↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ライフは美しい!  作者: 清水悠


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

77/174

77【未開拓ダンジョン】

「 …… リュカ。」


 小声でそう合図を送ると、リュカは軽く頷き弓を構えた。羽根のある魔物なら、剣より弓のほうが仕留めやすい。


 リュカは狙いを定め、弦を離した。


  上手い!!


「 少し休むか?」


 前回の休憩から8時間は経った。リュカは「 大丈夫です!」と答えるが果たしてそれが本音かどうか、見定めなければならない。


 疲れは思考力を低下させるからな。


 稀に魔物の中で回復薬を落とすものがいるため、それほどの疲れはないが……。


 私は近くにいた魔物を斬ると「次の階下で休みを取ろう。」と決めた。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「 え!? それではここは未開拓ダンジョンなのですか!?」


「 あぁ、そうとしか思えない。」


 この世界には「ダンジョン」と呼ばれる迷宮がいくつか点在している。


 それがどうやって誕生するのか、いまだ解明されてはいないが、考古学財団によってすでに調査が終わっているダンジョンについては、その安全性を評価され、ものによっては自由に入ることができる。


 リュカは頷く。


「 手っ取り早く腕を磨きたい者などは、ダンジョンを利用することもあるそうですね。」


 だが財団により危険すぎると評価されれば、そこは立ち入り禁止区域に指定され、速やかに封鎖される。


「 聞いたことがあります。毎年何人かの者がそこに無断で立ち入り、帰らぬ人となると。」

 

 調査しきれなかったダンジョンには「宝箱」が眠っていることが多い。封鎖をかいくぐり一攫千金を夢見る者は後を絶たない。


 考古学財団が封鎖したダンジョンに無断で立ち入った場合、それがいかなる著名人であろうと、救助には向かわないルールがある。

 たとえそれが一国の王であってもだ。それほどダンジョンという場所は特別視される存在であった。


「 ではここのダンジョンも、そうなる可能性があると?」


「 そうだ。」


 城や遺跡にできるダンジョンとは異なり、地下ダンジョンには、出口と入口が別々な場合と、一緒の場合がある。


 入口と出口が同じならば、途中でリミッターが尽きるなど、ヤバくなったら引き返せばいい。ほとんどのダンジョンがこれに属する。


 だが入口と出口が別の場合はそうはいかない。

 入ったら最後、出口を見つけるまで永遠に出ることはできない。


「 それがこのダンジョンなのですね。」


「 ああ、ここに落とされたとき出口を探しても見つからなかっただろ? 入口はすぐに消滅してしまったしな。」


 加えて本人の意思に関係なく、無理矢理ダンジョンに引きずり込まれた。ここは恐らく封鎖レベルのダンジョンだろう。


「 すみません、私の不注意でした。グレン様はなぜあの村がダンジョンだとお気付きになられたのですか?」


「 日の光だ。」


 私はリュカにその理由を説明した。

 建物が建っていれば、陽当たりの良い場所とそうでない場所ができる。だがあの村の植物は総て均一に生えていた。自然に逆らって生きる者は、魔物以外あり得ないだろ?


「 あぁ、そうだったのか、全く気が付きませんでした。それにしてもグレン様はダンジョンにお詳しいですね!」


 未開拓ダンジョンが発見され、規模の大きいものになると、その地域の騎士団や魔導師団へ、考古学財団から連携調査の依頼が来る。


「 なぁリュカ、何年か前に世間を騒がせたダンジョンの事を覚えてるか?」


 そこでリュカは目を大きく見開いた。


「 まさかッ!? それってあのセイシェルワダンジョンのことでございますか!? 」


 ご名答。

 セイシェルワの森は、ラグドール王国とソマリ王国の国境に位置する。あの時は両国の騎士団や魔導師団が調査に加わった。


 リュカは何かを言いかけて口を紡ぐ。彼が何を言おうとしたかは尋ねなくても察することはできた。私はゆっくりと頷くと顔を歪ませた。


「 そうだな。あの調査では考古学者、騎士団、魔導師合わせて26人の死者がでた。」


 あの時は、調査のやり方に多くの問題点があった。学者の考えと、ダンジョンの危険度はかみ合わず、また両国の連携も全く取れていなかったため、お互いが手柄を取ろうと主張を譲らなかった。


 その結果が、ダンジョン封鎖だ。


 リュカはますます険しい表情になり自分の足下を見る。


「 先に降りたと思われる勇者様達の隊はいずこにおられるのでしょうか。それほど危険な場所だとすれば、もしかしてすでに ……。」


 その先を言いたくないのであろう、そう思うのも無理はない。ダンジョンの魔物はとても強い。

 二人で動いている私達は身軽だが、こういった場所では、大人数の方が死のリスクは高まる。


 しかしまだ望みはある。村に残された馬の結界が張られているうちは、それを掛けた者がまだ生きている証拠だ。

 もっとも、私とリュカがこのダンジョンに入り、すでに二日経っているのだが ……。


「 さて、そろそろ行くか?」


 ここは地下20階くらいだろうか? おおよそではあるが、大きいダンジョンでもその階層は30前後だと言われている。回復薬で体力も魔力も満たされた。早くララノアの隊と合流して、こんな所とはおさらばしたい。


 行きましょう!!とリュカも元気よく立ち上がった。


「 セイシェルワダンジョンに比べれば、ここはそんなに複雑なダンジョンではない。今日中にここから出るぞ!! 」


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「 右だッ!! リュカッ!!」


 私の声に対しリュカの反応は少し遅れた。魔物の鋭い鉤爪が激しく振り下ろされる。


 掠ったか!? いやギリギリうまく避けれたのか?


 リュカの心配をしている場合ではない。私は剣に刺さっている魔物を強引に引き剥がすと、その背後から襲いかかる魔物にも留めを刺した。


「 大丈夫か!?」


 上級魔物を複数相手に、リュカも何とか倒したようだが膝をついている。駆けつけようとするのを手で静止し、剣を杖にしてリュカは立ち上がった。


「 …… 大丈夫です、先へ進みましょう。」


 その顔に生気はなく、潔癖な彼の身体には魔物の血がべっとりと貼り付いている。


 私は固く唇を噛んだ。

 完全に読みが間違っていた。このダンジョンは複雑ではないが、魔物の強さが普通じゃない。


「 ハッ、まるで …… バーミーズマウンテンの塔みたいですね。」


 確かにあの時と似ている。この世界の魔物全体が強くなっているのか、もともとこれがこのダンジョンの性質なのかは不明だが、魔導師抜きでのこの戦いは無謀にも程がある。


 まずいな、リュカの目に光がなくなってきている。


 魔物の倒し方も、考えて倒しているというよりは、反射的に体が動いているだけのように見える。それが出来るというのは、普段の訓練の賜物なのだろうが、余裕が無いのは間違いない。


 この階に回復薬を落とす魔物はいなかった。その上、魔力を吸い取る魔物がいた事が痛手となった。


 お互いリミッターが近い。

 私とリュカは、攻撃魔法は使えるがその他の魔法は日常的に使える程度しかできない。この先これ以上魔法攻撃を得意とする魔物と出くわせば、命を落とす可能性がある。


「 ハハ …… やった! グレン様あれをご覧ください!!」


 リュカの指差す方向に希望が見える。このタイミングでの宝箱はさすがに私も感動すら覚える。


「 中に回復薬があるかもしれません!! 」


 リュカは嬉しそうに走り出した。


「 呪いを確認してから開るんだぞ。」


「 分かってますって!」


 リュカは元気にそう答えて宝箱に近づいた。

 ほとんどの宝箱には回復薬が入っている。贅沢は言わないが前回のようにドラゴンの血でも入っていれば、お釣りがくるくらいだ。


 だがやはりこのダンジョンはそれほど甘くはなかった。


 リュカが宝箱まで辿り着いたとき、彼の足下の石畳みが崩れ、私とリュカはなすすべもなく落下した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。