22【黄昏の訪問者】
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「 すみません、言い過ぎました」
今までこんなに感情をむき出しにしたことなんて一度もない。 何事も荒立てる事のないように生きてきたつもりだったから自分でも驚いた
「 いえ、セナ様の仰ることは正しい」
私はグレンを見上げた
意外だった、てっきり怒り出すかと思っていたのに
だってそうでしょう? 私は二週間で帰ると無責任なことを言ってるし、今日はやったことと言えば、庭で食事をしてお風呂に入っただけだ。「そんなお前に言われたくない!」といわれてもおかしくない状況だ
素直にそう言われるとこちらももう何も言えなくなった
「 いえ、あの……」
とにかくここは感情的になった私が悪い
その場の空気を取り繕うため私は何かしら言わなくちゃと焦った…けれど言葉が続かない
「 ここから眺める夕陽は実に美しいですねぇ」
んん? 今のは私の台詞じゃない。まして隣にいるグレンでもなかった
では誰が? 私たちは声のした背後を振り返った
「 しかしバーミーズマウンテンの塔から見下ろす景色の方が絶景かもしれませんね」
いつのまにかテラスのテーブルには男が座っている
そんな … 音も気配も全くなかったのに ……
男の風貌はストレートの黒髪、黒のスーツにインナーは白シャツ黒ベスト、白い手袋に黒のロングコートを着用。そうね、一言でいうと西洋の執事のような服装だ。容姿端麗といえばそうだけど、その表情は笑みの中に何の感情も読み取れなかった
「 ねえグレン、あなたもそう思うでしょう?」
男はニッコリと笑みを浮かべ、グレンに同意を求めた知り合いなの? …… そうではないようだ
隣にいる彼を見ると、明らかに殺気立っている
「 お前は …… 誰だッ!?」
グレンはすでに剣を構えてその矛先を男に向けている。だけど男はそれを見ても少しも動じる事なく余裕の笑みを絶やさない
「 またおいでよ、あなたの大事な部下たちもそのまま転がっているよ」
かわいそうに、そう言わんばかりの言い方。でもそれは心にもない事を口にしているのは明白だ
グレンが男の言葉に粟立つ
彼はグレンを挑発している?
転がってるってなんだろう…
「 んーー! そちらのお嬢さんが入れた紅茶は美味しいですね!少し冷めかけてるのが残念です」
そう言ってもう一度ティーカップを口元へ運ぶ
男の視線が私へと移ると、彼は値踏みをするかのように私を見据える
な …… んか、怖い
もしかするとこの男はグレンよりも私に関心があるのだろうか?
彼はフッと視線を落とすと、今度は宙に視線を彷徨わせた
「 でも私は恐怖にうち震える身体から流れる
真っ赤な血の方が好きだなぁ」
すでに男の顔は狂気の笑みとなっている
淡々と明るく話しているが全身が総毛立った
やば、なんか …… まともじゃないのかも…
男はカチャリとカップをテーブル上のソーサーへと戻した
「 答えろッ!! お前は何者だッ!? どうやってここまで来たッ!?」
グレンは今にも斬りかかりそうだ
男の顔から笑みが消えると今度はグレンに鬱陶しげに答えた
「 私が何者かって? つまらない質問はしないでよ。 お前に答える義務なんて私にあるわけが無い。この城にだって、こちらのお嬢さんがいなければ来たくもありませんでしたよ」
その瞬間、テラスに突風が吹き部屋への扉が勢いよく閉じられた
その大きな音に扉へと気を取られる
視線を逸らしたのはほんの一瞬だ。 しかし視線を戻すとテーブルに男の姿はなかった
どこへと辺りを見回すとグレンが手すりから下を覗き込み叫んだ
「 待てッ!!」
私も彼に続いて庭を見下ろした
庭園の真ん中に先ほどの男が立ってこちらを見上げている
えっ!? あの一瞬であそこまで!?
もしかして瞬間移動ってやつ??
男は手をヒラヒラさせて呑気な声を上げた
「 またお会いしましょう!…… 特にそちらのお嬢さんは近いうちに ……ね」
えっ?? 私!?
距離はあっても彼の言葉は後半の方が明らかに感情が込もっていた
い、いやかも
なんか怖いからもう戻って来て欲しくないし、二度と会いたくない
そう男に返したかったけど、彼は既にのんびりと庭の小径を歩き出していた
今回は短めですが
今日はまだ書くことができそうです。




