第40章 門(もん)
一枚の紙切れが回ってきたのは、三日目の午後だった。
林瓶が聚霊峰に物資の一覧表を届けに行った時のことだ。謝臨平は書類の積まれた机の向こうに座り、手元の帳簿を繰っていた。顔を上げずに、脇から一枚の紙切れを抜き出して机の端に押し出した。
「鎮獄峰の後山の山道、春の前に修繕しておけ。」
林瓶は紙切れを手に取って一目見た。便箋はごく簡素だ。聚霊峰の書式で、工期は三日。内容は極めてシンプルだった。後山の山道が冬に入ってから何箇所か凍結で破損したので、林瓶が班を組んで補修せよ、と。謝臨平は右下に「許可」の二字を書き加えている。
「執法峰の方にはもう通してある。」謝臨平は帳簿の頁をめくり、口調は「今日はいい天気だ」と言うのと変わらなかった。「直接人を連れて行け。門前で通してもらえる。」
林瓶は紙片を折り畳んで袖口に収めた。「承知しました。」
謝臨平はそれ以上何も言わなかった。林瓶が向きを変えて外へ出ようとした時、視野の端に、謝臨平の視線が帳簿から一瞬だけ上がったのが映った。彼を見たのではない。彼が袖口にしまったあの紙切れの位置を見たのだ。そして視線は再び落ちた。
林瓶は振り返らなかった。
――
翌朝早く、彼は道具と二人の雑役を連れて鎮獄峰へ向かった。
鎮獄峰は他所とは違った。門前には常に二人の黒袍の弟子が立っていた、腰に短い棍を差し、表情がなく、両側に立つ二体の石像のようだった。ここは他より明らかに警戒が厳しい。
彼は紙片を差し出した。「後山の山道の修繕に来ました。謝長老が執法長老にも許可を得ていると伺っています。」黒袍の弟子の一人が受け取ってざっと目を通し、紙片を返して脇へ一歩退いた。
「後山の道は普段、人が通る場所じゃない。」黒袍の弟子が言った。口調は冷たくも熱くもない。「修繕が終わったら出て行け。奥へは深入りするな。」
「心得ている。」林瓶は紙片を袖口に戻し、人を連れて中へ入った。
鎮獄峰は彼が想像していたより静かだった。雑音もなければ、練功の掛け声もない。灰色の石造りの建物が並び、庭はきれいに掃かれている。時折、黒い袍の弟子が廊下を歩いていく。足音は軽い。誰も彼を見てはいない。だが彼は見られていることを感じていた。
後山に入る前にさらに一つ関所があった。林瓶は修繕のことを同じように説明し、謝長老の紙切れを差し出して、関所の弟子に通してもらった。
後山の山道は前よりさらに狭い。灰色の石畳の路面。両側は風化した岩壁で、枯れた野草と苔が生えている。冬の間に何箇所か凍裂していた。細い罅のものもあれば、石段が丸ごと二つに割れているものもある。踏むとギシッと鳴り、縁は不揃いだ。
彼は凍裂した箇所を、鑿で緩んだ石片を叩き落とした。寸法を測り、持参した石材の中から合うものを選んで嵌め込む、目地を埋めて平らに均した。緩んだ石は二人でなければ持ち上がらない。彼と雑役が一人ずつ両側を持ち、掛け声をかけて道端に並べた。石屑は掃き清めた。誰かが踏んで滑らないように。
作業の途中で、一人の雑役が汗を拭きながら何気なく言った。「この道、普段誰も通らないのに、何で修繕するんだ。」もう一人の雑役が応じた。「上の指示だ。やれって言われたらやるんだよ。」林瓶は答えず、地面にしゃがんで目地を塗り続けた。
初日は夕方までに七箇所を補修した。手のひらは擦れて赤くなり、親指と人差し指の付け根が少し張っていたが、支障はなかった。
二日目の午前中にさらに三箇所を補修した。最後の緩んだ石をどかしたところで、山道全体の修繕は終わった。林瓶は二人の雑役に先に道具を持って下山するよう指示した。残った目地材を無駄にしないように使い切ると言って。
雑役は余計なことを訊かず、道具を担いで立ち去った。山道は静まり返り、谷から岩壁の隙間を通って吹き抜ける風が、ウウという音を立てるだけになった。
林瓶は地面にしゃがみ、手のひらに残った目地材を最後の一道に塗り込み、平らに均し、手についた乾いた粉をはたいた。それから立ち上がったが、山を下りる方へは向かわなかった。
彼は山道の奥へ通じるあの分かれ道に曲がった。
道は進むほどに狭くなり、両側の岩壁は次第に高くなり、光が暗くなっていった。日が暮れたわけではない。両側の山体が光を遮っているのだ。足元の道は石段から碎石と土に変わり、明らかに人が常に通る道ではなかった。彼が茶を一服するほど歩いた頃、あの鉄の扉が見えた。
岩壁に嵌め込まれている。大きくない。一人がやっと通れるほどの狭い扉だ。門枠は枯れた蔦に半分ほど覆われている。扉には鍵がかかっていないように見えた。少なくとも外から鍵は見当たらない。扉の隙間から、微かな灯りが一筋漏れていた。中で油灯が最も暗い明るさに調節されているかのようだ。
彼は距離を置いたまま立ち止まった。
その場に立ち止まったその時、彼はかすかに音を聞いた。極めて軽い。誰かが遠くで囁いているような。あるいは風が鉄の扉の隙間を通る時になる尖ったような音。その音ははっきりせず、途切れ途切れで途切れ途切れに彼の耳に漂い込んできた。まるで直接頭の中で響き始めたかのように。
背中が冷たくなった。
思い出した。前回、似たような音を聞いたのはいつだったか——それはまだ元の身体の記憶だった。あの時も彼はこの方向から何かが自分を呼んでいるのを感じた。行きたくなかったし、行けもしなかった。あの音だ。
彼はその場に立っていた。手のひらに薄っすらと汗が浮いた。前へ出ようとしても足は動かない。引き返そうとしても同じだった。
彼はそこに数息立っていた。もっと短かったかもしれない。自分でもわからなかった。
そして彼は向きを変えて歩き出した。
来た時も心臓が速かったが、去る時も心臓は速かった。足は止めず、振り返りもしなかった。彼はあの扉に近づかなかった。触れもしなかった。遠くでその音を聞いて、そして去った。
彼が知らなかったのは、彼がその分かれ道に入った時、別の山道に一人の男が立っていたということだ。
謝臨平だった。
彼はそこに立ち、林瓶の背中が岩壁の曲がり角の向こうに消えていくのを見ていた。しばらくして、その背中が再び現れた。分かれ道から出てきて、行きよりも足早だった、うつむいていて、彼のいる方角を見ようとはしなかった。
謝臨平は声を発さなかった。彼は林瓶が来た道を遠ざかり、下り坂の曲がり角に消えていくのを見送った。それから彼も向きを変え、別の方角へ歩いていった。
歩きながら、彼の口元が微かに動いた。笑い声を上げるようなものではない。ごく浅い弧を描いた。心の中で見通しを持っている者が、予想通りのことが起こるのを確認した時の——そんな表情だった。
――
林瓶が山を下りた時には、空はもう暗くなり始めていた。
聚霊峰へ報告に戻ることはせず、直接宿舎に帰った。張遠はいない。部屋は暗い。窓の外の光が障子紙を通して差し込み、地面にぼんやりとした灰色の塊を落としている。
彼は床の端に腰掛けた。灯りをつけなかった。暗がりにしばらく座ってから、手近にあった机の上の雑書を手に取った——先日、蔵経楼から借りた『風物拾遺』だ。半分ほど読んでまだ終わっていない。折り目をつけた頁を開き、数行読んで、一つの文に目が留まった。
「太乙五峰、各々名あり。雲霞は初代道侶の名号なり。弘武は伝功一脈の開山祖師の道号。鎮獄は執法一脈の祖師の定めし名、邪祟を鎮圧するの意を取る。丹霞は煉丹祖師が丹炉の霞光を以て名付く。聚霊は外門祖師が其の聚納霊気の義を取る。」
彼は二度読んだ。
以前はただの地名だと思っていた。雲霞、弘武、鎮獄、丹霞、聚霊。今は知っている。どの名前も一代の祖師か、誰かが遺したものだと。
雑書も結構面白いものだ。彼は本を閉じ、机の上に戻した。
しばらく座った後、立ち上がって本棚の前に歩いた。最下段の書物の山から、上の雑書をどけて、指先が硬い表紙に触れた。隣の古本と一緒に置いてあって、誰も違いに気づかない。彼は抜き出さなかった。ただ指先でその角に触れ、それがまだそこにあることを確認し、雑書を戻した。
彼は本棚の前に数息立ち、それから床に戻って横になり、目を閉じた。
あの音がまだ頭の中で巡っていた。耳から入ったのではない。記憶の奥底から浮かび上がってきたものだ。冷たく、後頭部に貼りついている。彼はあの扉に近づかなかった。触れもしなかった。だが、聞いた。あの場所は本物だ。彼の記憶の中の幻覚ではない。
窓の外の風が障子紙の隙間から入り込んでくる。冷たく、土が解けた後の匂いを運んでいる。
本当に春が来ようとしていた。




