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12【食事はみんなで】

テーブル上の大皿には、サラダやお肉の盛り付けされた豪華なオードブルが並べられていて、その他にパンの盛合せやデザート皿まである


すごーい!!


お肉は焼き立てみたいに湯気が上がってるし、パンなんかホワホワに温かそう!

この部屋に来たとき、二人とも手ぶらだったよね? えー?? まさかまさかこれも魔法で出したってこと?


あまりに速い準備だったから、声を掛けられたときはてっきり折詰弁当か何かかと思っちゃった


「 お飲み物は何になさいますか? お酒はえーっと、ワインと …… ええっと …… ビールに ……それから…」


「 お水で大丈夫よ?」


私は慌てて言った。

へぇ!この世界にもワインもビールもあるのね!! それはかなりうれしいかも。 どんな味なのかぜひ飲んでみたい!あんまり量は飲めないんだけど

それに、今夜は本当に疲れているからお酒は控えたかった


「 今夜はお酒はいいわ」


「 それでしたらジュースやお茶などもございますが?」


あっ、そういうのも私たちの世界と一緒なのね

 なるほどなるほど。っていうかね? 小さな女の子に飲み物を薦められる行為がなんだかくすぐったい。ついつい遠慮しちゃうわね


「 いいのいいの! お水でじゅうぶん! じゃあ …… ご馳走をいただこうかな?」


椅子に着席し、改めて料理を眺めドキドキする

異国どころか異世界のお料理よ!?

いやでも胸が高まるわ〜!!


自然と頬を緩ませながらフォークに手を伸ばしかけたが、テーブルの横でビシッと並んでる二人の方から「クゥ」と音が聞こえた


 チラリと目をやると二人とも顔を真っ赤にしている。小さい方の女の子がぷるぷると笑うのをこらえてるという事は、音の主はもう一人のほう?


「 もしかして …… 夜ごはん …… まだ?」


時間的に20時を回っている頃だろう、てっきり二人とも夕食は済ませているのかと思っていたが、どうやらそうでもないらしい


「 も、申し訳ございません」


消え入りそうな小さな声で謝る姿もとても可愛い。私は目の前の豪華な料理を眺めた


「 ねぇ、一緒に食べましょうか??」


「 い、いぇ!と、と、と、とんでもございませんッ!!」


「えっ! ご一緒してよろしいのですかっ!?」


二人が真逆の意見を叫ぶ


「 ちょっとッ!!ターニャッ!? ダメよ、勇者様と一緒に食べるだなんて!!」


「だぁってもうぺこぺこですもの!!だいたいそんなこと言うならサラだってお腹グーグー鳴らさないでくださいましッ!!」


二人のコンビが面白くて、こらえきれず吹き出してしまう


「 いいじゃない、別に誰も見てないんだし! 三人だけの秘密ってことで。 それにこの量は私一人では食べきれないわ。一緒に食べてくれる方が嬉しいわ!」


座って、と合図を送る


「 あっ!でも食器が足りないかしら?」


私がそう呟くより速く小さい方の女の子が、部屋の中のミニキッチンへと走る。 すぐに必要な食器を持って戻り、いそいそと椅子に座った

立ったままオロオロしている女の子に、もう一度椅子を勧めると、彼女もおずおずと座った


「 飲み物はいいの??」


「あっ!」と、小さいほうの女の子はまたミニキッチンに走る。すぐにオレンジジュースなのかな? 黄色い飲み物とお茶っぽい飲み物をグラスに注いで持ってきた


あの棚に飲み物が入ってるのかな?

後で喉が渇いたら色々飲んでみようかしら?


「 それではいただきましょうか!?」

「 ハイッ!!」

「 いただきましょう」


さて、ここからはせっかく初めての異世界料理なので、しばらく食べることに集中させてね?


 サラダはね、レタスとトマトは元の世界のと似たような感じで、オレンジ色のシャリシャリした食感の物や、酸味のある丸い野菜は初めて食べる物だ。マヨネーズ系のドレッシングはコクがありこのお野菜達にとても合っていた


 お肉料理は、牛肉のステーキに、豚肉のスペアリブ、そしてフライドチキン。それぞれにグリル野菜も添えてあり香ばしい。お肉はどれもウェルダンに焼かれていてしっかりとした味付けだ。ミディアムレア好みの私には焼き過ぎの感はあったけど、これはこれで


 その他に、じゃがいものチーズ焼き、何かしらのパイ包み焼き、これは何?木の子か何かのフリッターだと思うけど衣がサクサクしていて私好みの料理だ


 パンはハード系。ごろごろチーズや木の実を混ぜ込んだパンに干しぶどうのパン。ジャムか何かを練りこんだ甘いパンもある。発酵の香りが鼻腔をくすぐり食欲が止まらない。

 お肉の味付けが濃い目だったので、スライスしてもらったパンにお肉とレタス、それにドレッシングをかけて食べたら、女の子達も真似をしていた


 デザートは、苺のカスタードタルトとチョコレート系のケーキだ。他にもあったようだけどコレだけしか持ってこれなかったことを二人は悔しがっていた


 デザートのタイミングで、女の子達が絶対に紅茶が必要と言い出して、ミニキッチンへと走っていく。バタバタとテーブルへ戻って来ると、ティーセットだけテーブルに置いて、何故か私の前に整列した


「 ご挨拶が遅れましたが、私はサラと申します。この度セナ様の身の回りのお世話をさせて頂くこととなりました。そして …」


「 ターニャと申します! 一生懸命頑張りますので、よろしくお願い致しますわ!!」


 二人とも自己紹介が終わるとペコリと頭を下げる。何だか学芸会みたいで可愛い。私も二人にならい立ち上がると挨拶をした


「 名取 世那と申します。こちらこそよろしくお願いしますね」


このときになって漸く、私はこの世界に来て肩の力を抜くことができた

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