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異世界ライフは美しい!  作者: 清水悠


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82/174

82【ショートカット】

いつも読んでいただきありがとうございます!


また、ブクマや評価してくださったかた

ありがとうございます!


どうぞご覧ください!

「 セナッ!なんてことを言うのです!? 」


「 だってフレデリック!? あいつあんな顔で馬鹿みたいな質問するんだものッ! 」


「 ひぃ、お、おやめなさい!! 」


 珍しくフレデリックは慌てて私を叱咤した。

 いま「 ひぃ 」って言った?

 魔物を見ると怒りでわなわなと震えている。


「 …… なんと愚かな。このグリフォンを馬鹿よわばりする者がいるとは。…… フフフ…… いいだろう小娘よ、そこまで言うのなら今の質問を答えてみよッ!!もし答えられぬなら …… 」


「 まぶたでしょー?」


「「「 !??  ︎ 」」」


 一瞬の魔の後、周りの隊員達から「 あー …… なるほど 〜 。」と口々に聞こえてくる。


 いや、簡単じゃん。


「 答えたんだから早く扉を開けなさいよッ!!」


 魔物は私の言葉に悔しそうな顔をしていたが、すぐに気を取り直した。


「 フン、一問目など小手調べに過ぎぬわ …… それでは第二問。」


「 ちょっと待ってよ!? なにシュッとした顔してんの? いったい何問あるのよ?もうなぞなぞなんて要らないから早く開けてよ!! 」


 私がイライラしてそう叫ぶと、フレデリックは私の口を塞いだ。


「セナ、彼は聖獣です!!異世界から来たあなたには理解出来ないかもしれませんが、神の遣いに近しい者です。お願いですから彼を怒らせないで下さい!」


 聖獣 〜 !? そんなの知ったこっちゃないわ!私は先を急ぎたいのッ!!


 そう叫んでいるのに、実際はモガモガと暴れるだけだった。魔物 …… いえ聖獣はそれをニヤニヤと眺めるとすまし顔に戻る。


「 愚鈍な小娘以外は、少しはまともな者もいるようだ。それでは質問を続けよう、いくらよんでも返事をしないもの。それは …… 」


「 本よッ!! 」


 私はフレデリックの腕を下ろして叫んだ。


「 どう? 当たってるでしょう? フッ!生温い質問してるんじゃないわよ!今度こそ扉を開けなさいよ!!」


 聖獣は頭から湯気が出そうな勢いで私を睨む。

 体毛なのか羽根なのか分からないけど、それがブワッと広がり全身で怒りを表現している。

 こうやって見るとライオンより鷲?の割合の方が多いわね。


 だけど聖獣は直ぐに冷静さを取り戻すと、シレッとした顔でまた質問を繰り返そうとする。そこで私の中の何かがプツンと切れた。


「 第三問ッ!!! 」


 グリフォンも含めて皆が驚いて私を見る。

 そう、いま叫んだのは私。


「 この世界は上り坂と下り坂 、どちらが多い?? 」


 その場に沈黙が流れる。隊員達が背後で「 上り坂か? 」「 いや、まてよ?」と呟いている。

 私はフレデリックの腕をムガッと外すと、聖獣に指を刺した。


「 さぁ、答えなさい!神の遣いがこんな簡単な質問も答えられないなんて、まさかそんなことはないわよねぇ?」


 毒を以って毒を制す、形勢逆転よ!!グリフォンは首を窄めて困惑する。


「 し、しかし私はこの扉の門番である。世界中を旅したことなどない私には、その質問に答えられるはずが …… 」


「 い〜え答えられます! この質問はここにずっと引きこもってた者だって答えられるわ?…… さぁどうする? なんなら降参してもいいのよ? どうしても答えが知りたいのなら …… 扉を開けなさい。」


 聖獣はしばらく頭を抱えていたが、やがて羽根を落としトボトボと扉の前へと向かうと、呪文を唱えた。


「 おぉ…… 扉が開いたぞッ!!」


 隊員達は喜び扉をくぐる。

 私は聖獣の前歩み寄ると、小さな声で答えを教えてあげた。


「 おぉ…… それが正解なのか!!」


 聖獣は私をジロリと睨みながら、それでも答えを聞いて満足そうだ。本当になぞなぞが好きなのね。


「 こんな所にいないで外に出ればいいのに。もっともっと面白い世界が見られるわよ?」


「 外にか?…… しかし私にはこの扉の門番という大切な役目がある。」


「 そんなもの!…… 扉なんて開けっぱなしにしてしまえばいいじゃない!どうぞ 〜 って。そしたら門番なんていらないわ?」


 聖獣は私の言葉に呆れて口をポカンと開いたが、やがて笑みを浮かべた。


「 大変見事な問いであったぞ、お主も通るが良い。…… ダンジョンでは気を抜くな、幸運を祈る。」


 そう言い終えると、グリフォンは再び台座の上へ飛び乗り、もとの石像へと戻った。


「セナ!行きますよ!!」


 私はフレデリックに駆け寄ると扉をくぐる。

 ふと後ろを振り返ると、扉は音もなく閉ざされていた。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 ……… また行き止まり、私たちは来た道を引き返した。


 さっきからずっとこんなことばかりだ。ようやく地下四階まで下りて来たけど、このダンジョンと呼ばれる場所は、かなり複雑な迷路となっていて、時間ばかりが過ぎてゆく。


 私は足を止めてしゃがみ込み、両手を床についた。


「 セナ様!? いかがされました??」


 後ろを歩いている隊員が戸惑い声を上げると、フレデリックもそれに気づいて戻って来た。


「 セナ? 疲れましたか?」


「 ねぇフレデリック。ここって地下はまだまだ続くって言ったわよね?」


「 えぇ恐らく。」


「 じゃあこの床に穴を空けることはできないかしら?」


「 床に? …… それは可能かもしれませんが、一時的なものになります。ダンジョンの壁はそれ自体が魔物と呼んでも過言ではありません。空けた穴はすぐに塞がります。」


「 そう。じゃあ穴を空けたうえに、この前みたいに植物なんかで空けた所を補強することは?」


「 …… 可能だと思います。しかしそれも時間とともに、壁にのみ込まれてしまうかもしれません。やってみますか?」


 私は頷いて数歩下がった。全員が見守るなかフレデリックは呪文を唱え床に穴を空ける。そして更にその穴をレンガの壁で補強した。


 穴の下を覗き込むと、階下を数匹の魔物が歩き回っている。こちらに気が付きキーキーと叫び始めた。


 フレデリックが言っていたように、すぐに穴はゴポゴポと動き出し、レンガはそれに飲み込まれ見る見るうちに小さくなっていった。


「 フレデリック、今度は穴を空けた上に補強をして、更にそこに下へ降りる階段を作ることはできる?」


「 まさか直接階下に下りるつもりですか? 」


 私は無言でフレデリックの顔を見上げた。


「 そんなこと、過去に前例がありません。」


「 前例がないのなら作ればいいの。できるの?できないの?? 」


 フレデリックは少し考えて、キラリとメガネを指で押さえた。


「 いいでしょう、やってみましょう。」


 穴にレンガが並び始め、それと同時に木製の階段ができ始めたのを確認すると、私は勢いよくそこに飛び込んだ。


「 何をッ!? セナッ!!待ちなさいッ!! 」


 私のいきなりの行動に驚いたフレデリックは、慌てて私についてくる。それを見た他の隊員達もバタバタとついて来た。


 彼らはかろうじて階下に下り立つと、私の足元に倒れている魔物に更に驚く。私は剣についた魔物の血を服で拭った。

 頭上を見上げると、通ってきた穴がほぼ塞がっている。


 この人数ならギリ通りきれる。正攻法で迷路と向き合うなんて時間の無駄だ。


「 これで行きましょう。次は階段じゃなくて滑り台みたいにして。」


 階段だと少しまごつく、滑り下りた先に魔物がいれば倒せばいい。しかしフレデリックの顔は険しかった。


「 セナが最初に下りるのは危険です!それにここはダンジョンの中なのですよ!?階下の安全性も確認せずに飛び込むのはおやめください!!」


 魔法で攻撃されたらどうするつもりなのですか!?と魔物の危険さをとくとくと説いてくる。彼の言うことは間違いではないのだけど、いい加減私をお客様扱いするのはやめて欲しい。


「 なら私より早くあなたが倒してくれたら問題ないわ。フレデリックなら出来るでしょう? いいから早くして!」


 そして私は隊員にも忠告する。時間を取られるイライラが、口調を気遣う邪魔をした。


「 先を急ぎたいの。少しでもタイミングを外すと上の階に置いてけぼりになるわよ! 死にたくなかったらしっかりついて来なさいッ!! 」


 私は剣を構えてフレデリックを見る。


「 今度は二階連続で穴を空けて。」


 フレデリックは険しい顔のまま、軽く頷くと床に手をかざした。納得はしてないけど従ってくれるようだ。


「 行くわねッ!!」


 私が穴に飛び込むと、足下に次々と木材が組み立てられ滑り台となる。私は床に下りると同時に、周りにいた魔物を一掃した。


 続いてフレデリックが次の穴を空けている所へ滑り込む。今度はさっきとは逆の方向に滑り台を作ってくれた。ジグザグに下りなければ、真下へは行けない。全員が同じ階に下り立ったときには、私は三体の魔物を倒していた。


 これで地下七階まで降りたことになる。


「 フレデリック、次は一気に五階分。」


 フレデリックは何か抗議をしようと口を開きかけたが、私と目が合うと口をつぐみ、床に手を向けた。


 お互いが頷く。


 床の穴を見て私は飛び込む。さっきの落ち方でフレデリックのタイミングは掴んだ。滑り台が早いか私が滑るのが早いかギリギリの所で、私は床に下り立ち魔物に剣を振る。


 それを何度も何度も何度も繰り返した。


 魔物は階下へ降りる毎に強くなっているのを感じたが、それ自体の数が増えなかったのはありがたかった。だいたい下りた先にいる魔物は三体から五体。

 離れた場所にいる魔物が襲って来る頃には、私たちは次の階下へと降りていた。


 どの魔物も最初の一撃で確実に仕留めていた。敵はいきなりの奇襲攻撃に、魔法を打ち出す暇さえなかった。


 途中やたら天井の高い階がありヒヤリとしたけど、フレデリックが確実に足場を作ってくれたから、安心してかけ落ちることができた。


 何度目か魔物の急所を斬りつけ、耳を塞ぎたくなるような断末魔を聞いたとき、次の階下へと降りる穴が空かなかった。


 どうしてだろうとフレデリックを見ると、彼は汗をぽたぽたと流しながら、メガネを直し呟いた。


「 …… こ、ここは五階目です。」


 そう言うと通路の奥に顔を向ける。騒ぎに気づいた魔物がこちらに向かって来る所だった。


 フレデリックは瞬時に腕を伸ばし、魔物がこちらに来れないよう石壁で通路を塞いだ。すぐに反対側も同じように壁を作り、ひとまず安全な空間ができた。


 全員が床に崩れ落ち肩で息をする。

 全力疾走 …… 誰も言葉が出ないようだ。


 確かに、これはただ降りてくるだけなのにものすごく体力を消耗する。私が遅れをとれば、あとに続く者を危険に晒すかもしれないし、足場を確認しながら同時に階下の魔物を見極めなければならない。


 私も顔の汗を拭うと壁に寄りかかる。一度座り込むと、もう二度と立てないような気がした。


 初めて魔物を倒したことに、神経が高ぶっているのが自分でも分かる。恐怖や罪悪感なんて今はまだ感じないけど、肉を切り裂く嫌な感触だけは意識せずにはいられなかった。


 私は大きく息を吸い、呼吸を整えると皆に声をかけた。


「 ケガはない? 回復できるなら今のうちにしておいて。」


「 セナこそ …… おケガは …… 無いのですか?? 」


 フレデリックはまだ呼吸が整わない。

 彼は魔法でガラスの小瓶を取り出すと、それをほんの少しだけ口に含んだ。途端にフレデリックの呼吸は安定し、さっきまでの苦しそうな表情もいつもの安定した無表情に戻った。


 あっ、ずるい。回復薬を使ったわね?


 するとフレデリックは立ち上がり、全員に向けて呪文を唱えた。


 すごい!体が軽くなった。これが回復魔法の力なんだ。


 通路を塞いだ壁がゴポゴポと床に沈み始めた。


 フレデリックは私に近づくと、更にもう一つ魔法をかける。すると服についていた魔物の血がキレイになくなった。


「 魔物の血液には毒が含まれてる事があります。服から皮膚につくのも危険なのです。」


「 ありがとう。」


「 あの …… お話中すみませんが、質問してもよろしいですか?」


 隊員の一人が恐る恐る話しかけてきた。この少年には見覚えがある。私が城に転移したときに、剣を向けてきた子だ。


「 こんな …… 闇雲に、ただただ真下におりて大丈夫なのでしょうか?」


 私が少年の質問の意図が分からず首をかしげると、彼は立ち上がって大きな声を上げた。


「 だって途中の階の部屋とかで、動けなくなってる仲間がいるかもしれないし、どこかの部屋に閉じ込められたりとかしてたら……。」


 私はうんうんと頷く。まぁ確かにその可能性はあるのよね。


「 そうね、いま私が目指してるのは真っ直ぐにグレンの所だから、それ以外の人がどこかの部屋にいたらまずいわね。」


 少年は私を不思議そうに眺める。


「 なぜグレン様の居場所が分かるのですか?」


「 彼は石を持っているから。」


 あっ!と少年は声を上げた。

 私が石の場所を見つけられることは知っているようだ。だけど私が分かるのは石の在処だけ。それを持っている人の生存までは分からない。


 私は立ち上がった。通路を塞いだ壁はすでに半分くらい沈み、その向こうに集まった魔物がみえる。


「 先を急ぎましょう。 」


 このダンジョンに入ったとき、グレンの持つ「石」は移動していたような感じだった。だけどさっきからそれがほとんど動いていない。


 なんだか嫌な予感がする。


「 次は十階分進むから覚悟して。」


 その言葉に、皆の表情は凍りついた。

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