17【庭園での昼食】
「 あー!セナさんだぁ!」
お城の散策を終え三人で食堂へ向かっていると、左手の廊下から大きな声で名前を呼ばれた
声のした方を見ると花音ちゃんが笑顔で走ってくる
彼女は制服ではなく私と同じ白とグレイのワンピースを着ている。年下の女の子と同じ服装ということに、なんだかくすぐったかったが、ある意味この服が私たち『勇者』の制服なのかしら?
それは修道女が着るようなお淑やかなデザインで、首から胸の所までの白い生地に重ねてレースもあしらってある
袖と胸から裾まではグレーの生地でフレアワンピースになっていて、膝下までの上品な作りだ
スカートの裾には黒のレースの縁取がありこれまたとても可愛い仕上がりになっている
お互い両手を合わせて再会を喜んだ
妙なもので同じ世界から来たというだけで、こんなにも会えると嬉しい
「 どぉ〜して昨日の宴に来なかったんですか!?
私、セナさんいなかったからすごく寂しかったんですよ〜!」
ありゃ、その話題を突かれると痛い
花音ちゃんはぷりぷり怒ってた
私がアハハとごまかしてると、彼女の後ろにいる侍女さんたちが「 カノン様… 」ともじもじしている
「 あ、そうだね!セナさん紹介します、この方達が 私のお世話をしてくれるロゼッタとイルーゼです」
花音ちゃんに紹介された二人はお互い名を名乗りながら深々とお辞儀をした。その物腰はなんとも上品で柔らかい
「 初めまして、名取 世那と申します。よろしくお願い致します」
そして私もサラとターニャも花音ちゃんに紹介した
「 ねぇセナさん!お昼ご飯はもう食べました?私たち今から食べる予定ですけど、天気がいいからお庭で食べようかって話してるんです!良かったら一緒に食べませんか?」
サラとターニャの方を確認するとウンウンと頷いている
「 いいわね! 賛成!!」
本当はお城にある食堂を体験してみたかったけど、二週間あるんだもの、また機会はあるだろう
その後は侍女たちで何やら話し合って「そうね!そこがいいわ!」と頷きあい、ロゼッタが私と花音ちゃんを食事をする庭園まで案内してくれた。どうやら残りの三人は食事の準備をしてくれることとなったようだ
庭園にはパステルカラーの小さな花々が咲き乱れている
ベージュのテラコッタタイルの小径を進むと、庭の真ん中辺りに10畳分くらいだろうか? 八角形の建物がある
建物の両サイドには手すりのついた五段の階段があって、そこを上ると板張りとなっていた。腰から上は八本の柱がドーム型の屋根を支えている
屋根には朱色の鱗のような瓦が張られていて、まるで童話の世界のようだ
準備が終わると備え付けられたテーブルには豪華な料理が並び、私たちはソファーに座った
天井からキラキラとチェーンが垂れ下がっている
なんだろうこれ? と上を見上げるとチェーンの付け根には小さなベルが三つ付いている
私が不思議に思っていると、それに気がついたイルーゼがにっこりと微笑んだ
「 こちらのお庭はオルゴールガーデンと呼ばれておりますの。セナ様、そちらのチェーンをお引きになって?」
言われた通りにすると、ベルはゆらゆらと揺れ、小さな透き通る音が庭の中に鳴り響いた
「 わぁ〜!すごーいッ!!」
花音ちゃんは歓声を挙げ立ち上がると手摺まで近寄った
あたり一面の小さな花々から、一斉に金色の妖精たちが舞い上がり宙を飛び交う。その羽の音なのだろうか? オルゴールの音が庭全体を覆い尽くした
「 妖精たちはこのベルの音が大好きなのです」
す、すご!これはもう ファンタジーね!?
ものすごくファンタジー!!なんて素敵なの!もしかすると神様が私にお仕事を頑張ったご褒美をくれたのかもしれない!
もう何もかもが夢のようだ
「 さあ、お食事をいただきましょう!」
聞いたところ花音ちゃんも、昨日の宴で決して一緒に食べようとしないロゼッタとイルーゼに驚き、宴は早めに切り上げ、お部屋で三人でミニパーティーを開いたらしい
そのまま真夜中まで話し込んでしまったらしく、三人とも起きたのはついさっきで、今日の食事はこれが初めてのようだ
私たちは朝食も取ってるし、小腹がすいている程度だったから軽食にした
メニューは本当は微妙に違うけど私たちの国風で紹介するわね
◇彩りサラダのテリーヌ添え
◇ミネストローネのスープ
◇海老とアスパラのマヨネーズ焼き
◇ローストポークとグリルポテト
◇キャベツとベーコンのペペロンチーノ
◇ナスとひき肉のボロネーゼ風ペンネ
◇パン盛り合わせ
ごめんなさい、軽食って言ったけど結局普通に食べちゃった
そして食後のデザートタイム!
◇生チョコのケーキ
◇ミニエクレア
◇カボチャの濃厚プリン
◇フレッシュ苺とブドウ?
◇カリカリの薄く焼いたクッキー?
これらが全てミニサイズでシルバートレイに並べられている。うわーん写真撮りたい!!もう昨日から手元に携帯がないことが残念で仕方なかった
「 あ〜ん!携帯があればいいのに!こんなの絶対自慢できるのに!」
考えることは花音ちゃんも同じで、デザートを眺めながら深い溜息をついていた
「うんうん!」と花音ちゃんに頷きながらイルーゼの淹れてくれた紅茶を口に含む
おおっ!この紅茶は !?
ロゼッタは皆が食べ終わった食器など片付けてる。 その所作はとてもさり気なくて、周りの皆に気を遣わせないほどナチュラルだ
そっか、確かサラとターニャ以外の選ばれた侍女達はベテランだって言ってたわよね?
ターニャはまだ子供だけど、サラだって言葉遣いは丁寧だし身だしなみも整っている。時間などの約束だってちゃんと守るから『侍女』として駄目な点なんて一つもないと思っていた
でもこうしてイルーゼ達と一緒にいると、その差は歴然としている
彼女達は運んでくる食事や食器セットなどを、魔法でコンパクトサイズにして運んでくる
サイドテーブルやミニキッチンなどで、元の大きさに戻し、それからテーブルにセッティングしてくれた。
冷めた料理は並べる直前に温め直すから、出来立てのように熱々で美味しい
なのでもちろん片付けも、コンパクトサイズに縮めて厨房に戻しているみたいだけど、サラとターニャが食器セットを汚れたまま小さくしていたのに対して、ロゼッタは魔法で使用前の綺麗な食器にしてから小さくしていた
サラとイルーゼの紅茶の淹れ方も全然違う
サラはティーポット中のお水を沸騰させ、その中に茶葉を入れていた
対してイルーゼは、温めておいたティーポットに茶葉を入れ、別の容器で沸騰させたお湯を勢いよくティーポットに入れていた。ついでに言うとティーカップもあらかじめ温めてあった
確か日本茶と違って、紅茶は沸騰したお湯を使うんじゃなかったかしら?空気を多く含んだお湯で茶葉を開かせると以前習ったような気がする
もちろん口に出しては言わないけど、イルーゼの淹れた紅茶の方が格段に美味しかった。同じ茶葉でもこんなに味に差が出るのかと感心してしまうほどだ
「 …… それでねセナさん! 今度はみんなでそこの大浴場に行ってみようって話してたの!セナさん達も一緒に行きませんか??」
「 えっ?うんいいわよ?」
返事をしてから意識を会話に戻す
なんの話だっけ?
花音ちゃんは、昨晩は城の大浴場に行ったらしいが、今度は浴槽がたくさんある『ミューズ・スパ』という所へ行きたいようだ
えっ!? お風呂!?
みんなで入るの??
大人数でお風呂に入ることにも若干抵抗があるけど、それよりももしサラ達が私の体を洗おうとしたら断固拒否しよう
一旦部屋へと戻り夕食後にもう一度集まろうか、このまま女子トークを続け夕食後に浴場へ向かうか、散々皆で論議した末に、じゃあ今から行こう!という実にストレートな結果となった
他にやる事もないしねー!ってみんな笑ってる
って、あれ?あれあれ?石探しは??
私達が呼ばれたのって本来は…
うん、まぁいいか
浴場の体験も大事よね?
だってターニャが元気よく「よぉーし! みんなでお風呂ですわッ!!」って喜んでるんだもんね




