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異世界ライフは美しい!  作者: 清水悠


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21【心情】

ブクマと評価ありがとうございます。

とても嬉しかったです。

「 えっと …… 何か …… 御用でしょうか?」


私は慌てて騎士に駆け寄った

結構長いこと部屋から出てたけど、彼は一体いつからここで待っていたのだろう?

昨晩、今日の予定を約束した覚えはないけど待たせたのなら申し訳ないと素直にそう思った


「 ……………………」


「 あの …… 騎士さん??」


至近距離になっても彼は何も反応しない

表情の硬さから怒ってるのかなとも思ったけど、そんな様子でもなさそうだ。まじまじと見て私を眺めて固まっている


体調でも悪いのかしら?


「 セナ様は …… セナ様なのですか?」


「 はぁ?」


 おっと、お城を守る騎士様に向かって思わず「は?」は良くないのかもしれない

でも、彼の態度の意味が分からない。完全にフリーズしている。昨日は私に対する冷たい態度を除けば、いかにも騎士然とした姿に少しかっこいいとすら思ったのにな


この騎士はとても背が高い

私も一般成人女性の中では低くない方だけど、彼を前にするとかなり首を上に向けないといけないから、いつまでも見上げてるのは辛かった。どうしよう?こうしててもしょうがない

と、とにかく部屋に入った方がいいわよね


「 ここではあれなので、とりあえずお部屋に入りましょうか」


扉を開けると騎士はおとなしくついてきた

自分の家ではないのだから、私も「どうぞお入りになって 」とは若干言いにくいのよね


んー?? この人ってこんなキャラだったっけ?

やっぱり昨日とは別人のようだ

もっと『 オレ様風 』だった様な気がするんだけど

調子狂うなと思いながら、テーブルへ向かおうとすると唐突に髪を引っ張られた


「 ッ!? …… 何ですか?」


痛みを感じるほど強い力で引っ張られたわけではないが、ほぼ初対面に近い他人に髪を触られれば誰だって驚く。思わず睨んでしまったけど、彼は何故か悲しそうな顔をしていた。

しばらくお互い無言で見つめ合っていたが、やがて彼は髪を掴んでいた手を緩めると、また首を捻っている


ほんとどうしちゃったの?

この人、情緒不安定なのかしら?


とにかくテーブルに座るよう勧めると彼は素直に従った

どうしよう、お茶でも出せたら良いのだけど

私は魔法を使えないからお湯を沸かせない


あっ、 もしかして…


「 ねぇ騎士さん、あなたってお水をお湯に変えることってできるかしら?」


「 え?ええ、出来ますが?」


グレンのきょとんとした視線を尻目に、私は備え付けのミニキッチンへと向かい、棚の中から紅茶セットを用意した。

イルーゼの紅茶手順は頭に入ってる。


大丈夫よ!きっとできるわ

っていうか、やってみたい


まずティーポットに水を入れ、グレンに温めてもらう

「 100度で!」とお願いすると「 難しいな」と彼は呟いていた

ポットのお湯がポコポコと、気泡が上がってきたので「 ストーップッ!!」と私は叫ぶ

あまり高温になり過ぎて容器が割れるのが怖い

そのお湯を別の水差しに移し替えるとポットに茶葉を入れた

そしてさっきのお湯をもう一度熱湯に変えてもらい、勢いよくポットに注いだ

あとは茶葉を崩さないように色出しを待つ

いつの間にか、グレンも隣に並んで紅茶の完成を一緒に見守っていた


 この世界は男性でもお茶を淹れることはあるのだろうか? イルーゼの淹れ方とそんなに変わらないし、おかしな事はしていないと思うけど、隣で見守られるといささか緊張する

十分に色もでたので、渋味が出ないよう、そーっとカップに紅茶を注いだ


うん、キレイな琥珀色の紅茶だ

香りも良いような気がする


「 お砂糖は入れますか??」


「 むっ? 私か? あぁ…… いや…… 。…… 二つ」


ほう、二つね。何となく見た目で砂糖なしだと思ったけど、意外に彼は甘党のようだ

私はというとストレートで飲むのが一番好きだ


完成した紅茶をいそいそとテーブルへと運び、グレンにも飲んで飲んで!と勧め自分も飲んでみた


 …………!!


この感動が伝わるだろうか? 魔法で紅茶を入れたのよ!?

って言っても私が魔法を使ったわけじゃないけど、なんだか理科の実験が成功したみたいでとても嬉しい。しかも言っちゃあなんだけど、侍女さん達が入れたのより美味しい気がする


…… ん? どうかした?

こっち見てないで早く飲んで飲んでよ

きっと味は大丈夫だと思うのよねー?


「 美味いな」


「 本当ッ!?」


「 あ?ああ、とても美味しい……それにしてもたった一日でセナ様は色々なことを学んだようですね」


いえいえー

たかだかお茶を入れたぐらい何てことないですよ

良かった! あなたも笑顔になってくれて。さっきまでほんと変だったわよ?


私達はしばし紅茶の時間を楽しんだ


「 そういえば、昼食は庭園で取られたと聞きましたが、その後はどちらへ?」


「 花音ちゃん達みんなとお風呂に入ってました」


あれ? グレンが「 風呂かぁー!」と息をもらしている。 そして少し咳払いするとピッと背筋を伸ばした


「 セナ様、城のことにも慣れたようですし、明日は城下町へ行かれませんか? 他の勇者様もご一緒にラグドールの街並みをご覧いただけたらと思います」


「 花音ちゃんと奏太が一緒という事は、目的はもちろん観光ではないですよね?」


「 それはどういう意味でしょう?」


「 ただ皆で街の名所を見て回るのが目的ですか?」


「 ええ …… そうする事によりこの国に早く慣れることができるかと……」


 私の詰問するような問いかけに、少しムッとしたようにグレンは答えた


…… そうなんだ

呆れたことに本当に観光のお誘いなのね


そのとき窓の外から賑やかな音が聞こえてきた

私は立ち上がり外への扉を開けテラスへと向かった


この楽しげな明るい楽器の音は、お城の中ではなくどこか遠くから流れてくる

夕焼けで空が橙色から薄紫に変わりつつあった


「 この音楽は何ですか?」


部屋に残るグレンを振り返りながら質問した

手すりに背を向けたまま寄りかかる


「 これは夜市を知らせる音楽です」


グレンもテラスに出てきて隣に並ぶ

彼は遠くの方に目をやりながら説明してくれた


「 街の広場で夜市という小さなお祭があります。不定期なので開催する時はああして事前に音楽で知らせるのです」


「 …… 街の人たちは、今この国で起こっている事を知っているのですか?」


「 いえ、知っているのは各国の城の者であり、国民には混乱を避けるため広めることはしておりません」


「 そうなのね」


「 セナ様、さっきから何が仰りたいのですか?」


 私の含んだようなもの言いに彼ををまとう空気がピリピリと変わった。ここまで煽ると彼は昨日の騎士としての顔に戻っている


だけどそれはこちらも同じだ

私達の間にさっきまでの和やかな雰囲気は消えていた


「 危機感が全くない」


私はそう呟いた


「…… なに?」


 

グレンは本格的に体をこちらに向けて眉間に皺を刻んだ。 今になって思うと、なぜいきなり私がそう言ったのかは自分でもよくわからない。けれど私は今日一日ずっと思っていたことを一気に吐き出した。

それは彼を怒らせてでも言いたかったことだ


「 石が散らばり、国に厄災が降りかかろうとしてる割に、誰一人緊張感が無いのよ。だいたいこの国に残っても帰っても良いってなによ? 私達全員帰っちゃったら一体どうするつもりだったの? その時点でこの世界はジ・エンドじゃない? 宴を開く? それは別にいいわよ。でもね? どんだけ真夜中までやってるの? 朝になってもだぁれも起きないよね? 奏太なんて二日酔いだし。お陰様で暇だったからお城の探検までしちゃったわ。 おまけに街の観光に行けって!? 私が言うのもなんだけど、あなた達は一体いつになったら石を探し始めようとするのかしら?」


そもそも私は観光客として扱われてるのかもしれない。お前がそれを言うかと思われても仕方がないだろう。それに決してこの騎士が悪いわけではないだろうに私は疑問の全てを叩きつけた


昨日、石のカケラを手にした時から、弱々しくではあるがそこかしこから石の悲痛な感情が流れてくる

この世界は間違いなく暗雲が立ち込めている

気を緩めると押しつぶされてしまいそうだ


なのにこの世界の人間は誰もそれに気がつかない

どうしてなのだろう

こんなに石は叫んでいるのに


それならば、いっそ滅んでしまえばとさえ、そんな事さえ私は思わずにはいられなかった

明日はもう少し書き進めることができると思います。

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