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異世界ライフは美しい!  作者: 清水悠


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40/174

40【2つの月】

いつも読んでいただきありがとうございます!


そして、ブクマと評価してくださったかた!

本当にありがとうございます!


どうぞご覧ください!

時計の針は22時を回ろうとしている

ターニャが眠そうにあくびをしだしたので、私たちはそれぞれの部屋へと戻ることにした


寝衣に着替えベッドに横になり、先ほどの話を反芻する。確かに目が覚めてからのグレンとフレデリックは優しく感じる。 特にフレデリックに関しては、サラ達から私が寝てる間のことも聞いて驚いた。

馬車に乗っていた時より、ずいぶん親しみやすい人になったような気がする


だけど、優しいのはサラ達だってそうだし、あのツンケンしてるリュカだって倒れる前より優しくなってる

ということはこの国の国民性なんじゃないかしら?

倒れた人には優しくするっていう?


まぁ、こんなに心配してくれるのは素直にとても嬉しいことよね。私ももっと石探しを頑張らないと、明日からまじめにやろう

い、いや特に今まで石探しをサボってたつもりもないけどさ!


私はそう決意して、なんとなくカーテンを開けた


「 ……ッ!!」


外の景色を見てベッドから跳び下りると、私は慌ててもう一度服を着替え部屋から飛び出た。そのままダダダと階段を下りて、談話室の前を通り過ぎ宿の玄関へと向かう


建物の外に出て空を見上げたが、この位置からはあまりよく見えない 。もっと開けた場所に行きたい!でもよく考えてみれば、私がこの町に来たときは意識がなかったから外の道がよく分からない。この石段を下りればいいのかしら ……?


「 セナ様!!どちらに行かれるのです!?」


いきなり背後から呼び止められ飛び上がる。振り向くとそこには険しい顔つきでリュカが立っていた


ああビックリした!あなたこそこんな時間にこんなとこで何やってんの? 一瞬そう言いかけたけど、今はそれよりもっと重大な事があり、そっちのほうが先に言葉になって出てしまった


「 あああのね!リュカ、すごいの!! 外に月が二つあるのよ! この世界ってそうなの!?」


部屋の窓からは月が一つと半分くらいしか見えなかった。よく見ようと建物の外に出たのに、ここからだと更に木が邪魔をして、見えにくい位置になってしまっている


もしかして三つあったりして!とか思いながら更にリュカに尋ねた


「ねぇ、どこかはっきり見える場所ってないかしら?」


リュカが愛想がないのは今に始まった事ではないから、まぁいいけどねと思い、構わず小道を進もうとすると、首裏の服を引っ張られた


「建物の多いそちらではますます見えにくくなります。どうぞこちらへ」


表情と口調は相変わらず冷ややかだけど、どうやらリュカは案内してくれるようだ


宿の横手にある木製の階段を上ってしばらく歩くと、だんだんと木が生い茂ってくる。本当にこっち大丈夫なのか?と不安になってきたところで、唐突にひらけた場所に出た


「わぁ〜!凄い 凄い!!」


辺り一帯には何も障害物がなく、見渡す限りの夜空に大きな月が一つと、それより少し小さい月が一つ


信じられる!? 本当に月が二つあるのよ!?


大きさが違うのは距離のせいだろうか。それとも月の面積が違うから? 自転や公転はどうなってるんだろう? この二つ同時に見ることができるのは毎晩なのかしら?

疑問は次から次へとあるけど、自分自身が天文学をそこまで知ってるわけじゃないから、まぁどうでも良いかぁ、と思う

でもすごい、たった一つ増えただけなのに違和感と美しさに思わず見とれてしまう ……


「 セナ様…… そろそろお戻りになりませんと」


「 そうね!ありがとう。私のいた世界では月は一つだったから驚いちゃった! 部屋から見えたときは何かの間違いじゃないかと思ったわ」


本当はもっと眺めていたかったけど、これ以上はリュカに怒られそうだったから大人しく戻ることにする


「 …… セナ様、月を見たのは今夜が初めてなのですか?」


「 ええ? 初めてじゃないわよー! 元の世界でも何度も見てるし。でもさすがに二つの月は初めて見たわね」


珍しくリュカの方から話しかけてきたけど、彼はそうですか、と呟くとそのまま黙り込んでしまった。私は慎重に階段を下り宿の玄関へと向かう


宿の玄関の前にはグレンが立っていた

彼は私とリュカの姿を見つけると、どこに行っていた?と言わんばかりの表情でこちらへと歩み寄ってくる


あれ? ちょっと怒ってる?


「セナ様が月を見たいと仰ったので、見える場所までお連れしました」


グレンは私の顔をまじまじと見た


「月を見るのが好きなのか?」


「 別に好きっていうほどじゃないけど、二つあったからびっくりして。私の世界では一つしかないのよ。それで部屋からじゃキレイに見えないから見える所まで連れてってもらったの」


そう答えたが、なぜかグレンは上の空のような態度だ。何だろう?さっきのリュカもこんな感じだった。女性が月を見て騒ぐのはこの世界ではマナー違反なのだろうか?


「僕なにか温かい飲み物をいただいてきますね!」


リュカはそう言って玄関の扉を開いた

そしてクルリと振り返るとグレンを見た


「グレン様、セナ様は二つの月を見たのは今夜が初めてだそうです」


確かに初めて見たけど、そんなに念を押されるようにしてまで言うことなの?? リュカとグレンの態度に微妙に違和感を感じる。 リュカはそれだけ言うと宿の中へと消えていった


「セナ様、少しいいか?」


私は「ええ」と頷いて近くのベンチに腰を下ろした。 グレンは静かに話し出す


「今日のフレデリックの話を聞いて思ったのだ。召喚された日の夜、祝宴を欠席したのは本当に疲れていたのだな。正直私はあなたのわがままだと思っていたのだ。…… すまない」


私が「?」な顔をしているとグレンは話を続ける


「 あの日、セナ様は石を宝石に戻しただろう?だから他の二人より体力を消耗していたのであろう」


あー、そういえば! そこは私も気づいてなかったわ。休暇前で連日働いた挙句の召喚騒ぎだったから、単純にそれで疲れただけだと思ってた

そりゃ疲れるわ


「なんだ? 気づいてなかったのか?」


グレンが呆れた顔をして笑った


「 全然。疲れていたのは確かだけど、いきなりこの世界に来たことで拗ねてたのもあったと思う。団長さんが謝ることじゃないわ」


しばらくの間他愛のない話をして、さすがに体も冷えてきたので部屋へと戻ろうとなった

私は立ち上がり、玄関へ向かいながら言った


「 ねぇ、セナ様って呼ぶのやめない? なんか慣れなくて落ち着かないの。さっきフレデリックにもそうしてもらうようお願いしたから団長さんもそうしてくれる?」


「 それでは私も団長さんはやめてもらおう、 グレンで良い」


私はOKと頷いた


何となくお互いが笑い、場が和んだ所で私は玄関の扉の取手を引こうとした。しかしグレンが開きかけた扉を押し戻す

ガチャンと音を立てて扉が閉まった


「 …… 本当なのか?」


宿の外には私とグレン以外に人気はなく、今の言葉はグレンが私に向かって問いかけているのだろう


けれど私は何も答えない

答えないのにはちゃんとした理由がある

ある、というかちょっとしたプチパニックに陥ってるところよ? そうね、どのくらいパニックかと言うと「ちょっとした 」と「プチ 」って同意語だと思うのよ。それを重ねて言っちゃうくらいパニックな状況に陥っている


だってね? 私が扉を開けようとしたとき、グレンは私の真後ろから扉を閉めたの。私の手は扉の取手を持ったままだから、グレンも扉を開かないように押さえたまま


…… 分かる?

この状況


万が一私がクルッとグレンの方を振り返ったら壁ドンよ? うん、とりあえず左側がノーマークだから、そこからそぅっと抜ければいいかな ー …… と体をずらそうとすると、グレンはゆっくりと左手を扉へと伸ばした


万事休す。逃げ場が無くなったわ

ていうか、なに?この状況


「本当は月を見たのは二回目ではないのか?」


ちょっ!! 背中近ッ!? だから声も近い! あなた割といい声してるからやめて。 ほんと振り返ったら大変よ? っていうかなんでこんなことになっちゃってるの?


…… ん? 月? 月がなんだって??


「 …… あなたはあの夜、私に『どちらの月が好きか』と尋ねた ……。あの時の女性は…… セナなのだろう?」


 …… へ?

 …… あの時の女性 ………??


「 ……… て。」


「 え?」


私の声が届かなかったようだ

ではもう一度言いましょう


「 その手をどけてって言ったの!!」


私はそういいながら、自分でグレンの右手をエイッと押しやった。扉を勢いよく開けると振り返って彼を思い切り睨んだ


「どの女性とお間違えか存じませんが、それは私ではありません! おやすみなさいッ!! 」


そう大声で叫ぶと扉をおもいきり閉めた

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