16【お城を散歩】
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「 あー、うんそうね二週間もいるかなぁ?うんとりあえずその予定よ」
なぜこんなに歯切れが悪くなってしまったのか自分でもわからないが、サラの剣幕に押されてなんだか萎縮した返事になってしまった
「 今回はたまたま休暇中だったから、少しだけ滞在することにしたけど、休暇が終わったら私もほら!仕事に戻らないといけないから」
「 そんなぁ! 二週間なんてあっという間ですわ!」
ターニャは本格的に泣き出しそうだ
「 それはなんとかなりませんの? 例えば …そうですわ!休暇を伸ばしていただくとか?」
サラも残念そうにそう言ってくれるけど、私は苦笑いが精一杯だった
ここは話を変えた方が良さそうだ
「 そうそう! 昨日頼んだレイブン卿の件はどうだった?」
昨日二人が部屋を出るときに、レイブン卿に個人的に会えないかと相談していたのだ
あのお爺ちゃんに会いたい理由は、サラが「どうしてセナ様はこんなに立派なお部屋なのですか?」と質問したからだ。
花音ちゃんや奏太の部屋の様子を尋ねると、どうやら客間ではあるがここまで豪華な部屋ではないらしい
私にこの部屋をと指示したのはレイブン卿である。どうしてなのか彼に理由を聞きたかった
「 その件でしたら今朝方、宮廷のお役人様に尋ねてみましたの。まぁ昨晩は宴でしたから、レイブン卿もまだお休みのことでしょう、と思ったのですが …」
サラはここまで一気に話すと、ふっと息を吐いた
「 ところがレイブン卿は、今朝早くに旅支度をしてお出かけになられたそうです。お役人様も彼の行き先やいつお戻りになられるかも分からない、とおっしゃってましたわ」
そうなんだ
どこか旅行にでも行ったのだろうか? まぁ居ないなら仕方ない
「 じゃあもう一つお願いした件は?」
「 コレですわね!?」
ターニャが元気よくテーブルに紙とペンを置く
「ありがとう。悪いんだけど二人ともこの紙に、このお城の見取図を描いてもらえないかしら? ざっくりと簡単なのでいいから」
「「 みとりず? 」」と、二人が仲良くハモる
「 そう、このお城の地図なんだけど、広すぎて迷子になっちゃいそうだから、あると便利かなと思って」
「 ち、地図でございますか?」
あれれ? 二人は黙り込んでしまった
どうしたんだろう、と思ってると言いにくそうにサラが顔を上げた
「 あの、セナ様 …… 地図は大変高価なものでございますし、私たち侍女が描けるものではないかと思われます」
へっ? そうなの?
私がびっくりした顔でいると続けてサラが言った
「 この国でも地図をお持ちの方は、お役人様でも上の位の方とか、あとは冒険者などでもある程度の経験がある方達ですわ。そもそもこのような紙ではなくもっと特殊な用紙をお使いです」
へーそうなんだ!
あーそういえばコピー機とかないのなら、そんなに大量に出回るものでもないのかな?
ターニャに関しては「地図ってなぁに?」って表情だ。ご、ごめんね、お姉さん難しいことを聞いたのね
うーん 。でもお城の中は色々見てみたいのよね
OK!分かったわ!いいでしょう
「 じゃあ三人でお城の地図を作りましょうか!」
なければ自分で見て作ればいいもんね。二人も「楽しそう!」と興味津々で、早速部屋から出た三人はきゃっきゃとお城の中を散策した
昨日の宴の影響なのか、衛兵以外はあまり人もいないので、特に目立って咎められることもなくお城中を自由に走り回ることができた
この時点ではまだまだ地図を作りたい気持ちは萎えていなかった
途中鍵のかかった部屋は、その近くにいる衛兵などに何の部屋かを聞いて、人が居るであろう部屋は大体の場所や広さを頭に入れて中は覗かなかった。
まずは大きな階段のあるエントランスホール
その近くに謁見の間があり、いくつかの会議室もあった
王様やお妃様の間はもちろん、王子様やお姫様のお部屋。当たり前だけどこの辺りは私たちは入れなかった
サラ達が宿泊してる侍女部屋も覗かせてもらったけど、なんかねぇ、私たちの世界でも高級ホテルレベルよ? 一人部屋もあれば三〜五人で住める部屋で、部屋と部屋同士がドアでつながってたり、メゾネットタイプになってたりして、これはこれで素敵だった
『侍女』といっても各国の貴族令嬢の社交場なのだ、よくある異世界で身の回りのお世話をするような、身分の低い者とは意味合いが違うと理解した方が良いだろう
花音ちゃん達の客間は城の二階部分にあり、その他客間だけでも五〜六箇所に分かれていて、その一箇所ごとに五部屋前後もあった
ここらまで散策して、地図はもう無理かもしれないと感じ始めていた
宴会場も大中小様々で、それ以外にサロンの多いことよ。談話室みたいなものから楽器が弾ける部屋まで実に多種多様に設けられていた
浴室も三箇所あって、一度に30人くらい入れそうな大浴場と、浴槽がいくつもあり更にミストサウナ、マッサージ台みたいな物も設置してある浴室。それから庭園付き展望露天風呂みたいなのもあった
そうそう!お城入口の横手には、騎士団の自室や訓練場、救護室、馬を管理する納屋、そして武器庫がある
「 ちょっと待って、あとどんだけあるのよッ!?」
かれこれ二時間くらい走り回ってるけど、全然終わりが見えない。お城というものを完全に舐めてたわ。地図なんて無理、こんなの絶対に無理
ターニャは次はどこ行きます?的な感じでワクワクしてたけど、私とサラは目の前のアーチをくぐったところで、側にあるベンチに座り込んでしまった
どうやらここはテニスコート三面分位の庭園だ
そう、このお城には庭園だけでも何箇所もあった
単に「美しいお庭」ってだけじゃなく、バラ園だったり、石庭だったり、お茶室付きのお庭だったり。
迷路みたいなのもあったけど、ゾッとしてすぐにドアを閉めちゃったわ。ターニャがとても行きたがったけど、ごめん、体力がもたないからまた今度にしよう
「ねぇ、どこかで鐘の鳴る音がしない?」
何だろう?とサラの方を見ると
「 ええ、これは正午をお伝えする鐘の音ですわ」
そうかやっぱり二時間近くも城を徘徊してたようだ
「 まだ行ってないところってあるの?」
「 そうですわね、私もそれほどこのお城を知りませんが、まだ他に魔導師様たちの塔や長老様たちのお住いの塔とか、それに使用人部屋、食物を置いてある倉庫とか厨房。あとは …」
「 牢屋がまだですわよ!」
ターニャがサラの言葉を繋いで目を輝かせている
「 牢屋ね」
確かにお城に牢屋はありそうだ。でもそんな所へのこのこと見学に訪れても良いのだろうか?
「 セナ様、牢屋は近寄らない方がよろしいかと思います。あまり良い場所ではないと思いますし」
そう説得しようとするサラの言葉に私も同じ意見だった
「 そうね、遊び半分で行くところじゃないわよね。それにもう大体わかったわ。このお城はすんごく広いって事がね!」
「 えー?? それでは探検はもう終わりでございますの?」
ターニャがつまらなさそうに口を尖らす
「 ええ終わりにしましょう。充分楽しかったわ!」
「 ではお部屋に戻られますか?」
「 んーどうしようかな、二人ともお腹は空いた? 途中どこかからいい匂いがしたわよね?」
私の言葉に二人は目をキラキラと輝かせた




