第54話 松树の後ろ
霊台宗の少主が来た——その知らせは、翌日にはもう外門の隅々にまで広がっていた。
食堂では誰かがその話をしており、道の途中でも人々が小声で囁き合っていた。
「霊台宗の使いが来たらしい」「来たのは少主ご本人だ」「客院に滞在していて、随行の者が何人もいる」——そんな断片的な噂が飛び交っていた。
林瓶は碗を手に食事をとりながら、それらの言葉を耳にしたが、顔を上げることはなかった。
その後、林瓶は聚霊峰へ報到に向かった。
謝臨平は不在で、机の上には昨日届けられた通報文が一通置かれていた。
「霊台宗少主・義明、随行五名を伴い太乙宗を訪問。数日間の滞在予定につき、内務にて客房を整えること」——落款は宗主側の文書であった。
林瓶はそれを一瞥し、元の位置に戻すと、黙って手元の作業を続けた。
その日の午後、林瓶は聚霊峰を出た。
だが住処には戻らず、代わりに雲霞峰の方角へと歩いていった。
雲霞峰へは、彼は普段ほとんど足を運ばない。
正殿は山の中腹にあり、石段は他の峰よりも広く、両脇の松柏は丁寧に剪定され、敷石には苔ひとつなく滑らかだった。
林瓶は正殿を囲む院の外壁の手前で立ち止まった。——それ以上進めば、守衛の目がある。
彼は院の外、一本の老松の陰に身を置いた。
その位置からは、正殿の側面にある廊下が見えた。
自分がなぜここに来たのか、林瓶自身にもわからなかった。
入ることはできないと知っていた。それでも、彼はそこに立っていた。
廊下には、二人の人影があった。
一人は玄霜。
彼女は林瓶の知らない淡い色の衣をまとっていた。
襟元と袖口には極めて薄い銀灰の刺繍が施され、午後の光を受けるたびに、かすかに閃いた。
髪はすべて高く結い上げられ、白く滑らかな首筋の線が露わになっている。
その姿勢は端正で、林瓶のいる方向に半ば身を向けて立っていた。
彼女の正面には、もう一人の人物がいた。
若い男だった。見覚えのない顔——太乙宗の者ではない。衣装が違っていた。
太乙宗の弟子たちは、深色や素色の動きやすい道袍を着る。袖口は作業の邪魔にならぬよう絞られている。
だが、その男は月白色の長衣をまとっていた。
午後の光を浴びると、布地全体が柔らかく滑らかな光沢を放ち、それは普通の絹では出せぬ、より緻密で沈んだ質感だった。
まるで水銀が薄く布の上に流れ広がったような反射。
襟元と袖口には、極めて淡い銀灰の暗紋が刺されていた——半ば開いた蓮の花。
その花弁の縁には細やかな光輪のような文様があり、線は円やかで精緻。
近くで見なければ気づかぬほど繊細で、光の角度が合ったときだけ、ふっと閃く。
腰には一枚の玉牌が下がっていた。
太乙宗の弟子が持つ素朴な木牌や鉄牌とは異なり、それは深い墨玉でできており、光の中で半透明の暗緑を透かしていた。
彫りは細かく、紐は濃色の絹糸を複雑に編んで結ばれており、凡庸な家のものではないことが一目でわかる。
その男は少し首を傾け、玄霜に語りかけていた。
姿勢はゆったりとしており——まるで立つ位置も、話す相手も、すべてあらかじめ定められていて、それに従っているだけのような自然さだった。
言葉に合わせて時折、手の動きを添える。
その動作は小さいが、どれも落ち着いており、幼いころから自ら手を汚すことなく育った者にしかない余裕があった。
二人は向かい合って立っていた。
距離は遠すぎず近すぎず、言葉を交わすのにちょうどよい、しかし親密すぎぬ間合い。
午後の光が廊檐の外から差し込み、廊下の床に明暗の境を描いていた。
玄霜はその光の縁に立ち、男は光の中に半歩ほど入った位置にいた。
そして、玄霜はふっと笑った。
離れた場所からでも、その笑みが見えた。
眉と目が柔らかく弧を描き、唇の端がわずかに上がる——それはかつてと同じ笑みだった。
林瓶の記憶の中で、玄霜が笑ったどの瞬間とも変わらぬ笑み。
大きく笑うのではなく、相手の言葉に少し面白みを感じたとき、自然に口角が上がる、そんな軽やかな微笑。
誰に対しても見せることのできる、自然で穏やかな表情。
その笑みは、林瓶に向けられたものではなかった。
林瓶はそこに立ち、ただその光景を見ていた。
ふと視線を落とし、自分の姿を見た。
青色の道服。袖口は擦れて毛羽立ち、衣の裾には昼の作業でついた埃と草の屑がこびりついている。
布靴のつま先はすでに擦り切れ、内側の布地が覗いていた。
林瓶は松の木の陰に立ち、その絵のような光景から十数歩離れたところにいた。
月白の長衣、墨玉の牌、半開きの蓮の刺繍、そして淡色の衣をまとい微笑む玄霜。
その光景は美しかった。
林瓶は知っていた——自分はその絵の中にはいないのだと。
林瓶は松の木の陰から、一歩も動かなかった。
やがて、背を向けて歩き出した。
歩幅は大きくも小さくもなく、いつもの歩き方と変わらない。
手に持つものもなく、行くあてもなかったが、その歩みは確かだった。
住処に戻ると、林瓶は水を一杯汲み、ひと口飲んだ。
水は冷たく、桶から汲み上げたばかりのものだった。
喉を通るとき、わずかに渋みを残した。
杯を卓に置き、寝台の縁に腰を下ろす。
窓の外はまだ明るかったが、光はすでに温かみを帯び始めていた。
格子窓の外から斜めに射す光が、卓の上に傾いた金色の帯を描いていた。
林瓶は枕の下に手を差し入れ、指先で何かを探った。
指が触れたのは、あの陶片。冷たく、縁の一部が薄く削れていて、わずかに鋭さを感じた。
取り出すことはせず、ただ触れて、手を引っ込めた。
林瓶は寝台の縁に座り続けた。
胸の中には、激しい感情は何もなかった。
痛みも、塞がるような重さも、「なぜ」といった問いも。
ただ、今日見た光景を頭の中で再び再生していた。
玄霜が廊下に立ち、新しい衣をまとい、笑って誰かと話している。
その絵の中のすべては自然で、何一つ不自然ではなかった。
衣は新しく、髪は整い、笑みは穏やか。
彼女は、ここ最近林瓶が見たどのときよりも、ずっと「普通」に見えた。
窓の外の光は、暖かな黄から灰青へと変わっていった。
林瓶は長くそこに座っていた。
影が部屋の片側からもう片側へと完全に移り変わるほどに。
外の鳥の声が、夕暮れの賑やかさから、まばらな数声へと変わるほどに。
そして、林瓶は立ち上がり、壁際へと歩いた。
音もなく、ためらいもなく。
右の拳を振り上げ、壁に叩きつけた。
骨の節が夯土の壁にぶつかり、鈍い音が響いた。
壁の表面がわずかに崩れ、砂粒がぱらぱらと床に落ちた。
手の甲の皮が擦り切れ、細かな血の珠が滲み、指の節の溝を伝ってゆっくりと広がった。
林瓶は俯き、手を見つめ、呼吸がいつもよりわずかに荒くなった。
だが、二度目の拳はなかった。
数息の間、林瓶はそのまま立ち尽くした。
呼吸が落ち着くと、身を翻し、寝台のそばへ戻り、身をかがめて床板を持ち上げた。
床板と床枠の隙間には、いくつかの物がしまわれていた。
布に包まれた砕けた玉片、数枚の銅銭、少しずつ貯めた紙片の束。
その一番下に、一枚の玄鉄の令牌があった。
掌ほどの大きさで、表には「法」の字、裏には鎮獄峰の紋が刻まれている。
柳絮からもらったものだった。
それはもうずいぶん昔のこと——ほとんど忘れかけていたほどの昔。
柳絮は言った——「もし宗内で何か怪しいことに遭遇したら、これを持って私のところへ来なさい。鎮獄峰はお前を咎めない。」
林瓶はそれをずっと手放さずにいた。捨てず、使わず、ただ持っていた。
永遠に使うことはないと思っていた。
令牌を手に取る。玄鉄の冷たさと重みが掌に沈む。
角は磨かれていて、手に馴染む古びた感触。
林瓶は掌の中の令牌を見下ろし、長く迷うことなく、扉を押して外へ出た。
空はまだ完全には暗くなっていなかった。
山の稜線の上に灰青の光が一筋残り、山の輪郭を暗い影絵のように縁取っていた。
林瓶は山道を速い歩調で進んだ。
いつもより一歩一歩が大きく、靴底が石段を踏むたび、短く確かな音が響いた。
令牌は右手に握られ、掌に密着して冷たかった。
鎮獄峰の大門は、以前と変わらぬ姿だった。
灰色の石壁、門の両脇には黒衣の執法弟子が二人立っていた。
夕闇の中、足早に近づく人影を見て、二人の視線が同時に林瓶に向けられた。
林瓶は門前で立ち止まらず、令牌を掲げた。
玄鉄の「法」の字が外を向き、鎮獄峰の紋が暮色の中で最後の光を反射した。
二人の執法弟子は令牌を一瞥し、何も言わずに道を開けた。
林瓶は正院を抜け、裏山へと向かった。
院内では、数人の黒衣の弟子たちが作業を終えて戻る途中だった。
外門の弟子が執法令牌を手に、裏山へ急ぐ姿を見て、一瞬視線を止めたが、誰も彼を止めなかった。
裏山の入口に着く。
そこから曲がり、狭い山道を一盞茶の間ほど歩けば、あの鉄門のある場所に辿り着く。
岐路を曲がり、七、八歩進んだとき、道の脇の闇から一つの人影が現れた。
深色の作務衣を着た執法弟子。見知らぬ顔。林瓶より数歳年上に見えた。
道の真ん中に立ち、平板だがはっきりした声で言った。
「ここから先は立ち入り禁止だ。」
林瓶は答えなかった。
令牌を掲げ、正面を向けた。
玄鉄の執法長老の紋が、薄暗い光の中でもはっきりと見えた。
その執法弟子の視線が令牌に止まる。
本物だった。紋は確かに執法長老の印。偽造ではない。
彼はもう一度林瓶を見た。
外門の弟子が、執法令牌を持ち、夕闇の中、鎮獄峰の裏山へ入ろうとしている。
一息のためらいの後、その男は身を横にずらし、道を開けた。
林瓶は令牌を収め、さらに奥へと歩みを進めた。
道は次第に狭まり、両側の岩壁は高くそびえ、光は薄れていった。
前回、伝功長老の弟子に遮られた地点を越えた——その場所は今、林瓶の背後に遠ざかっていた。
その先の道は、彼にとって未知の領域だった。
それでも、歩みを止めなかった。
そのとき、側面の山道から一つの影が飛び降りてきた。
暗がりからではなく、上方から軽やかに跳び降りたのだ。
着地の音はほとんどなく、風のように静かだった。
執法服をまとった女——背丈は高くないが、道の中央に立つその姿は、一本の張り詰めた弦のように緊張感を帯びていた。
柳絮。
彼女はすでに山道で、執法弟子からの伝令を受け取っていた。
柳絮は道の中央に立ち、林瓶を見た。
まず彼の手の中の令牌に目をやり、それから視線を林瓶の顔に移した。
数息のあいだ、何も言わずに、ただ見つめていた。




