24【宮廷魔導師】
いつもありがとうございます!
今回は短めの投稿ですみません。
そしてわりと説明的です。
どうぞご覧ください。
「 12人も ……?」
グレンはバーミーズマウンテンの塔での出来事や、そこに残された騎士や魔導師のこと、そしてその者たちは生存の可能性が低いことなどその全てを話してくれた
想像していたより遥かに深刻な状況に、私は言葉を無くした。塔に残された者の半数は、グレンの率いる隊の隊員らしく、彼の苦しみは計り知れない
状況的に生き残っている確率は低いのかもしれない。あの男の『転がっている』という言い方だと絶望的に感じる
遺体を確認したわけではないので隊員達の親族には知らせていないらしい。命からがら城に戻った者たちには箝口令を敷いた、とグレンは苦々しげに息を吐いた
広間にいた騎士や魔導師たちの様子では、箝口令を敷かなくても口外する者はいなかったのではないかと思う
「 じゃあ、あの男が転移という方法でこのお城に来てるかもしれないことに、なぜ皆あんなに驚いていたの?」
グレンは、あぁそれは、と言った様子で眉を上げた
丁寧な言葉使いはかえってまどろっこしいので、彼ににはもう地で話してくれと頼んだ
その代わりこちらもそうさせてもらうことも了承してもらった
「 転移という魔術は誰もが行える魔法ではないのだ。 どちらが先でも良いが、まず術者が訪れた場所に術をかける。 そして転移したい別の場所に移動し術を完成させると、術者と術者が指定した者達のみ行き来することができるようになる。術の施された場所は、術者にとっては言わば聖域であり、生半可な者ではそこに術をかけることができなくなる場所となる」
私が難しい顔をしているのを見て、グレンが話を一旦止める
「 自分の部屋にホイホイ知らない人間が転移してきたら怖いだろう?」
あぁ、それは確かに怖い
私は頷いた
それを確認するとグレンは説明を続ける
「 しかし高度な技術をもつ術師になると、更に転移の術を複雑化させて、例えばある国の広場からある国の広場まで、どんな人でも行き来できる空間を造ることが出来る」
「 どんな人でも?」
私が驚いて口を挟むとグレンは「そうだ」と頷く
「 術者が指定していない、魔法を習得してない者でも、例えばセナ様でも自由に転移できるようになる」
ほうほう
それは実に興味深い
「 更に術師がもっと高度な術をかけると、その範囲を広げることができ、その中に複数の術を施すことができる。 私たちはその広い範囲の中を結界と呼んでいるのだ」
何となく分かってきたが逆に素朴な疑問が湧いてくる
「 つまり …… このお城には転移の術が施されていて、更に城全体を結界化している。…… でも結界の中では他の人は魔法が使えないんでしょ? どうしてあなたやサラたちは使えるの?」
「 飲み込みが早いな。 そこが宮廷魔導師たちの凄いところだ。 結界の中に更に難解な術を組み込み、指定した者のみ指定したレベルの術を使うことができるようになる。…… そうだな、 例えば城に訪れた者がいるとしよう。 その者の魔法レベルは中級レベルだ。そいつが三日間だけ城に滞在することになったとして、術者はその旅人に、三日間だけ最低限のレベルの魔法を城内で使えるように術を施す」
「 そんなことができるの!?」
グレンは凄いだろ?と言わんばかりに得意げに頷く
うん、凄い!
「 すると四日目の朝には、旅人はこの城で術を使えなくなる。どんなに簡単な魔法でもだ」
「 あなた達は制限がかけられてるの?」
「 いや、宮廷に認められた騎士や魔導師に制限はない。 だから万が一敵が攻めてきても、私たちは全力で敵を迎え撃つことができる」
へぇー 魔法って凄いのね ……
と感心していてあれっ?と思う
つまりなに?
それだけレベルの高い結界の中であの男は?
じわじわと足元から寒さが這い上がってくる
「 衛兵の隙をついて入ってきたってこともあるんじゃないの?」
もう、心からそう思いたい
グレンは私の言葉の意味をすぐに理解し、声のトーンを落とした
「 だとしても、テラスの扉が閉まったのは偶然ではないだろう。それにあのテラスから下の庭まで飛び降りて平気な人間はいない。何らかの魔法が働いているとしか思えない」
グレンは眉をひそめて肩を落とした
「 信じたくはないが、あの男は我が国最高の魔法をかいくぐれるほどの魔導師なんだろうな」
そして忌々しそうに目を伏せた
「 ラグドール城の結界は破られた」




