうし。
例えば金持ち貴族女性に媚びを売るとかな。
こんな善良な平民夫婦とかではなく、金は取れるとこからとらないと。
ひとまずこのシルクの服も売って元手にするか?
と、俺は漁師の家を出た。
「リオ、またいつでもおいでな」
こうして俺は、ザックとイサという漁師夫婦から温かく見送られた。
◆◆◆
ヒッチハイクで、たまたま見かけた荷馬車に乗せて貰って、漁村から城下町っぽいとこまで連れてって貰うことにした。
「坊や、ここでいいかい?」
「ありがとう!」
荷馬車を降りて、中世ヨーロッパ風の街並みを眺めつつ、町を歩いた。地面は石畳で舗装されてる。
「道具屋……」
街中でキョロキョロしてるとテーブルや椅子などの家具が表に出てる店があった。
そして、その店で鏡を見つけた!!
おお! ビンゴ!
「……いい顔だ」
金髪に美しいグリーンアイズ。ボロを着ていても整った顔立ちに高貴な雰囲気もある。
「ははは、お前さん、自分の顔に見とれてるのか? しかし確かにいい顔だな、さては貴族様のお手つきになったメイドの子じゃないか?」
いいや、俺は一応正妻の子だ。
スキルがクソだと思われて家に捨てられたが。
「ははは」
俺は笑って誤魔化した。
そして街角で物乞いを見つけた。
……流石に、そこまで落ちるのはまだ早い。
俺は顔揃い。
歌でも歌えば、お金くれる人もいるかもだ
俺はホスト時代も歌ってたし。ラスソンとか、コールとかもやってたし。
とりあえず、お金入れて貰える容器、日本の道端じゃギターケースとかに入れて貰うの見た事あるけど。
深めの皿は買っても損ではない。
料理も入れられる。
古着屋でシルクのシャツを売り、それを元手に外套を買い、更に道具屋で食器を買った。
深めのシチュー皿だし、そこそこ硬貨とかはいるだろうってサイズ。
さて、歌と言えば、俺の歌えるのは地球で聞いてた歌となる。知らない歌詞でもメロディーが良ければどうにかなるだろ?
ここは異世界だから著作権の侵害とかは気にする人も居ないだろうし。
俺は街角に立ち、足元に皿を置き、まず深呼吸した。切なげなラブソングでも歌ってみよう。
美しい旋律の片思いのラブソングをアカペラで。
道行く人々が足を止める。
顔揃いの12歳の美少年の歌だ。目を惹くし、メロディーもいい。
1曲歌い終えたら、たくさんの拍手をもらった!
そしてソコソコ身なりのいいご婦人と紳士から器に金を入れて貰えた!!
よし、狙いどおり!
やはり歌で金を貰うなら、そこそこお金持ってる人の通る街中でないとな!




