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異世界ライフは美しい!  作者: 清水悠


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62【ドロップアイテム】

「 では、一度父上には私から話をしてみて、またご報告致します。」


「 ああ、すまないがよろしく頼む。」


 グレンとロッドはそう話すと、今日一日の礼を述べて扉を閉めた。

 何となく私達は談話室へと集まり、それぞれが椅子に座った。


「 お、お茶をお入れしましょうか?」


 そう言ってサラが席を立とうとしたけど、全員が首を横に振る。食べ過ぎで正直もう何にも入らない。


「 それで? 石の在処がロッドの家だと何がまずかったの?」


 グレン、フレデリック、リュカの顔を、一人ずつ眺めながら私は言った。レストランで私が石の場所を言った時から、三人とも様子がおかしい。

 正確にはロッドも含めて四人とも。私は何か良くない事を口にしたのだろう。

 三人は気まずそうに顔を合わせ、誰も口を開かない。


「 そう、話せないなら別にいいわ。…… ちょっと出かけてくるわね。」


 話しにくい事を無理やり聞き出す趣味もなければ、込み入った複雑な事情に首を突っ込みたくもない。私は立ち上がると玄関への扉へと向かった。


「 待つのだ セナ!一人でどこへ行こうというのだ!? 」


「 そんな遠くへは行かないわ。帰り道にあったお店とかまだ閉まってなかったから、少し見て回りたいの。」


 本当にすぐ近くだし、時刻はまだ午後7時半を回った所だ、別に深夜というわけではない、それでもグレンは顔を曇らせた。


 そうね、確かに私は剣が扱えても、魔法を使われたらどうにもならない。面倒だけどこんなに近くでも護衛は必要だろうか?


「 それじゃあリュカ、一緒に来てくれる?…… お願い。」


 自分が行こうと立ち上がりかけたグレンが「なぜ私じゃダメなのだ?」といった表情で私を見る。


「 だって、もしロッドがお父さんと話をしてここに戻ってきたら、その対応は誰がするの??」


 複雑な事情があるのなら、尚更その対応は団長であるグレンがやらなければならないだろう。


 ちょっとした気まずいムードで、どうしたら良いのかオロオロするサラ達に「もしお客様が来られたらお茶を入れて差し上げて」と言って、私はリュカと屋敷を出た。


「 ごめんねリュカ。あなたも騎士なんだし残りたかったでしょう?」


 機嫌の悪そうなリュカに、歩きながら謝る。


「 いえ、グレン様とロッド様の事に、私は何も口出しすることはございませんが、私から話を聞き出そうとしても無駄ですよ?…… こう見えて口は堅いほうですから。」


「 聞き出すって?…… 何を?」


 私は立ち止まって振り返る。


「 何をって、ロッド様の家の事を聞きたくて私を連れ出したのではありませんか?」


「 あぁ、そのこと? そんなの別に話したくなったら向こうから話すでしょ。」


 私はパタパタと手を振って再び歩き出した。それを聞いたリュカはさらに不機嫌になる。


「 なっ!セナ様は気にならないのですか!?」


「 いや、だから気になったから聞いたじゃん。それで話してくれないのなら、私にはもう関係のない話なのよ。それを悶々としてもしょうがないでしょ?」


「 それはそうかもしれませんが …… それはそれであっさりしたものですね。」


 私はリュカを正面から見据えるとニッコリと笑った。


「 そう! 私はあっさりしてるの!それはもう清々しいほどにね!!」


 そう勢いよく雑貨屋さんの扉を開くと、リュカは驚いてるようだった。だけどすぐにいつものキリッとした猫目に戻り少し口角を上げる。


「 いったい何が欲しいのです? あまり高い物は経費で落とせませんよ!?」


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 屋敷に戻ると、ちょうど中からロッドが出てくるところだった。私に気がつくと、彼はペコリと頭を下げて帰っていった。


「 セナ様の言った通り、ロッド様は来られたようですね。」


 リュカはそう言いながら扉を「ヨッ」と開ける。 お互い紙袋で両手が塞がっているから、ドアが開けにくいのだ。私は開いたドアを足で押さえると、またリュカに睨まれた。


 リュカは「レディの嗜み」にやたらと厳しい。


 玄関ホールから、突き当たりの長廊下を右に進むと、キッチンへとつながっている。私はリュカに買ってもらった食材を片付けた。


「 セナ様、コレを。」


 リュカは小さな紙袋を差し出した。私はそれを受け取り、こんな物買ったかしら?と中を開いた。


「 リュカ!これって!? 」


「 今夜の買い物はとても楽しかったのでそのお礼です。それでは明日の朝食、楽しみにしてますね!」


 彼はそう無邪気な笑みを浮かべると、皆のいる談話室へと向かった。


 最初から、特別買いたい物があってお店に入ったわけではない。ただ、もうすぐ元の世界に戻らないといけないし、どんなお店があるか見ておきたかっただけだった。


 いろんなお店を何軒か回るうちに、リュカが食べたい食材を見つけ、どんな料理か尋ねると、何となくその料理の想像がついた。それで作ってみようかと食材を買い込んだのだ。


 私が朝食の下準備をしていると、サラとターニャが来て手伝ってくれる。

 時計の町のレストランでも思ったけど、ターニャは割と手際が良い。反対にサラは壊滅的に料理ができなかった。包丁の持ち方から教えないといけないレベルだ。


 どれだけ箱入りなんだと思ったとき、私はお城での事を思い出した。

 この前のサラとターニャの誘拐事件は、城全体に箝口令が引かれたそうだ。そりぁ貴族の娘やお姫様が誘拐されたと噂が広まるのは、外聞が悪いのだろうとその時は思ったけど、不思議なことにグレン達はターニャよりもサラの事の方がバレないように注意を払っていた。それはもう、事件に関わった隊員以外には絶対に漏らすなと。誰かに知られたら大事だと皆がヒソヒソと話していた。この事は私もだいぶ後になって、その理由を知ることになる。


 ま、その話は置いといて、調理したついでに、オレンジを輪切りにしてアイスシャリマティーを作る。魔法を使えば作りたての紅茶でも、すぐに冷たくできるからとても便利だった。


 それを談話室に運んで、買ってきた薄い板状のチョコレートも添えると、それぞれが手を伸ばす。何となく皆が沈黙すると、やがてグレンが口を開いた。


 ロッドが自宅( 城よね?)へと戻り、石の事を父親に話すと、条件を二つ受け入れるのなら、城の中を探しても良いと言われたようだ。


 その条件の一つは敷地内に立ち入るのは勇者のみ。そしてもう一つは、石を探すときには父親も同行させる。という簡単なものだった。


「 つまり、私が一人で探しに行くって事でしょ?分かったわ。」


「 あぁ、そうなのだが …… 同行出来なくてすまない ……。」


「 謝らなくてもいいわよ。だって相手はロッドのお父さんなんでしょ? 家にお邪魔して、ちょっと徘徊して、石を見つけたら戻ればいいんだから何の問題もない! 」


 この話はコレで終わり!私は話を打ち切った。今までと違って歯切れの悪いグレンを見てるのも嫌だったし、この変な雰囲気も苦手だった。


 グレンはまだ何か言いたげだったが、口を挟んだのはフレデリックだった。


「 この村にはギルドがあります。セナが石を探してる間に、今までのドロップ品を精算してはいかがですか?」


「 あ、あぁそうだな。結構溜まっているかもしれない。」


 出せる物は出してみよう、と男性陣が何やらごちゃごちゃとテーブルの上に取り出した。


 何これ? 青や赤の輝く宝石や、細長いガラスの小瓶に入ったラメ色の液体なんかは綺麗だけど、あとは汚い毛皮や骨、大きめの黒い石や柄の派手な羽根。それに剣や盾、鎧や兜などまるで一貫性がない。


「 なんなのこれは?」


 さっきまでの空気がガラリと変わり、途端にみんなが和気あいあいとなる理由が私には分からない。するとフレデリックが簡単に説明をしてくれた。


「 倒した魔物によっては、消滅後にこういった物を残したり、魔物の体の中に魔石が入っていたりします。それが新たな武器や武具の素材になったり薬になったり、様々な魔法などに使うことができるのです。」


 へぇ〜、と改めてテーブル上の品々を眺める。


「 それをこの村にあるギルドという施設に持ち込むと、査定して換金してもらえるのです。」


 ふむふむ、魔物って倒すとご褒美がもらえるのね。そういえばいつもみんな魔物と戦った後は何かを拾っていたような気がする。


「 アァ!すっかり忘れていたがこんな物もあったな!!」


 そう叫んでグレンはテーブルにデン!と大きい物を出した。


「 コレってあの山で見つけた宝箱じゃない??」


 私がグレンを見上げると、彼はクスリと笑った。

 良かった、いつものグレンに戻っている。


「 あの後の騒動で、この宝箱の存在などすっかり忘れてたな。」


 今まで興味無さそうに眺めていたサラ達も、きゃあきゃあとテーブルへと寄ってくる。


 宝箱を開けると、出るわ出るわ宝石の山。金貨や銀貨に埋もれて、ネックレスや指輪などのアクセサリーまでザクザクに入っている。


 あっ!ティアラだ。私は細かい細工の施されたその王冠を手にとった。全面にダイヤモンドが散りばめられている。


 う〜ん、コレってどう見ても本物のダイヤ …… よね。素手で触っちゃってるけど綿の手袋をはめて触る代物ではないのかしら?


「 セナ様!ドロップアイテムには呪いがかけられている物もございますから、お気をつけ下さい!」


 ヒッ!そうなの? 私はティアラをそっと元の場所に戻した。


「 すみませんが古銭を少し分けてもらえませんか?」


 見ると、フレデリックがテーブル上に数枚のお金を並べている。


「 兄がコレクターなのです。」


「 別に構わないが、何か珍しい物でもあるのか?」


「 私はあまり詳しくありませんが …… 多分コレとコレなどは、なかなかレアな物かと思います 。」


 へー、この世界にもコレクターとかいるのね。


「 グレン様!この指輪の鑑定が『護り』を強化できるものなら私も欲しいです!」


 リュカも嬉しそうだ。彼が選んだのは金の指輪だった。


「 では明日ギルドで鑑定してもらってから、それぞれが欲しい物を、皆で分けるとしよう!」


 グレンのその言葉が合図となって、宝箱のお披露目会はお開きとなった。


 部屋を出る前に、まだ戻してない石を出してもらい、宝石に変えた。これで宝石箱の中の石は、全て輝きを取り戻した。こうして見てみると、さっきの宝箱の中にあった宝石とは異なる輝きだ。


 そのままサラ達と一緒にお風呂に入り、部屋へと戻る。リュカから受け取った紙袋の中身をテーブルに置くと、私はそれをニンマリと眺めた。それはサイダー色の気泡の入った蓋つきの容器だった。雑貨屋さんで、私がもの欲しそうに見てるのに気づいたのだろう。


 気づかないうちに買って、後で渡すなんてリュカったらなかなかやるわね。あの子は大人になったらかなりモテそうだ。たまにある嫌味な性格は直した方がいいと思うけど。


 明日はみんなの朝食を作らないといけないし、そろそろ寝よう。とベッドに向かい私は飛び上がった!

 ベッド脇にある三人掛け用のソファーに誰かが寝ている。暴れる鼓動を落ち着かせ、足を忍ばせて近づくと、そこにはスヤスヤと寝息をたてるパトリックがいた。

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