64【休暇12日目】
いつも読んでいただきありがとうございます!
また、ブクマと評価、ありがとうございます。
高評価をいただいて驚きました!
それではどうぞご覧ください!
「 なぁに二人とも?」
フライパンの生地を慎重に返しながら、私はサラとターニャに問いかけた。
…… これで良し!
サラは食器の用意とサラダの盛り付けとスープを用意してもらう。その間にターニャにはもう一つのフライパンで、私と同じハムとチーズと卵のガレットを焼いてもらっていた。
「 そのお歌、セナ様はいつもご機嫌がよろしい時に、歌ってらっしゃいますわね。」
「 へっ? 私いま歌なんて歌ってた?? 」
二人はクスクスと笑い、出来たお料理をトレイに乗せ始めた。
あれ? 前にも誰かと似たような会話をしなかった? そう思ったけど、気を取り直して熱々のガレットをフライパンからお皿へと移した。
今朝の朝食のメニューは洋食だ。
* ほうれん草と生ハムとキノコの生クリームガレット
* ジャーマンポテトとアスパラとベーコンのガレット
* ハムとチーズと小海老の卵のガレット
* 鶏肉と彩り野菜の塩レモンサラダ
* そら豆のポタージュスープ
* オレンジのクレープ ジュゼット
* フルーツヨーグルト
そば粉のガレットは大好きなメニューの一つだから、たまに自分でも作ることがある。うちの会社のフレンチシェフ直伝の料理で、作り方をみっちり伝授してもらったからかなりの自信作だ。
「 本当に美味しそう!家に帰ったら弟にも作ってあげたいですわ!」
ターニャは途中からメモを取り出し、レシピを細かく覚えようとしていた。実際焼くのも挑戦していたから練習すればすぐに作れるようになるだろう。
サラは …… サラは …… まぁいいわ。
「 本当にこれを作ったのか!? 」
テーブルに料理を並べ始めると、男性陣はソワソワと落ち着かない。どこの世界でもこういうのは嬉しいものなのね。…… いや、もしかして食べれる料理が出てくるのかと不安だったのだろうか?
「「「 うまッ!!!! 」」」
「 何これ!トロッとしてるのがチーズなの?卵なの?」
「 これは、お店で出してもおかしくないレベルですね。」
「 凄いな、宮廷料理人よりうまいんじゃないか?」
すぐにグレンが「おかわり」を要求する。どのガレットを追加するのか尋ねると、散々迷い答えられない。では一枚のガレットに三種類入れて作りましょうか?と提案すると、彼は見たこともないような笑顔で頷いた。
ちょっと …… 可愛いじゃない。
あなたがこんな顔するなんて、召喚された時には想像もしなかったわ。
それぞれの食材が混ざっても、そんなにおかしくはないだろう。私はキッチンへと戻り、早速作ってみる。
ジャーマンポテトと生ハムほうれん草は、量を少な目にできるけど卵の大きさは変えられない。私は大きいフライパンに変え、最初に作ったガレットより大きいサイズのものを作った。一応仕切りがわりに、焼いたベビーコーンを食材の間に並べた。
それを見たリュカとフレデリックは「ずるいずるい」と騒ぎ出す。仕方なく同じ物をあと二枚焼くこととなった。
ガレットは具がボリュームあるから、一枚でもそれなりに量があるのよ? それをペロリと平らげるなんてやっぱり男の子なのね。
女性陣は、ガレット三種類を三人で取り分け、バランスよく食べた。
「 じゃあ次はデザートクレープを作るけど、お腹いっぱいでもう食べられないって人いる?」
念のため確認したけど、誰一人として返事はなかった。
デザート用のクレープは、そば粉ではなく小麦粉で作ってある。生地を人数分焼いたら、フライパンに砂糖を少し焦がし、バターを溶かす。オレンジジュースとレモン汁、マーマレードを入れて煮詰める。そこにたたんだクレープを入れ、洋酒を足しフランベした。お皿に盛り付けると、バニラアイスも添える。
ミントの葉を飾って完成 !
「 サラ、リュカにはこのお皿を渡してくれる?」
「 ええ、でもリュカ様のお皿はグレン様達より、少ないのでございますわね?」
そう、グレンとフレデリックはクレープが二枚入りだけど、リュカには一枚だけ。みんながデザートを食べてる間に私はもう一品作り、完成したお皿をリュカの元へ運んだ。
「 ハイ、どうぞ !」
この特別なお皿はキャラメルバナナのガレット。生クリームと刻んだ胡桃も添えてみた。
リュカの口に合えば良いのだけど、どうかな?
「 …… 美味しい!? セナ様!これはローゼンタール家の味とは少し違いますが、とても美味しいです !!」
リュカはそう言って、大きな目を更に広げて喜んでくれる。
「 良かった!じゃあこれで借り一つお返しね!」
ちゃんと聞いてる? リュカはあれだけ食べたにも関わらず、凄い勢いでお皿の中身を食べ進んでいく。
「 あの …… セナ様?…… 私たちのは?」
サラがもじもじとして、他の者もリュカに釘付けだ。するとリュカは食べる手をピタリと止めてみんなを眺める。…… ああ、物凄く悪い笑顔ね。
「 残念ですが皆様の分はございませんよ!コレは私だけがセナ様にお願いした特別メニューですから!」
得意げな顔でトロリとキャラメルソースのかかったバナナをパクリ。
「 そ、そんな …… どうゆうことです!? 」
私は両手を前で合わせて「ゴメンね?」のポーズ。そうなの、この一皿はリュカとの「貸し借り」で発生したメニューだからみんなには作れない。いや作れば良いんだけど、リュカとそう約束したからダメなのよ。
「 はぁー!?なんだそれー?」
「 ちょっとリュカ様!一口だけでいいから!」
「 …… 納得できませんね。」
「 そんなのずるいですわ!! 」
「 ダメですよ〜!コレは私だけのものです!」
こんな朝食のはずじゃなかったんだけど、まぁいいかぁ。お世話になったみんなに何かお返ししたかったから、料理を振る舞う事ができてよかった。
朝食が終わる頃、時計の針は午前9時を回ったところだった。食器などの後片付けは、さすがに屋敷の使用人がさせてくれと頼んできたので、お願いした。
ロッドが私を迎えに来る約束の時間は10時。
まだちょっと時間がある。
私は食材を確認した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「 このお城がロッドのお屋敷 ……。」
見上げるその大きな建造物は、まごうことなきお城だった。いわゆる「お城風 」とか「豪華な屋敷」みたいじゃなく、目の前に建っているのは紛れもなくお城。
城門をくぐり石積みの橋を渡る。橋の下は川になっていて、サラサラと綺麗な水が流れていた。
跳ね橋を渡ると、両サイドに門番が立っていて「ようこそ!勇者様!」とそれぞれが笑顔で挨拶してくれる。
城を取り囲む庭園は、季節の花々が咲き乱れていて、緩やかな陽射しと風が、花の甘い香りを運ぶ。
ここまで完璧だと、異世界というより海外旅行に訪れた気分になり気が緩む。
城の扉は鉄製で造られていて、扉の枠の上はステンドグラスになっている。三羽の鳥が空を飛んでいる模様が、このお城に自由な印象を与える。
城の中に入ると「執事」と呼んで良いのだろうか?白髪の紳士が優雅に私を出迎えてくれた。
執事さんが、ロッドを「お坊っちゃま」と呼ぶと、ロッドは慌てて「その呼び方はやめてくれ!」と顔を赤らめていた。それを見て私も微笑んだ。
「 おお、それはお坊っちゃま大変失礼致しました!…… 素敵な女性の前でお坊っちゃまと呼ばれるのは確かにお恥ずかしい事ですな!」
ふふ、執事さんに遊ばれちゃってる。勇猛果敢な騎士様も身内にかかっちゃ形無しね。
ロッドはその部屋にとどまり、その後からは執事さんが応接室へと案内してくれた。昨日会ったばかりだけど、見知った顔がいなくなると少し心細くなる。
赤やピンクの花の飾られたテーブルは、オフホワイトの大理石仕様。ライトグリーンのソファーにあるオレンジ色のクッションにはくるくると丸い模様の刺繍が入っていた。
外へと続く大きな窓は開かれていて、白いレースのカーテンがサワサワと揺れている。タッセルでくくられている厚いカーテンは明るい黄色。
部屋全体が、眩しいくらいに爽やかな色合いだ。
紅茶やお菓子を出してくれたメイドさんは、ぞろぞろと五人も部屋に入ってきて、その一人一人に握手を求められてなんだか可笑しかった。
「 本当に素敵なお家 ……。」
心の底から溜息が漏れる。私はなぜか、ロッドの城の中は薄暗く、重々しい雰囲気だと思い込んでいた。でも実際は、敷地内の隅々まで愛が溢れていて、ロッドがとても幸せな家庭で育った事が一目で分かる。
「 お待たせ致しました。」
私が外の景色を眺めていると、背後から執事さんの声がした。いよいよロッドのお父さんとご対面だ。私は振り返るとそこには、肖像画からそもまま出てきたかのような紳士が立っていた。
「 この城の主人、ランドン・バックルガー様でございます。」




