43【事の真相】
いつも読んでいただきありがとうございます!
首が痛い
山の下まで辿り着いたのはいいけど、その山はいわゆる「なだらかな山」ではなく、地面から垂直に立ち上がっている「急勾配の山」だった
なんて言うの?
断層がそのまま盛り上がったみたいで …… こんな山って確か地塁山地とか言うんじゃなかった?
授業で習ったおぼろげな記憶を探るけど、よく覚えていない
今はそれよりも、どうやってこの山を登るのかのほうが問題だった
町の時計塔から見たときは、そんなに大きな山だとは思わず、せいぜい「小高い丘」くらいに考えていた
ここから頂上は見えないけど、東京にある電波塔などに比べると、それよりかは低いのだろうか。
「墓があるといったくらいだ。どこかに上にあがれる道があるはずだ、探そう」
山の周囲をしばらく進むと、グレンの言葉通り日当たりの良い場所に上へと続く階段を見つけた。長い間人が手入れしていないようだけど、なんとか通ることが出来そうだ。階段はジグザグになっていて、段の高さに規則性がない。加えて手すりや柵も設けられていないから、足を踏み外さないかヒヤヒヤした
かなり高い所まで上がった所で、前を歩くグレンが立ち止まっている。辿り着くと階段は途中で行き止まりになっていた
「どうやらここからは梯子を使うようですね」
……う、 嘘でしょ!?
これを登るの??
断崖の岩壁には鉄鎖の梯子が架けられている。高い所が大の苦手ってわけでもないけど、こんなのが大好きなワイルドな性格でもない。乗馬を体験したのすら今日が初めてだったのに、今度はロッククライミングですか!
ざっと見五十段くらいありそう。これはちょっと気合を入れなきゃならないわね!と袖を捲ろうとすると、隣でフレデリックがローブを脱いでたたんでいた
魔導師の着ているローブは丈が長いから、引っかからないように脱ぐのだろうか? そう眺めてるうちに、彼はさっさと梯子を登り始めた
一見インドアなような外見とは異なり、意外にも危なげなく上まで登ると、そのまま崖の向こうに姿を消した
次は私の番かしら?とドキドキしていると、突然音もなく、私の近くにフレデリックが現れた
は?えっ?
いま登ったよね?
私が驚いているのをよそに、彼は「では行きましょう」と、手袋をはめた手をスイッと上げる。すると体にエレベーターに乗っている時のような浮遊感があった
…… あり?ここは??
次の瞬間には、今までいた場所とは違う場所にいる
「どうだ?人生初の転移は?」
グレンが楽しそうに私の顔を覗き込む
転移?
今のが?
「 …す……すごい!…… すごいすごいッ!!」
素直にそうはしゃぐ。それを見たフレデリックはクスリと笑い「初めてではありませんよ」と言いながらローブを羽織った
私とグレンが首をひねると、フレデリックは呆れたようにため息をついた
「セナは一体どうやってこの世界に来たのですか?」
おー!そういえば!!
「ついでに言わせていただきますが、私はあれほど魔力を使った転移はありませんよ」
うんうん、それほど凄い魔法だったのだろう。フレデリックは何となく得意げにスタスタと道を歩いていく
梯子を上った先は、緩やかな一本の上り道となっていた
私もそれに続きながら、召喚された日のことを思い返す
「そうよねー、ものすごく体力を消耗したから、一人しか元の世界に戻せなかったんだもんね?」
私がその事を言うと、フレデリックは真顔に戻りピタリと足を止めた
「 ご、ごほん、…… も、元の世界へ戻すのに、一人も二人も消費する魔力は大して変わりませんが…」
んえ?どういうこと?
聞いてた話しと違わない?
私がキョトンとしていると、フレデリックはグレンを睨んだ
グレンはスッと視線を逸らしていたが、笑いを堪えているようで、肩をプルプルと震わせている
フレデリックは「まったく!」と呟きながら、再び先へと進みだした
「どうした? 道はこのまま進めば良いのだぞ?」
私が難しい顔で立ち止まったままなので、グレンが振り返った
どういうことよ?
説明してくれるまでテコでも動かないから
仕方なくグレンは戻ってくると、私の背中を両手で押して無理矢理前へと進ませた
そのままの状態で、二人がフレデリックの元へと到着すると、私は無言で彼に説明を求めた
フレデリックはまたため息をついて、重い口を開いた
「正直に言いましょう。あの時 …… 召喚式の日ですが、部屋に戻った私の元にお役人が慌ててやってきました。なんでも異世界人が帰りたいと言っていると」
そこまで話すと、気まずそうに私を見る
そうそう
そうよ?
私とサラリーマンが帰りたいとそうお願いした
「 ですが、お役人様は私にこう言いました。女性の異世界人は戻さないほうがいいみたいなので、私に体力を消耗しているように演技ほしい …… と」
えっ?演技 ??
あれってフレデリックの演技だったの!?
「騙すようなマネをしてしまってすみません」
お役人ってサンチョでしょ〜〜!!
アイツめぇ〜〜!!
私がフレデリックの説明で憤慨しているのを見ていて、グレンは堪えきれない様子で笑いだした
それを見たフレデリックは、能面のように冷たい顔をする
「何がおかしいのです?グレン?」
話すべき事は話したと、フレデリックは不機嫌のまま先へと山道を歩き出す。グレンはそれでも笑いながら、フレデリックを追いかけると彼の肩に手をかけた
「だってあの時のフレデリック!見事な演技だったぜ?」
「私は好きで演技したわけじゃありません!!」
「いやいや!アレは騙されるって!」
二人が仲良く、きゃっきゃと話してるのをみて、私は膝から崩れ落ちた
あぁそうね、なるほどなるほど。サラリーマンは分かってたのだ、フレデリックの演技を
だから別れ際に私に言ったのだ
「嵌められたな」って
あれ?…… じゃあさ!
今すぐ帰れるんじゃないの?
そうだよね?
そう思って顔を上げると、フレデリックは岩に腰をかけてこっちを見ている
グレンはこちらに「はやくおいで」と手招きしている
あの二人は、旅に出た当初はなんだかギクシャクしていたように感じたけど、今はとても仲がいい
まぁいいわ、どうせ休暇の間だけだもん
もうしばらくはあなた達に付き合ってあげる!
私は起き上がり、二人の元へと駆け寄った




