25【提案】
「 ねぇ、だったら明日から石を探しに出ない?」
サラとターニャが夕食を運んでくれて、私達は四人で食べた。 グレンは一緒に食べることを始めは拒んでいたけど、私が面倒くさい奴と野次るとカリカリしながらも席に着いた。サラも始めのうちはグレンに気を遣っていたけど、ターニャがいつも通りだったので次第に馴染んでいったようだ
食後の紅茶を入れてくれたあと、サラ達は自分達の部屋へと戻っていった
再びグレンと二人きりになり、この国のことや塔までの魔物が強くなっていることなどを話しているうちに、私は思い切って冒頭の言葉をグレンに伝えた
「 しかし…」
言葉を濁す彼の前に私は片腕を伸ばし、指を一本ずつ折り曲げながら言った
「 山の頂上には強い魔物がいて仲間の捜索ができない。 城の結界が破られたのならこのお城で隠れてても意味がない。 世界を救うには散らばった石を集めなくてはならない。この中で今出来ることは何?」
グレンは三本の折れ曲がった指を眺めながら、それでも返事に困っているようだった
「 消去法よ。私には時間がないの。 この中で私に出来ることは何?」
「 …… 石集めだな」
強引ではあるが、人は選択肢を提示されるとその中から選ばなくてはならないと思ってしまう
私は頷き続ける
「 私を守るのは誰?」
「 …… 私だ」
「 じゃあもう答えは出てるじゃない」
グレンはしばらく考え込んでいたが、腹をくくった様子で力強く頷いた
「 分かった。では明日にでも王に許可をいただき、騎士と魔術師のチームを編成しよう。他の勇者様と共に旅を始めようではないか」
「 それはだめ」
「 んぁ??」
私の言葉に今度こそグレンは顔をしかめた
「 私の考えに他の二人を巻き込まないで。 あなた達からすれば、私たち異世界人は同じ扱いなのかもしれないけど、私たちは三人とも育った環境も考え方も違うの。 私の価値観と他の二人は違うかもしれないし、もしかしたら死者が出るかもしれない旅に、あの子達を巻き込むわけにはいかないわ?」
キレイごとを並べてみたけど本音は全く違う
本来物語の世界なら、三人揃って旅に出るところなんだろうけど、現実はそんなに甘くない
この世界では魔物と戦っていくうちにレベルが上がったり、死んでもお祈りすれば生き返るわけじゃない
私達の異世界人は魔法を使えないんだから、むしろバラバラで行動した方が、ラストまで石を集められる確率は高いんじゃないかしら?
それに私がこの国に居られる時間は短い
三人で行動していて、とんでもない窮地に立たされているタイミングで「 あ!そろそろお時間なんでこれで失礼しまーす!」って帰れる?
そうよ、三人はまずい
色々考えたけど、休暇中は全力でこの国のために尽くそうと気持ちは固まった
でもね? なし崩しで結局帰れない〜〜!なんて事は絶対に避けたい
私には仕事が待ってるの!
絶対に二週間で帰る
「 セナ様!?言っていることが矛盾してるぞ!? 先ほどは部屋で隠れてても意味がないと言っていたのではないのか?それに勇者が共に行動しないとは守備が薄れ危険ではないか!」
グレンはもどかしそうに立ち上がった
それはそれ!これはこれ
単に私が閉じ込められるのが嫌なだけとはいえない
なんとか彼を説得しないと
「 だって結界が破られていない可能性だってあるのでしょう? それに何もみんなでぞろぞろと行動しないといけないなんて誰が決めたの? 」
結界がないかもしれないから外に出る
結界があるかもしれないから中にいる
んーーー! これでは説得力にかけるわね
でもせっかく異世界に来たのに、今回の侵入者のせいでこのままずうっとお城に閉じ込められてるのは嫌だ
はっきり言って色んな所へ行きたい!
私はグレンの側へ近寄り、彼を見上げ囁くように声をかけた
「 集団で動けば目立つでしょう? だから少数で秘密裏に動けばいいじゃない。 勇者が三人で行動するのは、私とあなたが外へ出ても大丈夫と確信が持ててからでも遅くはないと思うわ? …… 私のことはあなたが守ってくれるのでしょう?」
そうでしょう?と言わんばかりに笑顔で彼を見上げた
うぅ…… やっぱりこういう事は向いてないわね。もっとこう、妖艶な感じでおねだりっぽくしたいけど、なんかもう普通に説得してるだけになっちゃった。これじゃあ断られちゃうかしら?
「 そ … うだな、確かに二人だけ …… いや少人数の方が動きやすいのは間違いない。…… わ、分かった王に許可をもらおう」
あれっ? 説得成功!? やった!
意外と私もやるじゃん!
私はにっこりと微笑んだ
「 私も行きますッッ!!!」
話を無事まとめたところで、部屋の扉がバタンッと勢いよく開いた
私もグレンも昼間の記憶が甦り、一瞬また謎の男の乱入かと身構えたが、部屋に飛び込んできたのは見目麗しい小柄な美少年だった
歳は15〜17歳くらいだろうか?
緩いウエーブががったプラチナブロンドの髪に、ビー玉のようにキラキラしたグレイの眼。その瞳には長いまつ毛がバサーと流れている。雪のように透き通った白い肌
つくづくこの世界は美形が多いのね。と感心してしまう
「 リュカッ!! なぜここにッ!?」
驚いて目を剥くグレンの問いかけに彼は答えず、少年は必死に言葉を続ける
「 グレン様ッ!! 旅へ出るのなら私を共に連れて行って下さいませ!!いえ、絶対にお供致します!!」
私たちの話しを聞いていたのだろう。グレンは困った様子でこちらを見た
ま、まあ別にいいんじゃない?
私は花音ちゃんや奏太と一緒じゃなければ問題ない。二人が三人でもそんなに変わらないでしょう
私はコクリと頷いた
すると廊下から「 私たちもーッ!!」とサラとターニャが走ってきた
「 セナ様ッ!! お願いですッ!! 私たちもお供させて下さいませッ!!」
そう言って潤んだ目で見上げる
いやいや! 少人数だと危ないわよ!!
私だってこの世界がどんな所か全然分かってないんだし!こんなに可愛い女の子達は絶対にダメ!!流石にあなたたちは容認出来ない!!
「 お願いですぅ!! セナ様 〜〜!! 」
あぁターニャ〜、その顔はズルいわ 〜




