第47話 忘れられた詩
薬を届ける時期が来た。月末、化霊丹は最後の一回分だけが残っていた。
林瓶は庫房で薬包を受け取り、玄女峰へ続く山道を登った。道は変わらない。だが両脇の桃の花はすでに大半が散り、枝には新しい緑の葉が密に芽吹いていた。花を覆うように重なり、遠目には淡い桃色の霞の上に幾層もの緑が敷かれたように見える。落花は石段に敷き詰められ、靴底に踏まれて湿った淡紅の痕を残していた。それはまるで石そのものが色を滲ませているようだった。
この道を歩くのは久しぶりだった。前回は月の中頃に薬を届けた時で、経蔵を抜けたあの一度は別方向だった。この山道は山腹から上へと続き、二度曲がり、竹林を抜け、さらに石段を登ると玄女峰の院の門前に至る。歩調は速くも遅くもない。腰の薬包が揺れ、骨盤に当たる。重さは以前と変わらなかった。
院の門は開いていた。
中に入ると、すぐに玄霜を見つけた——だが、窓辺にはいなかった。廊下の下の低い几の前に座り、背を柱に預け、前には紙の束を広げ、手には筆を握っていた。見慣れた詩を書く紙ではない。もっと薄く、縦の罫が引かれ、その格子の中に端正な小さな字が並んでいた。遠くからでは内容は読めなかったが、その形式には見覚えがあった。経文である。僧侶が写すもの、道観で写すもの、宗門で朝課に用いる経文。
玄霜はすぐには気づかなかった。俯いて筆を動かし、筆先は紙面を均一に滑っていた。止まることも、迷うこともない。時折、筆先を硯に浸し、また書き続ける。その動作は速くも遅くもなく、まるで思考を要しない作業のようだった。
林瓶は門口に立ち、少し待った。五、六呼吸ほどして、ようやく門口の光がわずかに遮られたのを感じたのか、玄霜は顔を上げた。
目の光は揺れず、驚きもなく、「どうして来たの」といった表情もない。ただ、知った人が門口に立っているのを見たというだけの目だった。筆を置き、唇をわずかに動かして言う。
「林瓶。薬?」
「うん、月末だから。」腰の薬包を解いた。
「机に置いて。」そう言うと、また筆を墨に浸し、写経を続けた。
林瓶は院の中に入り、青石の敷かれた道を渡って、窓の下の机に薬包を置いた。置くとき、机の上に目をやる。あの鉢植えはまだ窓台にあったが、位置が変わっていた。以前置いた場所ではない。鉢は窓台の右寄りに移され、陽の当たり方が少し違っていた。葉の色は以前よりも濃くなっていたが、それは色づいた濃さではなく、どこか元気を失ったような濃さで、葉先がわずかに垂れていた。
机のそばにしばらく立ち、それから廊下へ戻った。
玄霜はまだ写経を続けていた。几の上にはすでに書き終えた紙が数枚重ねられ、墨は乾き、端がわずかに反っていた。林瓶は数歩離れたところに立ち、近づきすぎない距離を保った。
「最近、忙しい?」と尋ねた。
「まあまあ。」筆を握る手は止まらず、筆先が紙の上で細やかな音を立てた。「暇だからね。経を写して、時間を潰してる。」
林瓶はしばらく立っていた。「最近、詩は書いてる?」
筆先が紙の上で一瞬だけ止まった。止まったというより、わずかに躓いた。筆先の墨が紙に小さな黒点を滲ませた。玄霜はそれを一瞥したが、気に留めなかった。少し考えてから言った。
「最近は忙しくて、あまり書いてない。」
その声は平常で——まるで「今日は天気がいい」と言うような調子だった。
すぐには俯かなかった。会話が途切れすぎないようにするためか、少し考えてから顔を上げ、林瓶を見て、何気なく尋ねた。
「あなたが前に言ってたあの詩——なんて言ったっけ?」
林瓶はその目を見た。澄んでいて、穏やかで、逃げも緊張もない。その問いを発したときの表情は軽やかで、ふと思い出したことを口にしただけのようだった。探るでも、装うでもない。ただ話題を探して、ふとその詩を思い出したが、題名が出てこなかったのだ。
意図的に避けたのではない。忘れようとしたのでもない。本当に——思い出せなかったのだ。その四文字は頭の中でぼやけた輪郭だけを残し、すりガラス越しに物を見るように、そこに何かがあるのはわかるが、それが何なのかは認識できなかった。
林瓶は立ったまま、名を告げた。「《問劉十九》。」
「そう。」玄霜は軽く頷いた。補足も、問い返しもなく、「そう、それをずっと覚えてた」とも、「綠蟻新醅酒,紅泥小火爐」(緑の泡立つ新酒、紅い土の小さな火炉)とも言わなかった。ただ「そう」と一言。まるで誰かが、部屋の隅に置き忘れ、探す気もなかったものを拾って差し出したかのように。そして再び俯き、経を写し始めた。
筆先が紙を擦る、極めて微かな音がした。
林瓶は廊下に立ったまま動かなかった。玄霜が俯いて写経する横顔を見つめた。陽光が廊の軒下から斜めに差し込み、耳もとをかすめる髪に光を落とした。明暗の境で、髪の縁が淡く光を帯びていた。筆先は紙の上を滑り、一字一字、均一に、平らに、感情の起伏なく進んでいく。
経文が玄霜の意識を占めていた。詩は、もう必要なかった。
林瓶はすぐには立ち去らなかった。なぜそうしなかったのか、自分でもわからなかった。薬は渡した。言葉も交わした。常ならば、ここで辞すべきだった。だが廊下に立ち、しばらくそのままでいた。座ることもなかった。
玄霜は追い払うことも、座るよう促すこともなかった。以前なら——まだ親しくなかった頃でさえ——わずかな反応を見せたものだった。茶を注ぐ、机の上を片づける、顔を上げて見る。客をもてなすというより、「あなたが来たのを私は気づいている」という合図のようなものだった。今はそれがなかった。拒んでいるのではない。ただ、もうそういうことを思いつかなくなったのだ。以前は自然にあった反応が、まるで引き出しの中の物が音もなく取り去られたように、引き出しは開いたままなのに中は空になっていた。
林瓶は写経を見つめた。経文の字は読めるが、意味はわからなかった——それは太乙宗の静心経の一種で、一行七字、韻を踏んでいる。写すとき、内容を考える必要はなく、ただ手を一定のリズムで動かせばよい。詩を書くのとは違う。詩を書くときの玄霜を見たことがある。筆先が迷い、止まり、書いた字を気に入らずに消し、隣に書き直す。そこには動きがあり、選択があり、ためらう心があった。写経にはそれがない。すべての筆が同じ力で、同じ平らさで書かれている。線は滑らかだが、平坦だ。まるで横線を引いた紙に、すべての字がその線上の記号として並んでいるようで、高低も起伏もない。
一瞥してから、視線を戻した。
「じゃあ、行くよ。」と林瓶は言った。
玄霜は顔を上げた。「うん。お疲れさま。」
林瓶は背を向け、院を出た。門口に至っても、振り返らなかった。振り返りたくなかったのではない。自分を、他人の門前で振り返る人間にしたくなかったのだ。門を出て、来た道を山の下へと歩いた。
背後の院からは音がしなかった。筆が紙を擦る音は、距離と風に呑まれて消えた。
山道を下り、竹林を抜け、山腹の岐路に戻った。そこで足を止めた。
今、住処に戻るには早すぎた。食堂はまだ開いておらず、聚霊峰の仕事も今日中に終える必要はない。立ち止まり、どこへ行くかを決めず、無理に選ぼうともしなかった。ただそこに立っていた。春の風が両側の谷間を抜け、山下へと吹き抜けていく。土の匂いと、遠くの名も知らぬ花木の香りを含んでいた。岐路には一本の老槐があり、枝葉は新緑を帯び、若葉が群れて、水から掬い上げたばかりのように瑞々しかった。
道を行く人影はなかった。この時刻、皆それぞれの峰で働いており、山道は空っぽだった。地面には自分の影だけが斜めに伸びていた。
頭にあるのはただ一つ——玄霜はもう覚えていなかった。
態度が変わったのではない。あの詩のことだ。あの日、玄霜が暗唱したのは《問劉十九》。何度も練習して、ようやく通して言えた。言い終えたあと、林瓶の反応を窺うように顔を傾けた。自分でも少し驚くようなことをして、相手の評価を待つ人のように。あの日、二人は笑い合った。下山のとき、玄霜は「これでしばらくは嬉しい」と言った。それらは林瓶の中に今もある。一つ一つの場面が、昨日のことのように鮮明だった。
だが玄霜は、もう思い出せなかった。
その光景を思い返すと、今もなお鮮やかだ——陽の角度、座る位置、顔を傾けたときの髪の弧。しかし今では、その光景は何かの膜を隔てて見るようだった。山のこちら側から向こうの山の木を見るように——その木がそこにあるのはわかるが、葉の色までは見分けられない。
時間が人を忘れさせることは、林瓶も知っている。だが、これはそれとは違う。
岐路に立ち、しばらく考えた。まったく違う、と。
風がまた吹いた。今度は山上からではなく、山の麓から吹き上げてきた。山下の新緑の田野と、点在する家々の方から。風には人の世の匂いが混じっていた。炊煙、土、そして名もない日常の細やかな匂い。
林瓶はしばらく立っていたが、やがて住処へ戻る道を選んだ。特別な理由はなかった。
ただ、帰る時が来たのだ。




