66【初めてのギルド】
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「 すっごい人ね!! 」
ロッドのお城で石をゲットした私達は、滞在している屋敷には戻らないで、グレン達がいるであろうギルドという施設へ向かった。
建物の中は沢山の人がごった返してて、とても賑わっている。
「 皆様が何処におられるか確認して参ります! セナ様はこちらでお待ち下さい!」
そう言って人に紛れて行くロッドは、今朝私を迎えに来た時より表情が柔らかく見える。彼は施設の関係者に声をかけて何やら話し込んでいた。
私はキョロキョロと辺りを見まわしすと、壁の掲示板に気がついた。
ふんふん、なになに?
読んでみると、そこには様々な事が書かれていて、魔物の討伐依頼や旅の護衛依頼。そして生捕りにして欲しい魔物や人探しなど。
あれは …… どこかの工事現場についての案件かしら? 依頼期間が 一カ月間となっていて、まるで元の世界の職安のようだった。
「不足素材」の欄には、鎧竜の鱗、闇コウモリの羽、ドラゴンの血などファンタジー溢れる言葉が書いてある。ただし、ドラゴンの血の所には、誰かがイタズラしたのか、矢印で「無理に決まってんだろ!」と書き込まれているのがなんだか面白かった。
他にも「各種教室案内」の欄があり、剣や武道、魔法や旅の心得など、初級レベルから上級レベルまで案内があり、魔法教室などは一度見学してみたいと思った。
突如「 カランカラ〜ン!」と鐘の音がなり、皆が一斉に掲示板前に集まってくる。見ていると掲示板の文字がウネウネと動きだし、書かれている内容が更新された。
完了した依頼は掲示板からなくなり、新たな依頼が書かれているのかな? よくよく見ると、先ほどのドラゴンの血の「無理に決まってんだろ!」の所には、更に矢印が増え「そこをなんとか!」と足されていた。
少し進んだ所に売店があり、中をのぞいてみる。所狭しと並ぶガラスの容器には「回復薬」と書かれている。その他にも「毒薬」や「睡眠薬」「拘束薬」など物騒な名前の薬が売られている。お店の入り口で可愛い女の子が、試飲を勧めてたけどいったい何の試飲なんだか 。。。
お店には、薬以外に武器や武具なども売られていて「試し切りをしたい」と店主に頼んでいるお客様もいる。ネックレスや指輪などのアクセサリーには、魔力を高めたり、回復を早めたり、敵の攻撃を受けにくくするなど、頼もしい効果が書かれていた。
売店を出て、間口の広い階段を五段ほど上がると、20畳ほどの広さの部屋があり、そこでは怪我をした人が治療していたり、ベッドで眠っていたりと身体を休めている。
そのまま階段は二階へと続いていたけど、関係者以外立入禁止の衝立がある。私は再び下の階に戻り、広々とした施設の反対側へと向かった。突き当たりには小部屋がいくつかあって、中では 4〜5人のグループが、旅のミーティングをしていた。
アレッ? あの子 ……。
小さな子供がフロアをウロウロしてしている。さっきも見かけたような気がする。私は迷子かと思ってその子に近寄り、しゃがみ込んで「 おうちの人は?」と話しかけた。
その子供はぼんやりと私を見つめ、いきなり「クワッ!」と大きく目を開いた。同時に髪もブワッと総毛立ち、額の両側にツノが盛り上がっている。
「ヒッ!!」
私は尻餅をつき声にならない声で小さく悲鳴をあげると、その子供はニタァと笑う。その唇は耳の付け根まで広がりゾッとした。
「 お父様があっちにいるよ!おねいちゃん、どうもありがとう!」
予想に反して、子供はケタケタと笑いペコリとお辞儀をして親の元へと走って行った。
い、今のは小鬼?? 嬉しくて目を開いたのかもしれないけど、あー、怖かった。まだ心臓がバクバクしている。
「 おい、どけよ。」
背後から冷たい声を掛けられ慌てて立ち上がる。振り返るとそこには白髪の少年が立っている。
おぉ…… RPGの主人公のようだわ!
きれいな顔立ちのその少年は、機能性よりデザイン性を重視したサーコートに身を包み、これまた派手な剣を携えている。
「 チッ! ボケッとしてんなよ。」
ふーん、ああいう子もいるんだ。
その少年は、道を譲ると蔑むような目線で私に悪態を吐き去って行く。この世界で出会う人の殆どは性格が良く、ひねくれてるのは私くらいじゃないかと思っていたので、少し安心した。
気を取り直して、他にも面白いものがないか散策を続けてると、建物の入り口でざわめきが起こった。
みんなにつられて私もそちらを見るとギョッとする。 …… アレは何なのだろう?? 体長二メートルほどの大きさの、犬?というより狼?なのだろうか? 黒い体毛をファサリファサリとなびかせて、ゆったりと歩いている。一緒に入って来た三人の一人が、その狼に何か話しかけていた。
この施設には個性的な人が多い。それでも今入って来たグループは特に目を引く華やかさがあった。先頭を歩くのは背の高い美しい女性で、茶金髪の輝く長い髪に、深紅のローブ、身につけているアクセサリーも呪術的な印象の物が多い。
その後ろを歩く二人の男性達は、プロレスラーのようなガッチリとした体格にヘビーメタルな格好。一人は大きな剣を背中にさげ、もう一人はこれまた大きな斧を肩に担いでいた。
割と有名な人達なのだろう。そのグループを見る周りの人達は、まるでアイドルにでも会ったような歓声を上げている。
ふと、狼が立ち止まる。
長身の女性がそれに気がつき「どうした?」と話しかけている。
「 知り合いか?」
急に真横から話しかけられ私は驚いた。隣を見ると、さっきの白髪の少年がすぐ側まで戻って来ている。今のは私に向けて放った言葉なのかしら? そう思いその少年を見上げると、彼は露骨に顔をしかめた。
「 お前なぁ、オレ様が貴重な時間を使って話しかけてやってるんだ、一回でちゃんと聞けよ!」
えー? 私の貴重な時間をあなたとの時間で無駄にしたくないんだけど、と言えるほどの度胸は ……。
「 いい度胸じゃねぇか!オレ様にそんな口をきくなんて!」
あら声に出ちゃってた? ゴメンなさい!うっかり本音が!ヘラヘラ笑う私に少年はイライラし出した。
「 さっきの聖獣だよ!お前のほう見てただろ?知り合いじゃねぇのかよ?」
ギャンギャンとうるさい子だ。黙っていれば少しはモテるだろうに。改めて顔を見ると、目の横に泣きぼくろがあってかわいい。まぁ、それでも顔の綺麗さも品格もリュカの足元にも及ばないけど。
「 知り合いじゃないわ。あの狼って人の言葉を話せるのねー。ビックリしちゃった。」
「 はあ!? お、お前そんな事も知らないのか? どんだけ田舎モンだよ!! 憶えときな!霊力の高い聖獣が人語を話せるのは当たり前なんだよ! 」
まぁお前みたいな奴が、あの方達と知り合いなわけねぇよな!と一人で納得している。
「 あの人達って有名なんだ?」
「 ホント世間知らずだな!むしろ何でギルドにいるんだよ。 憶えときな!あのパーティはこのティエラでも10の指に入る討伐屋だ。」
憶えることがたくさんあるわね。少年は自分の自慢話をするかのように、フフンと鼻を鳴らし教えてくれる。
「 そうなんだ。…… ティエラって?」
「 はぁー??信じられねー!ティエラってのはこの世界のことに決まってるだろッ!! …… お前マジで大丈夫か!?」
えーっと、つまり「地球」=「ティエラ」てことね。何日もこの世界にいて初めて知ったわ。
「 ホント自分が心配!さっきあそこの階段から落っこっちゃって、記憶が曖昧なのよ。」
私は適当に少年をあしらって、その場から離れようとする。だけど少年は私の腕を掴んで離さなかった。
「 なぁ、お前ってパーティはいるのか? いないよな?」
鈍臭そうだもんな!とものすごく決めつけられている。少年は私の頭から爪先までジロジロと眺めて何やら考え込んでいる。…… いや、その手を離してよ。
「 服装は上等な物着てるもんな、お前 …… 組んでやろうか?」
「 …… はい??」
「 お前なかなかいい女だし、そのレベルならオレ様と並んで歩いても見劣りしないだろう。ちょっと頭はおかしな女だけど、どーしてもってお願いするんなら、俺がパーティー組んでやってもいいぜ?」
き、決めゼリフ? やだ、恥ずかしいから変なポーズ取らないで!? 言われた私の方が顔が熱くなる。
「 私にはもったいないお言葉です!丁寧にお断りさせていただきます!ではさようなら!」
もう既に冒険は始まってるし、この少年との冒険は、かなりハイレベルなヘッポコグループになりそうだ。私は少年の腕を笑顔で離すと、スタスタと歩き出した。
「 お、おい!!待てよ!待てって!オレ様とパーティー組まないんなら、お前このギルドに何しに来たんだよ?」
逆に凄いよ、その自信。
「 そういうあなたは? 冒険を始めようとお仲間集めに来たの?? 」
面倒だったから逆に聞き返す。なぜか少年は嬉しそうに顔を輝かせた。
「 パーティー?まぁそれも集めたいって言えばそうなんだけど、それより今この村にすげー奴らが来てるって噂なんだよ!このティエラでトップの討伐集団が来てるってな!それを一目見たくて来たってわけだよ!」
へぇ、さすがギルドと呼ばれる施設だ。さっきの狼を連れたグループも異世界感満載で眼福ものだったけど、そんな人達が来てるなら私も見てみたい。
というより、さっきの聖獣と呼ばれる狼は、確かに私を見ていた。獣の勘というべきか、私がこの世界の人間じゃないと分かったりするのだろうか?
討伐屋と呼ばれる人達は、みな聖獣を仲間にしているのだろうか? そしてあの美女はあの狼の背中に乗ったり出来るのかな?
「 ねぇ …… 」
また「 憶えておけ!」と怒られそうだけど、少年に聖獣の事を聞いてみようと話しかけると、突然建物の中に「 ドゥッ!!」と歓声が湧きあがった。さっきの聖獣を連れたグループが来た時とは比べ物にならない騒ぎだ。
なんなの!?と辺りを見回すと、少年が私の肩を掴み「上を見ろ!」と合図をしている。
「 ついてるぜ!あそこにいるのがこの世界一の討伐集団だッ!! 」
少年の指差す方向、私は正面の建物の吹き抜けになっている二階を見上げた。そこは手摺りのある渡り廊下となっていて、数人の者が立っている。
彼らは手すり越しに、手を振っていたり会釈をしたりしている。
その中央にいる、銀箔のサーコートに身を包み、蒼いマントの青年が手をあげると、一瞬で歓声が鎮まる。
「 冒険者の諸君、近年魔物は勢力を強め我々の生活を脅かしている。だがこのギルドに集いし者達は勇敢にも …… 」
なにやら延々と演説が始まった。だけど全然頭に入ってこない。私はそっとその場を離れようとすると、少年に首ごと腕を絡められ引き戻される。
ちょっと!痛い!痛いから!!少年は興奮してるのか私の首ごと力を込める。すると、上の階で演説をしていた声がピタリと止んだ。
「 そこの少年 、その女性から手を離せ 。」
先ほどの演説と違って、その声は冷酷と言えるほどの低くなり、声の主の視線に周りの人達も振り返った。
やがて青年は階段を下り、ゆっくりとした足取りでこちらに向かって来る。金髪のサラリとした髪が、切れ長の目にかかる。
周りの女性たちは、彼を間近で見れる一瞬を見逃すまいと息を飲む。しかし青年の目は真っ直ぐに私を捉えていた。
彼は私と少年の前で立ち止まると、静かに口を開く。
「 このお方はお前が気安く触れて良いようなお方ではない。」
少年は慌てて私から離れる。そしてグレンは私に手を差し伸べ、その整った顔に微笑を浮かべた。
「 初めてのギルドではしゃぐ気持ちは理解できるが、ロッドが探し回ってましたよ、セナ様 。」
私は今日一で、逃げ出したい気分になった。




