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異世界ライフは美しい!  作者: 清水悠


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76【勇者ソウタの探求②】

いつもありがとうございます!

また、ブクマや評価していただい方も

ありがとうございます!


どうぞご覧ください。

「 急げ!急げ!急げ ─── ッ!!!!」


 俺達はなだれ込むように階下へと転げ落ちた。


「 なっ!? 植物!! 地上に出られたのか!? 」


 一瞬そう期待したが上を見上げて落胆する。よく目を凝らせば光の奥に石の天井が見えた。


 だけど命からがら降りて来たこの階は、それまでの階の様子とはまるで違っていた。

 密林のように草木が生い茂り、松明ではなく部屋全体が日光に照らされているような明るさが広がっている。


 部屋と言ってもサッカー場で例えるなら二〜三面分の広さはあり、天井までは五十メートルはありそうだった。


 ザッと見渡した限りでは魔物の姿は見えない。俺は剣を構えたまま後方に叫んだ。


「 全員いるか直ちに確認ッ! 負傷者の重い順に回復処置をしてくれッ!それ以外の者は周囲を警戒ッ!!」


 息をつく間もない、一瞬の油断が隊全体を危険に晒す。


「 水があるぞ!! 」


 隊員の一人がそう叫ぶと、みんなの顔つきが変わった。近づいてみると、そこにはキレイな湧き水が溢れている。


 一同は喜び、全員の無事と周囲の安全が確認できると、それぞれに水を飲んだ。


 この世界の湧き水や川の水で飲めないものはほとんどないらしい。水を汚す人がいないからなのだろうか? それともバクテリアの関係なのか。どっちにしてもつくづく美しい世界だ。


 ここは今までの階より少しは安全そうだ。部屋の殆どを埋め尽くすジャングルの奥はどうか分からないけど、少なくとも手前の平坦な場所は何の仕掛けも無さそうだった。

 俺は剣を鞘へとしまいもう一度叫んだ。


「よし!調査隊を組み三班に分かれよう!一班はこの部屋の調査、二班はここの守り、三班と負傷者は休憩だ!」


 俺がそう指示を出すと、皆が「 ハッ!!」と敬礼し迅速に動き出す。敬礼はやめてくれって何度も頼んでるのに、誰も聞いちゃくれない。


 廃村調査でこのダンジョンへと誘い込まれてから、もう三日目だ。


 もっともずっと洞窟みたいな所を進んできたから、今が昼なのか夜なのか、魔導師の持つ時計がなかったら感覚がおかしくなっていたかもしれない。


 もともと宿屋を拠点にしていたこともあって、食料もそれほど備蓄していなかった。また、今回は全員で動いてしまったため、俺達の失踪に王宮の者が気がつくのは遅くなるだろう。


 このダンジョンという所は階下に進むにつれ、魔物がどんどん強くなる。


 ほぼ不眠不休で食料が底をつき始め、回復薬や魔力のリミッターも近づいてきて、皆が焦り始めていた。


「 ソウタ、行こう!」


 ララノアと俺は一班だ。暫くぶりの水で喉を潤すと、俺は頷き再び剣を抜いた。


 この密林の中に、食料になるような魔物がいればいいのだが ……。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「 マジで凄いよなぁ!俺達、いまダンジョンの中にいるんだもんなぁ。」


「 しかもこの階で見つけた宝箱入れると、もう七つ目だぜ!?」


 かなり大きなマットレスの上で、それぞれがくつろいでいる。負傷者もドロップ品の薬草などで、回復したようだ。


 密林の中には牛に似た割と大きな魔物がいた。決して弱い魔物ではなかったが、腹が減って殺気立つ隊員の前では赤子を捻るようだった。


 残念ながらララノアは料理ができない。隊員の一人が牛の魔物をキレイに捌き、今夜はステーキ祭りとなった。


 魔導師の中で植物に詳しく、三十センチくらいの背丈の植物は、アスパラのようで焼いて食べたらうまかった。


 なんともかわいそうだったのは、調味料を持っていた隊員だ。何日か前に立ち寄った村が、スパイスや調味料を生産している村だったから、家族にや友人にお土産用として、いろんな種類の物を大量に買い込んでいたのだ。


 塩や胡椒はもちろんのこと、カレー味に近い粉末や、醤油のような味の実の瓶詰め。マスタードに赤唐辛子の発酵させた物。


 最初は出し渋っていたけど、肉を味付けなしで食べるのは本人も嫌だったのか、最終的には全部出してくれた。


 驚いたことにコーヒー豆まであった。この世界に来てからずっと紅茶ばかりだったからコーヒーが飲みたかったけど、この世界でコーヒー豆は飲み物ではなく、お香として取り扱っているようだった。ただ俺は料理のことはさっぱり分からない。豆だけあってもどうにもならないから、仕方なくコーヒーは諦めた。


 俺達が休んでるスペースは、魔導師が土魔法で高い壁を作ってくれて、のんびり身体を休めても魔物に襲われる心配はなかった。


 日光だと思ったのは、壁一面を覆っている石が「 太陽石 」と呼ばれる石で、ずっと発光している貴重な石のようだ。


「 俺、このダンジョンから出れたら、浴びるほど酒を飲みたいなぁ。」


 その一言で皆がしんみりとする。バーベキューを腹一杯堪能し、気力も回復したところで隊員達が語り出した。


 やめてくれよ、それはフラグですから。


 映画だったらこのあと「 俺がおごってやる!」と息巻いた奴は、絶対生きて帰れないぜ?


 俺がそう思いながら笑っていると、隣にララノアが座ってきた。


「 みんなの体力が回復したらどうする?」


 そうだなぁ。と俺はマットレスに体を倒した。ララノアはうかない顔で目を伏せると会話を続けた。


「 まぁ、どうするも何も、先に進むしかこのダンジョンから出る道はないのだが ……。」


 そうなんだよなぁ。だけどここからもっと下の層は、更に魔物が強くなるんだろ? 今回は運良くこの階で体力を回復することができたけど、これから先もそうとは限らない。


 それに当たり前だけど、俺は死者は絶対に出したくなかった。


「 このままここで暮らそうか。」


 ララノアが「はぁ?」と驚く。頼むからもう少し女性らしい返事をしてくれ。


「 俺達からの書簡が途絶えれば、王宮はきっと動くでしょ? そしたら必ず誰か救助を寄越すはず!助けが来るまで大人しくここで待とう。」


 ここから下の階層がどのくらいあるのか分からない。幸いこの階は食料が無限湧きだ。この密林の階を拠点として、俺達でダンジョンを調査しよう。


 体力や魔力が整った者から、調査に入りヤバそうだったらすぐ戻る。もちろん最下層まで調査して、この一個隊で突破できそうなら先へ進む。

 ダメそうなら、ここで体力を温存して応援部隊と合流してから進めばいい。


 俺がその作戦をララノアに話すと、彼女はそれを大いに賛成し、更なる細かい策を詰めて来た。


 正直二十人いても、ここまで来るのはギリギリだった。むしろ全員生きてるのは奇跡といってもいいくらいだ。

 この階より上の数階は、想像を絶する魔物どもだった。倒すなんてとんでもない、魔法を駆使して、ただただ逃げてきただけだ。


 俺はその中の一匹の魔物を思い出し、ザワザワと鳥肌が立つのを感じた。あの魔物は魔導師の五人がかりで結界を張り、別の魔導師の眠り魔法がたまたま相手に効果的だったから切り抜けることができた。


 そう、運が良かっただけだ。とてもじゃないが、まともに戦って勝てる相手じゃないだろう。


「 だがいつまでも、というわけにはいかないぞ? ある程度の期限は決めねばならない。」


 ここに留まる日数のことだろ? そうだな、と今度は俺が頷いた。


「 なら、調味料が尽きるまで、が期限でどうだ?」


 いいだろう!とララノアは笑った。


「 調味料を持ってた隊員は悲鳴を上げるな!」


 つい数時間前までは「死」が頭の隅にチラついていたけど、ここにきて希望が見えてきた。


 必ずみんなで生き残るんだ! そして絶対に、このダンジョンを攻略してやる!

 俺はそう誓った。


 その時、マットレスの端のほうから一際大きな声が聞こえてきた。


「 じゃあここを出れたら、俺がみんなに一杯奢ってやるぜッ!! 」


 あっ、言っちゃった??

 もぉ〜 それ言っちゃあダメなのよー?

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