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第13話 迫る影


その夕方、柳絮(リウ・シュー)は練功場で秦岳(チン・ユエ)を見つけた。


練功場は後山の奥まった場所にある。三方を岩壁に囲まれ、残る一方は谷へと開けていた。秋の夕風がその開口部から吹き込み、落ち葉を巻き上げては地に落としていく。秦岳は不動明王棍の初式を、ひたすら何度も繰り返していた。鉄棍が回り、斬り、掃い、そして収まる。動きは速くない。だが、一撃一撃には重い力がこもっていた。


足元の地面には深い足跡が刻まれ、その縁には砕かれたばかりの土塊が盛り上がっている。


柳絮は場の端に立ち、しばらくその様子を見ていた。


やがて彼女が口を開く。声は大きくない。まるで、日常の些細なことを口にするようだった。


「何日、まともに飯を食ってない。」


秦岳の動きが止まった。鉄棍を地面に突き立て、息を整える。振り返らないまま言った。


「心配してくれてるのは分かってる。大丈夫だ。思い詰めたりはしない。」


柳絮は一瞬、言葉を失った。


秦岳が振り返る。口元の血痕は、もう乾いていた。林瓶は夕日の中に立っていた。影が長く伸びている。


「伝功長老が言ってた。あれは五行の相克だってな。土は木に克される。あいつは木系・中階・満級の内功だ。俺の鎮岳守心訣は絶学だが、残篇で2級だ。向こうは完全版で5級。属性でも克されてる。どうやったって負ける。」


「あいつが言ってたんだ。昔は皆、3級や4級まで上がってたって。先々代の宗主が直々に指導してた頃はな。それが、ある時から上がらなくなった。その理由を知ってるのは、歴代の宗主だけだって。」


風が吹いた。二人の袍をはためかせる。柳絮は何も言えなかった。


彼女は身を翻し、歩き出しかけて足を止めた。振り返らないまま言う。


「何か食い物を持ってきてやる。」


――


蒼雲宗はその日のうちに去った。留まろうとはしなかった。理由は、「次の目的地がある」というものだった。あの若い弟子――陸驚鴻――は、一度も振り返らずに馬へ跨った。商鶴年は宗主に、礼儀正しく、だが中身のない別れの言葉を残した。誰もその文言は覚えていない。記憶に残ったのは、あの礼儀正しくも距離を感じさせる微笑みだけだった。「また来ます」という言葉は丁寧だった。だが、その笑みに再訪の意思は感じられなかった。


林瓶は、この一件は終わったものと思っていた。


だが、それは始まりに過ぎなかった。


翌朝。伝功長老・李承道でんこうちょうろうリー・チョンダオが長老議事を召集した。表向きの議題は「宗門振興の方策」。その内容を林瓶に伝えたのは、蘇晴(スー・チン)だった。


「伝功長老、いきなり祖師の話から始めたの。」蘇晴は声を潜めた。丹房の炉の熱が背中を炙る中、低い声で続ける。「太乙宗が武学の総綱と呼ばれていた昔のこと。十大宗門の一角だった頃のこと。そして今はどうだ、って。蒼雲宗の小僧一人に二師兄が負けた。宗門全体の面目は丸潰れだ。これは弟子のせいじゃない、上に立つ者がきちんと導いてこなかったせいだ、って。」


林瓶は息を詰めて聞いていた。誰に向けた言葉なのかは明らかだった。


「それで次に、玄祈使の話を持ち出した。」蘇晴の声はさらに低くなる。「今の玄祈使――玄霜(シュエンシュアン)は、何年も山上にこもったまま。人材は使ってこそ育つ。閉じ込めておくものじゃない。彼女がいつまでも独り立ちできないなら、太乙宗は他宗とどう渡り合うつもりだ、って。」


「宗主は何と?」


「『まだ準備ができていない』『玄霜にはもっと時間が必要だ』……それだけ。」蘇晴は首を振った。「そしたら伝功長老は、それを無視して三つ目の話に移ったの。」


林瓶の心臓が跳ねる。


「前任の玄祈使。玄玉(シュエンユー)のこと。」蘇晴の声は、ほとんど囁きだった。「あの女を二十年も幽閉しておくのは無駄だ。あの女の功法と知識は、太乙宗にとって今でも有用だ。あのまま死なせるのは浪費だ、自分が彼女と話をすることを認めろ、って。」


「それで?」


執法長老(しつぽうちょうろう)が反対した。『玄玉は門規に触れた。軽々しく応じるべきではない』って。でもね――」蘇晴は苦笑する。「そんな反対理由じゃ、伝功長老は止められないよ。『記録を残す』って言われちゃ、『宗門のため』って大義名分があるからね。結局、宗主は『善処を計ろう』って言っただけ。伝功長老の狙いはほぼ通ったようなもんよ。宗主が押し込まれた。玄霜の話も議題に上がった。玄玉の件も、完全には消えてない。」


丹房に沈黙が落ちた。炉の中の霊火が、ぱちぱちとはぜている。


「私の師匠は何も言わなかった。」蘇晴が付け加える。「あの人、いつもそう。座って聞いて、終わったら戻るだけ。」


――


その数日後。変化が現れ始めた。


伝功長老の門下の弟子たちが、外門区域を頻繁に訪れるようになった。以前は弘武峰にこもりきりだった連中が、今では食堂や練功場に姿を見せ、外門の弟子たちに声をかけている。「含章真人が新しい古法を整理している」「修行の助けになる」。口調は穏やかで、言葉は甘い。


鎮獄峰の巡察も増えた。秦岳が自ら隊を率いる回数も多くなり、腰の執法令牌が日差しの下で光る。まるで、無言の警告のようだった。


宗主は動かない。何も言わない。雲霞峰はひっそりと静まり返っている。その静けさが、何より不気味だった。


――


数日後の正午。蔵経楼の一階で林瓶が本をめくっていると、入口から一人の男が入ってきた。


――宋明遠。


月白色の長袍。腰には青色令牌。手には何も持っていない。宋明遠はごく自然に、林瓶のそばまで歩み寄ってきた。


「林師弟? ここで本を読んでるのか。」


声は温厚だった。林瓶は本を棚に戻す。


「宋師兄。」


「升格、おめでとう。」宋明遠は微笑んだ。「蔵経楼の本は自由に見ていい。何か必要なら私に言ってくれ。一階の蔵書には詳しいからな。」


林瓶は礼を言った。宋明遠は笑みを残したまま、蔵経楼を出ていく。月白色の背中が風に揺れ、やがて視界から消えた。


林瓶は本棚の陰に立ち、その背中が完全に見えなくなるまで待つ。


――伝功長老の人間が、急に自分に親切になる。いい兆しじゃない。


そのとき、横で本を読んでいた外門弟子が声を潜めて言った。林瓶にだけ聞こえるよう、絶妙に抑えた声だった。


「――あいつには気をつけろ。最近、玄女峰に出入りしてる。『玄祈使の育成を補佐する』って名目でな。」


林瓶は思わず眉をひそめた。


――宋明遠が。


――玄女峰に。


――十八歳の、あの少女のそばに。


林瓶は本を棚へ戻し、蔵経楼を出た。秋の日差しが弘武峰の石段を照らしている。暖かい。だが、胸の奥は冷えきっていた。


林瓶は石段の上で、玄女峰の方角を見る。霊霧に包まれ、輪郭だけがかすかに浮かんでいた。


――今、あの宋明遠は、あの山上で、あの十八歳の少女に何を語りかけているのか。


林瓶は視線を外し、寮へ向かって歩き出す。


――氷の下のひびは、もう上まで届いている。



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