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異世界ライフは美しい!  作者: 清水悠


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79【なぜあなたがここに?】

いつも読んでいただきありがとうございます。

また、ブクマや評価もありがとうございます。


どうぞご覧ください!

 ねぇ、銃刀法違反って知ってる?


 銃や刃物を持った人が巷をウロウロして、警察に逮捕された時に言われる言葉。


 やばい!やばい!やばい!!

 今の私がまさにそれ。


 みんながチラチラ見るはずよね?

 なんてったって私ってば、腰に剣ぶら下げてんだもの。完全にヤバい奴じゃない!


 あっちの世界ではそれが普通だったから、うっかり外すのを忘れていた。なんていうの? この安定した重みに落ち着いちゃってたわ。


 逆に堂々としてたからか、今のところ通報はされてはないみたいだけど、万が一職質されたらアウト、メチャメチャ斬れ味の鋭いこの剣に、逆に警察だってドン引きしちゃう。私はせかせかと早足で自宅へ戻った。


 思えばこれはフレデリックからの預かり物だ、気が動転てしいたとはいえ勝手に持ってきてしまった。きっと大切なものだったに違いないのに、もう返す手段がない。


 私は何度目かのため息をついた。

 戻ってからというもの、ずっとこんな事の繰り返しだ。みんなの顔や言葉が浮かんでは消え、その度に落ち込む。


 誰が悪いとかじゃなくただただつらいこの感情は、抜けようのない沼に足を囚われるみたいに気持ちを暗くした。


 もう一度最初からやり直せたらいいのに ……。


 今までだってそう思ったことなど何度もあった。でもいくらそう願っても奇跡は起こらないのだから、何とか乗り越えるしか無い。その切り替えの早さが私の持ち味なのに、今回ばかりはぐずぐずと未練を断ち切れないでいた。


 後悔なんてらしくない、人との縁なんてその場だけのものなのにね ……。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 自宅へ戻り鍵をかけると、一人暮らしであるはずの部屋に賑やかな音が聞こえる。どうやら私はテレビを付けたまま外出してしまったようだ。やれやれとリビングへの扉を開けると、見知った者の姿があった。彼はテレビを不思議そうに眺めている。


「 あっ! 帰ったでしか 。 」


 彼はそう言って手紙を差し出す。私が無言でそれを受け取ると、いそいそとテレビの前に戻った。


 ……… いやいやいや!?

 なななななんでここにいるの!??


「 パ、パトリックさん!? どうやってここに来たの!?」


「 んー?? いつも通りでしよ?」


 テレビに夢中で適当に答えている。でもそれじゃあ分からない。ロウの魔法は異世界の壁なんて突破できるのかしら? 私はパニックになりながらも急に不安になった。


 もしもこっちには来れるけど、戻ることができなかったらどうしよう?


 パトリックはあれよね …… 見た目がアレだしかなりヤバイわよね?うちで養うなんてかなり厳しいんだけど。


 いや、考えようによっては会社の余興で使えるかも?「どうもどうも!動くガイコツですよ〜!」つって。。。


 いやいやないない。誰が結婚式にそんなもの見たいのよ、場が凍りつくわ!!

 じゃあ …… サーカスとか研究機関に …… 売り飛ばすとか??


「 読まないのでしか ー?」


 私はパチンと我に返った。


 危なかった、危うくパトリックで一儲けを想像しちゃったじゃない。


「 それとも一緒に屋敷に行ーくでーしかー?」


 ───── ッ!?


「 行くっ!! 連れてって!!」


 無意識にそう叫んでいた。


 本当に!? 信じられない!!あぁ涙が出そうよ!もし戻ることが出来るなら、またみんなに会えるかもしれない!…… ううん、絶対に会いに行くから!!


 パトリックは当然いつものように「 いーきーまーせーんー 」と返ってくると思っていたのだろう、逆に驚いてこちらを見返した。


「 あっ!でもちょっと待って!? 」


 私はそう言うと急いで準備を始めた。あっちの世界に戻れるのなら、準備したいことがある。

 放置してあった異世界の鞄を開くと、中からスーツやパンプスなど、不要な物を取り出した。


 キッチンで調味料や日持ちのするレトルト食品を取ってくるとそれを鞄に詰め込み、それからパソコンを立ち上げた。


 最初のうちは大人しく待っていたパトリックが、テレビに飽きたのか「 早く早く!」と騒ぎ出す。仕方なくテレビのチャンネルを変えると、ネコとネズミがとことんケンカをするアニメを流した。

 この世界の人間は、大抵このアニメが好きなのよね。これでしばらくは大人しくなるだろう。


 時計を見ると、もうすぐ午後2時30分になる。急がないと! 計算が正しければあちらではもう四日くらい経っているはず。


 パトリックは想像以上にアニメに夢中だ!

 私はパソコンに入っているレシピ集を開くと、次々にそれをプリントアウトした。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「 パトリックさん、準備出来たわ!…… 行きましょう?」


 しつこいくらい笑い続けてるパトリックに、私は声をかけた。室内だけどブーツを履き鞄を抱える。

 一応携帯もフルに充電した。あちらに電波は無くてもいくらかは使える機能があるだろう。一つ心配事があるとすれば、本当にあちらに戻れるかどうかだ。ここまで期待値を上げておいて、やっぱり無理でしたでは済まされないからね!


 何度話しかけてもパトリックはこちらを見ないので、私は容赦無くリモコンでテレビを消した。

 パトリックは、急に真っ暗になった画面を見て体を起こすと「 おかしいでしねぇ?」と首をひねる。


「 パトリックさん、早く行きましょう?」


「 おっ!やっと準備が出来たでしか!待ちくたびれたでしよー!」


 嘘つけ!アニメに夢中だったクセに!

 そう思った瞬間、グラリと視界が真っ暗になった。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 ……………………… 。


「 ほ、本当に ……… 転移できた。」


 ここはまぎれもなく、あの魔物だらけのお屋敷だわ。と言うか、何でもいいから何かしら合図してから転移して欲しかった。あまりにも急すぎて軽い時差ボケが生じ頭がグラグラした。


「 ロウ様を呼んできましよー!」


「 えっ!? アッ!ちょっと待っ……。」


 私の呼び止める声も届かず、パトリックは部屋から飛び出していった。

 出来ることならすぐにでもあの鏡を使って、グレン達の元へと戻りたかったけど、連れてきてもらっといてそれはあんまりな態度だろう。せめてご挨拶くらいはと思い、その場で待っていた。


 部屋の時計を見ると、時刻は午後0時を指している。私は部屋の窓を開けて、外からの潮風を肌で感じた。


 夢じゃないわよね? まさか本当に戻ってこれるなんて ……。


 最初に召喚されたときとは全く別の感情が胸に広がる。

 どうしてだろう? 元の世界と違ってこの世界では妙な安心感がある。勇者としての肩書があるからだろうか? それともみんなが私を大切に扱ってくれるからだろうか? でも今日からはそれに甘えてちゃいけない。そんな生半可な気持ちでこの世界に戻ったつもりは全く無かった。


 それにしても、なかなかパトリックが戻ってこない。私は仕方なく部屋から出るとパトリックを大声で探し回った。このお屋敷の間取りは大体分かっている。


「 いたー!! もぉ〜パトリックさん、ローさんはどこ!? 」


 そう尋ねる私は少々キレ気味だ。

 だって!パトリックったら人を待たせておいて、仲間たちと楽しくティーパーティをしてるんだもの!! 大体あなたは“ティー”が飲めるの!?


「 あっ!いたんでしたね …… ロウ様はいま屋敷にいないみたいでし。」


 はぁー!?


「 いないの!? それなら早く教えてよ! …… じゃあまた今度ってお伝えして下さいね!!」


 もぉ!こんな事してる場合じゃないのに!

 バタバタと朱色の鏡の部屋まで走り、私は間髪置かずに叫んだ。


「 ラグドール城へ連れてって!!」


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 うぅ…… 慣れない、…… 酔ったわ。


 この鏡の転移だけは体質に合わない、本当に気持ちが悪い。


 私は石造りの床にガックシと座り込んでいた。

 すると突然頭上から冷たい声が降ってくる。


「 貴様、何者だッ!? 」


 私はヨロヨロと立ち上がると、辺りを眺めた。


 あぁ良かった!ちゃんとラグドール城ね。

 フレデリックの結界に弾かれたらどうしようと不安だったが、どうやら私はフリーパスになってるようだ。さすがは勇者の肩書きね。


「 オイッ! こっちを見ろッ!! 」


 そう言われて、私は剣を向けた相手を見据える。

 騎士団の一人だ。見たことはないけど勝気そうな少年ね、でも隊員なら話は早い。


「 グレン達はどこにいるの??」


「 なっ!? …… 貴様ッ!! グレン様の居場所を聞いてどうするつもりだッ!? 」


 ちょっとオーバーリアクションで面倒くさいわね。若干そう思いかけたとき、更に頭上から懐かしい声がする。


「 まさかっ!? そちらにいらっしゃるのはセナ様でございますの!? 」


 見上げると二階の手すりからサラが見下ろしている。彼女は口元を押さえていた。


 目と目が合った瞬間ツンと鼻の奥が痛くなる。さっきの別れのときは、私はサラに一方的で酷いことをしたのだ、涙を流して良い立場じゃない。泣きたい感情は必死で抑えて、私は彼女の名前を呼んだ。


 …… あぁ本当にここに戻れたんだ、だってサラがいるもの ……。

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