38【回復の魔法】
いつも読んでいただいてありがとうございます!
また、ブクマと評価していただきありがとうございます!
「 そんな!セナ様が倒れたのは石のせいだと仰いますの!?」
サラが戸惑いフレデリックに詰問する
「違いますか?」
フレデリックは確認するように私を見る
石のことはこの世界を救う行為だから言いにくいけど、また倒れてみんなに迷惑をかけるわけにはいかない。 ここは素直に自分が思ってることを話した方がいいだろう
「そう …… かもしれません。ううん、そうだと思う。 石に輝きを戻していくと体力が抜けていくような、そんな感覚になるの」
「力が抜ける …… そうか! 異世界から来たセナ様たちにもリミッターがあるのだな!」
グレンがパチンと指を鳴らして納得したように頷いた
「リミッター?」
聞き慣れない言葉に私が返すと今度は全員が頷いた。どうやら私以外はみんな理解しているようだ。 そこでフレデリックが説明をしてくれる
「簡単に説明するならば、魔法や体力に対しての制限のことを言います。 制限値は個々で差がありますが、それを超えると最悪死に至りますので注意が必要です」
「実際セナ様は死にかけでしたよね?」とリュカが頷きながら口を挟んだ
死に……んえっ!? 私ってそうだったの?
「その制限値が私は石に対してあるということ?」
今ひとつピンとこない。フレデリックは少し首を横に振り説明を続けた
「正確には石を元に戻す力に制限がある、と考えたほうが良いかもしれません」
ふんふん、私の石を戻す力には容量みたいなものがあって、それを使い切るとジ・エンドってことね
……こわぁ
「じゃあその限界値はどうやって調べるの?」
それを知らなきゃ話にならない
異世界冒険の旅はまだ始まったばかりなんだから
水晶玉みたいなので調べたりできるのだろうか?
しかし全員が顔を見合わせ気まずい空気が流れる。なんだか返答に困っている感じだ
「経験です」
スパッとリュカが言い放った
そうだなー、とグレンも相槌を打つ
「私たち騎士団はリミッターギリギリまで訓練し、自分の限界値を感覚で覚えるんだ。それこそぶっ倒れる者もいるが、訓練中は必ず魔導師が在中していて、すぐに回復処置を施すから問題ない」
なるほど、そんな訓練をするのね
問題ないって言ってるけど、訓練のたびに死にかけてるの?
すると今度はサラが説明してくれる
「 私やターニャは体力や魔力を、限界値を脅かすほど日常で使用することはございません。限界値はおおよそでしか分かりませんが特に支障はないのです。少し疲れましたら身体を休めてしまいますし」
ふーん
あれ? じゃあ魔導師は?
フレデリックと目が合うと、彼は少し口元に笑みを浮かべる。おお、本日二度目の笑顔!眼福とはこのことかね?
「魔導師も騎士と同じです。自分のリミッターが分かってないと恐ろしくて魔法は使えませんから」
あぁ、皆の言ってることがよく分かる。ラグドール大聖堂の後から感じた倦怠感や、丘を登っている時にふらふらしたのも、石を戻したからなのね。完全に旅の疲れだと思い込んでた
そしてこれは全くの余談だけど、フレデリックが目を合わせてくれるようになってる!
んん?? だったら ……!
「それなら私だって、フレデリックに回復の魔法をかけてもらえばいいんじゃない?」
なんだ、 単純なことじゃない!
そうすれば何度でも石を戻せるわよね?
ん? あれ? グレンとフレデリックが顔を合わせて首を捻っている
「前例がないので、どの種類の回復を施せば良いのかが分かりません。体力には体力回復の術。魔法には魔法回復の術とそれぞれにありますから、石の浄化力回復 …… とでも言いますか、そういったセナ独自の力に及ぼす回復魔法が必要ならお手上げです」
んー?つ、つまり、風邪やインフルエンザの抗ウィルス薬と、怪我や炎症を起こした時の抗生剤の違いみたいなもの?それじゃあ石を戻す力が、万が一スーパー耐性菌だったらどうにもならないってことよね? ……私なりに分かりやすく考えたつもりだけど余計にややこしい
あっ!でも!
「体を休めれば回復するのよね? だったら石を一個戻したら寝ればいいんじゃない?」
今度こそグレンは頷いてくれた
「現状ではそれしかないだろうな。同日に二つ見つけた場合は一つは戻し、もう一つは私たちが確保して、セナ様の体力が回復しだい宝石に戻す。という方法をとるしかないだろう」
なんだ! 簡単じゃん! 寝ればいいだけなら何の問題もないわ
だがフレデリックはまだ浮かない顔をしている
何だろう?
まだ納得がいかない事があるのかな
「それほど簡単な話しだといいのですが、グレン、石は今持っていますか? 見せて下さい」
グレンは「 あぁ」と頷き何か呟くとテーブルの上に四角い箱が現れた
「 か、かわいい〜〜!!」
思わず身を乗り出したターニャに同感!
その箱はグレンの持ち物としては、あまりにもそぐわない可愛らしい箱だった。大きさは縦15センチ横20センチほどの長方形。縁取りや全体に施されている植物の模様は銀細工だけど箱のベースは白でつるりとした磁器のような素材となっている。よく見るとその白い部分は螺鈿のようにキラキラと輝いている。蓋の中央部分には楕円形のカメオが施されていて、その模様は薔薇の花であり、カメオ自身の土台はピンク色。 箱の下部の四隅には同じ銀で猫脚が付いている
これは完全に女の子のアイテムよね?
グレンを見上げると、とても気まずそうな表情であわてて言い訳をする
「誤解しないでくれ、これは決して私の趣味ではない! この町には職人が多いからちょうど良いと思い石用の箱を頼んだらこれを渡されたのだ!」
あぁ …… 女性へのプレゼントだと思われたのね
箱を開けると中は5センチ角の格子に仕切られていて、下にはピンク色のベルベットが敷かれている。 その格子のうち2つにキラキラと輝くあの石が納められていた
こうして丁寧に扱われているのを見ると和やかな気持ちになる
「よく見てください、その二つは大きさが違うでしょう?」
フレデリックにそう言われ、改めて見ると確かにこの石たちは大きさが違う。右の石の方がやや大きい。これが何か?と皆がフレデリックを見る
「 最初に塔から持ち帰った石は、ここにある二つの石より小さかったと記憶しています。 もしかすると、石の大きさによってもセナの使う力は異なるのかもしれません」
てことは …… つまり ……
「見つけた石が大きければ、例え一つでも命取りになる危険性があります」
全員が押し黙ってしまった
命を落とす …… ねぇ
うん、まぁ、でも ……
「試していくしかないんじゃない?」
みんなが私を見る
私はこんな事で悩むのがあまり好きじゃない
「 みんなが自分のリミッター …… だっけ? それを学んだように、私も自分の限界を知るには経験していくしかないわ。ちょうどこの町にも石はあるみたいだし、今から探しに行きましょう?」
私は建物の外を指差して笑顔でそう言った
なかなか良い提案だと思ったけど全員に猛反対され、せめて今晩は体を休めて明日から動き始めよう、ということになった
えー、もう充分元気なんだけどな
食堂の時計の針は6時半を回っている
せっかく新しい町にいるなら散策したい
つまらなそうに口を尖らす私をみてグレンはクスリと笑った
「そうしょげるな、この宿にも大浴場はあるぞ。行ってみたらどうだ?」
なんと!大浴場ですとな!
私はサラとターニャと顔を合わせると三人で席を立った




