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異世界ライフは美しい!  作者: 清水悠


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67【ギルドの取引(前半戦)】

 67【ギルドの取引(前半戦)】


「 …… あぁ、びっくりした。」


 バタンと扉を閉めるとここは応接室だろうか? 私はギルドの二階の一室に連れてこられた。部屋の中にはサラとターニャが座っていて、私に手を振っている。


「 驚いたのはこちらの方です!さっきの男と何をイチャイチャしてたのですー?」


 な! 何を言ってるのよリュカ!別にイチャイチャなんてしてたつもりはない。


「 申し訳ございません、セナ様!まさかこのような小さな建物で迷子になるとは私も思わなくて。」


 ちょっと!ロッド?失礼じゃない?? 私は迷子になっていたわけじゃないわ? それにこの建物ってそんなに小さくないし。


 いろいろと反論したい事はあったけど、思いのほかグレンの機嫌が悪いから、私はおとなしくソファーに座った。隣に座るフレデリックが、ふんわりと微笑えむ。


「 ギルドの探検は楽しかったですか?」


 恐ろしいまでのキレイ顔に見惚れてる場合じゃないわよね? もしかして私、フレデリックにまでバカにされてる?


 コンコン。と扉がノックされ「失礼します。」と女の子が入ってきた。私の前に、冷たい飲み物を置くと「も、もう少々お待ち下さい。」と部屋から出ていった。


 私は飲み物をいただきながら、改めてグレン、フレデリック、リュカの三人を眺めた。


 そうなのよねー。


 この世界に来てから、ずっと一緒だから感覚がマヒしちゃってるけど、かなりハイスペックな人達なのよね? 飲み物を運んできた女の子だって、緊張で顔を赤らめていた。


 グレンなんて顔だけじゃなく、体型までモデル顔負けじゃない? 綺麗な顔なのに、屈託なくクシャクシャに笑うなんて、そりゃ男性からもモテるわよ。さっきの演説聞いた?良く通るいい声してるわよねー。それでなに? 世界一の剣豪?

 いやいやいや!何でも持ってるわね!


 美しさならフレデリックの右に出る者なんて存在しないだろう。「憂い」まで点数に入れていいならぶっちぎりよ!なんでこう、いつも艶っぽいの? 身体はちょっと痩せ型だけど、黒髪黒眼に合わせた黒のローブと黒の手袋がまた、なお一層彼のスタイリッシュ感を増し増しにしてる。それにねぇ、こんなに儚そうなのに、魔法の腕はピカイチ。結局女ってのは頭の良い男に弱いのよねー。


 リュカだってねぇ、文句なしの容姿端麗。

 サラサラのウェーブのかかった銀髪、大きな猫目はいつもキラキラとしている。まつ毛まで銀色ってありえないでしょ! 小生意気な態度と彼の礼儀正しさが、上等なペルシャ猫を連想させる。

 身長はグレンやフレデリックには及ばないけど、そこはまだまだ成長期!今後にご期待下さい!!


 一般の人達に紛れるまで気付かなかったけど、ラグドール城で勤務するって、物凄い花形なんだろうね。ここまで人気を博してるとは知らなかった。


 ってかさ、さっきのグレンに促されて階段を上って来るとき、みんなの視線が怖くて周りを見れなかったわよ。…… 特に女性達のね? 誰よあいつ!って感じだった。もう背中に殺意の塊りが突き刺さってたわ。

 ここに集まってる人って、それなりに強い人が多いわけでしょ? てことはあの群衆の中に、魔法を使える人もいるわけでしょ?

 やだー、私ってば死の呪文とか呪いとか掛けられちゃったりしてないかしら?


 い、今のところピンピンしてるわね。


「「「 ブハッ!! 」」」


 なになに? なんかあったの? 誰も何も喋ってないのに、急に吹き出しすなんて …。

 顔を上げると、部屋のみんなが私を見て笑っている。


 隣を見ると、フレデリックはテーブルに顔を伏せてカタカタと震え、目の前にいるロッドも口元を押さえて体を横に向けていた。

 グレンなんてさっきまでの不機嫌さは消し飛んでいて、豪快に笑っている。

 何がそんなに面白いの?と尋ねると、リュカやターニャは更に笑う。


 えー? 何なの〜?? 私にも教えてよー?

 困ってサラを見ると、彼女は涙目を拭ぐった。


「 だってセナ様ったら!先程からコロコロ とものすごい百面相なのですもの!!…… 私、もう可笑しくて! 」


 あ、あたしぃ〜??


「 あれほどまでに思い詰めて、一体何を考えていたのですか?」


 まだ笑い続けるリュカにそう尋ねられ、私はちょっと首を捻って返事をした。


「 魔法で呪われたら困るなって。 」


 私は更に笑われた。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「 それではこちらにお入りください。」


 ようやく通された部屋には、二人の男性が待っていた。私達が中に入るとその二人は立ち上がり、グレンやフレデリックと挨拶を交わす。


 正面にいる色素が薄そうな40代くらいの男性が、このギルドの所長であり、その隣のよく日に焼けた、50代だろうか? 恰幅のいい男性も同じくギルドの職員と紹介された。


 私も軽く会釈すると、皆と一緒に職員の向かいに腰を下ろした。


 なんか、この部屋は他の部屋と趣きが違う。

 窓のない部屋だからそう思うのかもしれないけど、蝋燭の入ったガラスの容器が少し赤みがかっているせいで、余計に部屋がうす暗く感じる。


 あぁ、そうか。小さな音だけど音楽が流れているのね。


 この世界にミュージックプレーヤーがあるとは思えない。どうやって流しているのか不思議だったけど、その音楽は落ち着いた音調で、会話の妨げになるようなことはなかった。


 テーブルの上には、昨晩グレン達が出した魔物のドロップ品や宝箱が、所狭しと並べられている。


 話を聞いていると、所長の隣にいる男性は、ギルド所属の考古学者さんらしく、グレンから宝箱の入手した経路について、詳細を聞き出していた。


 その間、所長さんは時折相づちを打ちながら、言葉を挟むことなく聞いている。彼の癖なのか、手に持つペンの金具の部分をカチカチと鳴らしているのが気になった。


「 …… では、場所は時計の町郊外に位置する森を抜けた山の山頂、吊り橋を渡った所の真下。横穴から入れるという事で …… 」


「 ああ、間違いない。」


 学者さんの確認にグレンはそう答え、隣にいるフレデリックも頷いた。


「 それでは次に、生息する魔物の種類を教えて下さい。」


「 あぁ、それは …… 」


 グレン達が魔物の名前と特徴を挙げていくと、そうそう、そんな魔物もいたわね。と私も懐かしく思う。

 ふいに左腕に重みがかかりそちらを見ると、ターニャが「えへへ」と舌を出した。


 退屈なのだろう。彼女はウトウトとして、私に寄りかかってしまったようだ。見るとサラもあくびを噛み殺している。


 所長さんも、暇を持て余してるのか、相変わらずペンをカチカチと鳴らしながら、うつむき加減で目を閉じている。


「 それは宝箱に呪いを? それとも洞窟自体だったのか分かりますか?」


「 洞窟自体か、あるいは呪いではなく石像に意思があったのかも知れぬ。宝箱に掛けられていた呪いではない。」


「 それは大変珍しい!…… 承知致しました、調査団に注意するよう指示しましょう。…… 石像は二体で間違いありませんね?」


「 アッ!いや、あの …… 石像が二体なのは間違いないのだが ……。」


「 どうしました??」


 端切れの悪いグレンに学者さんが眉を上げる。グレンはフレデリックに助けを求める素振りをするけど、フレデリックは苦笑いするばかりだった。


「 た、大変申し訳ないのだが、石像は破壊してしまい、もうないのだ。」


「 破壊? ええ、それは仕方ありません、魔物に攻撃されればこちらとて反撃するのはやむを得ませんからね。何も問題ありませんよ、私達学者は破片からでも状態を読み取ることが可能ですから。」


 へぇー!すごいのね、考古学者さんて。

 私の感心をよそにターニャはすっかりと寝てしまっている。


「 いや、それが …… 修復する破片もないかも知れぬ。…… いやないのだ。すまないがまるっと何も残ってない。」


「 と、言いますと?」


 グレンは「テヘッ!」と開き直っているけど、学者さんは眉をひそめ声のトーンを落とした。

 そこでようやく所長さんが口を開く。


「 グレン様、未調査の遺跡やダンジョンの発見時には、最寄りのギルドに速やかに報告する義務がある事を、まさか知らないわけでは …… 」


 もちろん知っている!とグレンは即座に答える。


「 可能であれば、状態の保存を最優先する事も?」


 グレンは頷きただひたすら「申し訳ない!」と謝っている。こんな彼を見るのは珍しい、それほどの事をグレンはやってしまったという事だろうか?


「 石像の魔物の強さは中級程度でしょう? 斧を振り回した時の爆風だって、貴方様なら難なくかわせるはず、それでは一体何の攻撃で倒したのです?」


 グレンは、最初はとても言いにくそうにしていたが、やがて石像を倒した攻撃の名前を口にした。彼らは魔物と戦うとき何らかの呪文を口にしている。でも彼が今言った言葉は耳にしたことがなかった。


 ガタン!と派手な音をたて立ち上がったのはリュカだった。


「 それは本当ですかグレン様ッ!!」


 リュカがグレンを責めるような口調は珍しい。


「 …… あの状況では、上にいる魔物も含めて、一度に全てを破壊する必要がありました。山の地形すら変えてしまいましたし、多少やり過ぎ感は否めませんが、それよりも優先すべき事が我々にはありました。」


 フレデリックはグレンを擁護しながらリュカを見て首を振る。リュカはハッとし …… 恐らく私を見て、再び椅子に腰を下ろした。


 いたたまれない。

 たぶんだけど、私が崖から落ちちゃったせいで、グレンは石像を破壊するしかなかったのよね?


「 国の騎士だからといって、何でも許されると思ったら大間違いですよ! 場合によっては我々とて国王様へ直訴する事も …… 」


「 やめなさい。」


 怒りの治らない学者さんを所長さんが止めに入るると、その後はムスッと腕を組み黙り込んでしまった。


  …… な、何もそんな言い方しなくてもいいじゃない。そりゃ遺跡の調査も大事かもしれないけど、グレンはいたずらに遺跡を破壊したわけじゃない、 悪いのはあんな場所でのこのこ突っ立っていた私だ。

 グレンは何一つ悪くないのに ……。


 悔しくてそう一言でも言ってやろうと顔を上げたけど、なんだか体がだるくて思うように動けない。変だな、ロッドの城で戻した石が、思ったより大きかったのだろうか?


「 遺跡どころか山すら残ってるのか怪しいものですな。」


 所長さんはやんわりと息を吐き、細い目で真っ直ぐにグレンを見返す。


「 それでは、今回は考古学財団からの報奨金は無しという事でよろしいですかな?」


「 構いません。」


 即答のグレンに、所長さんは「承知した」と頷く。そうした二人の会話もなんだかボンヤリと遠くから眺めているようだった。


 あぁ …… 身体が重い ……。


「 では次に、今回当ギルドに持ち込んでいただいた品物の、鑑定結果のご報告に入りましょう。」


 その瞬間、室内に目の覚めるような突風が吹き乱れた。蝋燭の灯りが消えてしまい、部屋の中は真っ暗闇に包まれた。

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