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異世界ライフは美しい!  作者: 清水悠


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88【懐かしい顔ぶれ】

いつも読んでいただきありがとうございます!

またブクマや評価していただき、ありがとうございます!


どうぞご覧ください!

「 信じられんな、こんなやり方があるとは ……。」


 グレンは呆れた様子で下へと滑り降りてきた。信じられないと言う割に、状況を瞬時に判断し即座に対応する姿は流石というべきか。


 フレデリックも今までより大きい穴を空けたらしく、リュカとグレンが階下へと降り立った頃に、上の階はようやく閉じ終わりを迎えていた。


 リュカは降りてきた足場が徐々に床へと飲み込まれていくのを、面白そうに眺めている。


 フレデリックが私に奏太のいる位置を確認する。

 どうせならこのまま降り続けようってこと? 一回やったなら二回も三回も同じだと、彼も腹を括ったようだ。


「 んーと、ここよりもう少し先の方かな。そうだ!この階にも奏太達が残してくれた印はあるかしら?」


 私がそう言うと、隊員達がすぐに周囲を散策し印を見つけてくれた。比較的安全と言える順路を辿りながら、奏太の居る付近の真上まで来ると、私は笑ってしまった。


 床に植物で◎の印がある。やはり奏太は分かっていたのだ、私達が穴を空けて進んでいることを。

 ここを空けて!とフレデリックにお願いすると、そこでグレンが「 待った!」が入った。


「 確かに今はダンジョンの目的が探索ではない。だからこうして直に降りることに異論は無いが、階下の魔物も確認しないのは危険ではないか?」


 特にセナが最初に降りるのはやめてくれ、グレンはそう言いながら、私を自分の背後へと移動させる。すると隊員の一人が口を挟んだ。


「 それは杞憂ですグレン様。ここまで降りてくる間、ほとんどの魔物はセナ様が倒しておりますから。」


 あっ!あいつ、そんな余計なこと言わなくてもいいのに、それにフレデリックだってだいぶやっつけてたわよ? そう弁解したいところに、グレンは失笑しながら私の頭をポンポンする。


 ちょっと、グレンといいリュカといい、私への扱いが雑になってない??


「 冗談だろ?……… ここまで降りてくるのにどれだけの魔物がいると思ってるのだ?」


 微笑をたたえてはいるがグレンの声のトーンが変わったからか、隊員が怖じ気づくと他の隊員がそれを庇った。


「 う、嘘ではございません!我々はほとんどの階層に穴を空けて降りております。ですから一つの階に30秒程しかとどまらなかった階すらございました。」


 そんなに沢山の魔物と対峙していない事を伝えたいんだと思うけど、それってグレンには火に油じゃない? 隊員は胸を張って意見してるのに対して、グレンの表情からは完全に笑みが消えた。


「 ちょっと待ってくれ!一つ尋ねたい。お前達はこのダンジョンに入って、今日で何日目になる?」


「 何日目と言いますか …… 4時間です。今が22時、18時ごろにこのダンジョンに落とされて、ちょうど4時間です。」


 隊員が口を閉ざしてしまったので、代わりにフレデリックが懐中時計を見ながらそう答えた。


「 …… それはまた驚異的な速さですね。」


 さすがにリュカも真顔になり会話に参加してきた。あまりにもその場が静まり返ったので、私は何となく焦って弁解に入った。


「 でもね? 魔法でしか倒せない魔物はフレデリックだって倒してくれたから!」


 私一人が魔物と戦ったわけじゃないことを伝えたかったのだけど、その一言が失敗だった。グレンは私の頭から手を下ろすと、その腕をゆっくりと組み隊員達に向き直る。その目はもはや氷のように冷ややかなものとなっていた。


「 ではお前達はどのくらい魔物を始末したのだ?」


 グレンはあくまで隊員に質問を繰り返す。こんな時のグレンはいかにも団長らしく、とても威厳がある。今は隣で見守る私ですら怖さを感じるもの。隊員一同は貝のように口を噤んでしまった。


 それを見たリュカは可笑しそうに笑ってその場を茶化す。


「 いえいえ、まさか一匹も倒してないなんてことありませんよね? …… 先輩方??」


 隊員達がもごもごとリュカの言葉にも反論しないのを見て、グレンは頭を抱えた。


「 聞いて呆れる …… フレデリックがいてくれたとはいえ、護るべき勇者を盾にしてダンジョンを回るとは、お前達それでもラグドールを誇る騎士団と胸を張れるのかッ!! 」


 あぁ、グレンはとうとう本気で怒り出した!どうしよう? 私が勝手に突っ走ったせいで隊員達は全然悪くないのに。

 彼らはグレンに怒鳴られて「ヒッ」と縮み上がっている。


「 あ、あの、グレン違うの。この人達を怒らないであげて!」


 私が隊員を庇えば庇うほど、グレンはますます隊員達を叱り飛ばす。


 ちょっと!含み笑いしてないで少しは助けてよ!!


 リュカは面白そうにその場を眺めていたけど、私と目が合うとニッコリと笑い、澄ましたような真顔に戻った。


「 グレン様、フレデリック様とセナ様のお二人だけでは、意識を失った我々を運ぶことは出来ません。内容はどうあれ私達は彼らに助けられました、そのことは事実でございます。」


「 しかしリュカ、これは騎士としての沽券に関わる由々しき事態だ ……」


「 それよりも私はいま、別のことが気になっております。」


 リュカの大きな猫目の行方はフレデリックに向けられる。急に振られてフレデリックは顔を傾けた。


「 先ほどは意識が完璧ではなかったので、皆の会話を聞き流していましたが …… ドラゴンの黒い血をセナ様が入手したことを、なぜ共に来たフレデリック様がご存知ではなかったのです? ずっとご一緒ではなかったと言う事ですか?」


「ドラゴンの血?しかも黒か!?…… いまセナが入手したと言ったか?? 」


 リュカの問いにグレンがますます混乱する。フレデリックは表情を崩さず、質問には何も答えなかった。リュカはしばらくの間フレデリックを見ていたけど、やがてにっこりと笑顔に戻る。


「 フフ、命の恩人にこのような尋ね方は失礼ですね。全ての疑問を解消するのはここを出てからが良いでしょう!…… それでは先頭で下へと降りるのは私とグレン様にして、先へ進むとしましょうか。」


 リュカ、大変お見事。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「 なるほどッ!そうやって降りて来たのか!!」


 私達が次の階へと降りると、そこには奏太と数人の隊員が集まっていて、感嘆の声を上げた。


「 奏太ッ!!」


「 やぁ世那さんお久しぶりッ!ここから降りて来たってことは、アレに気付いたって事だよね??」


「 ええ!ここから降りろっていう目印でしょう?他にも順路とか魔物とか!ありがとう、とても分かりやすかったわ!でもどうして草や木で記したの?」


 ああそれ?と奏太は頷く。


「 最初は床や壁に書いたり、紙を貼ったりしてみたんだけどね、俺達が外から持ち込んだ物はしばらくするとダンジョンに飲み込まれてしまうんだ。ならダンジョンにある物ならいけるのか?ってやってみたらコレがビンゴッ!ってわけ。」


 そうなんだ〜!魔物が通った場所は目印の枝が崩れてしまっていたから、どうして文字を直接描かないのか不思議だった。

 奏太はひとしきり再開を喜ぶと、私の隣にいるグレンやその周囲の人達へと一礼した。


「 騎士団長のグレンですね? ララノアは下で待機しています。ここも安全とは言えませんので、場所を変えましょう。ご案内しますので我々に付いてきてください!」


 奏太は自分らの隊員と頷き合い、道案内を始めようとして立ち止まる。


「 答えにくい質問なのですが、大事なことなのですみません。…… そちらの隊に死者はおられますか?」


「 いえ、こちらは死者は一人も出ておりません。…… ソウタ様の隊員達は皆ご無事でしょうか?」


「 ええ、私達の隊も死者は一人もいません。20名みんな元気です!…… 行きましょう。」


 あれ? 奏太ってこんなキャラだった? もっとチャラチャラと頼りないイメージだったけど、なんかめちゃめちゃしっかりしてない??


 奏太の隊員達は、彼の指示に従って動いてるようだ。もともと素質はあったのだろうけど、たった数日の間に見違えるようになった。


 彼らの案内のお陰で、この階は難なくクリアすることができ、更にその下の階へと降りて私は声を上げた。


 そこはかなり大きな空洞になっていて、ジャングルのように植物が生い茂っている! それに眩しく輝く光が降り注いでいた。


「 太陽石か。それもこれだけの広さの原石とは随分豪勢だな。」


 これが太陽石!? 名前の響きから幻夜石よりは明るいんだろうと予想はできた。だけどこの明るさは規格外だ。眩しさは本物の太陽ほど暑い光ではない。どちらかというと蛍光灯を天井に敷き詰めたような明るさだった。


「 グレンッ!! やはりお前だったか!!」

 

 ジャングルの一画が壁で仕切られていて、そこからグラマラスな女性の騎士がこちらへと走ってくる。この女性は召喚された日に一度顔を合わせている。奏太が選んだ団長さんだ。こうして見るとスタイルはもちろんのこと、目鼻立ちのくっきりとしたとてもキレイな女性だった。


 彼女はグレンと隊員達に軽くハグすると、私にも素敵な笑顔を向けた。


「 勇者様がこんな危険な所まで来られるとは!城で待っていても良かったであろうに。ここまでかなり怖い思いをされたことでしょうが、もう大丈夫、ここは安全です。」


 なんか迫力あるなぁ。何となくだけど気を遣ってるようでチクリと牽制された感もあった。…… 『こんなとこまでついて来て』と言われたようなね。すみませんね、だって来たかったんだもん。


 ララノアの案内について歩いていて、ふとグレンの顔を見上げると、彼は私の視線に気づいて眉を上げた。私は薄く笑って首を横に振る。


 彼に何か用があったわけじゃない、思い出しただけだ。そういえば召喚された日のグレンの印象も最悪だったっけ?って。ふふっ、あの日が懐かしい。


 壁の中はバーベキュー場、ミーティングルーム、休憩スペースの三ヶ所にざっくりと分けられていて、グレンとフレデリックと私はミーティングルームへと通された。


 どうして自分らで作った壁や床が、ダンジョンに沈まないのだろう?と不思議に思う。その理由を尋ねると、この施設は地面より五センチほど浮かせているようだ。魔力は使うが下につけてしまうと、途端に沈み始めるから仕方ないらしい。


 へぇ、よく考えられている。


 すぐに冷えたお水と熱々のステーキが運ばれてくる。お水にはスッキリとしたハーブの香りがして、ステーキにはしっかりとした下味以外に、何種類かのソースが用意されていた。


 まさかダンジョンの中で、こんなご馳走にありつけるとは思いもよらなかった! 疲れた体に冷たいお水が染み渡る。お肉も何のお肉か分からないけど脂がとても上品で臭みもなく軟らかい、文句無しの食べごたえだった。一緒に来た隊員達は隣の部屋で焼きながら食べているようで歓声がここまで届いて来る。


 私達と同室には奏太と団長ララノア 、そして数人の隊員が同席している。お互い聞きたいことや、話したいことは山ほどあったけど、どうやら私達が食べ終わるまで、込み入った話は待っていてくれるようだった。


 食事を済ませると定番の紅茶が出される。


 ほんの数時間しか元の世界に戻らなかったのに、なんだかこの紅茶の味も久しぶりのような気がして胸が温かくなった。


「 それでは本題に入りましょうか。」


 奏太がそれぞれの顔を見渡した。

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