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異世界ライフは美しい!  作者: 清水悠


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100【食いしん坊を歩こう!】

いつもありがとうございます!


気がつけば100話!

これも読んでくれる方がいるから頑張れました。

物語に出てくるキャラ達も、読んでくださる方達も

皆さまに感謝しつつこれからも書き続けられたら良いなと思います。


どうぞご覧ください!

「 …… おはよ?」


「 はよー …… ございます……。」


 安眠を邪魔するのは気が引けたけど、何度か目の前を横切ってるのに起こさないのは、彼の立場を考慮すると却って可哀想かと思えて、仕方なく部屋の前の隊員さんを起こした。


「 護衛ありがとね? 私ちょっと出掛けるけどまだここに居るかしら?」


「 …… 出掛けるとは?」


 気持ち良く寝ているところを起こされ、焦り気味の隊員さんは、かろうじて状況を把握したみたいだ。


「 城下町に行ってみようと思うの!」


 なにも廊下でずっと座り話しすることはない。私が部屋の中へと戻ると、隊員さんも慌てて立ち上がった。まだ覚醒していないのか頭をブルブルと振っている。


「 城下町に何の用 …… いえ、どういったご用件で行かれるのですか?」


「 そんな所から話し掛けないで、入ってくればいいわよ? 」


 隊員さんはいつまでも扉の前でもじもじとしている。そう声を掛けると迷い犬のようにおずおずと中へ入ってきた。

 部屋の内装を見てあんぐりと口を開けている。


 そうね、私も最初そんな感じだった。この部屋って凄いわよねー。


「 冷たいので良かったかしら?」


 テーブルにアイスティーを用意すると、彼は「恐れ入ります。」と素直に座り、喉が乾いていたのか一気にそれを飲み干した。よくよく顔を確認すると、この隊員さんはダンジョンで一緒だった騎士さんだ。


「 早起きしたのはいいんだけど、宴の翌朝って誰も起きてないでしょう? もうお腹空いちゃってね。」


 食堂を覗いてもひっそりと静まり返っていた。それとなく歩いている人に聞いてみたら、通常勤務の人は宴の翌日は城下町で朝食を済ませて来るらしい。

 前にサラ達が用意してくれたのは、わざわざ買い出しに行ってくれたのだろうか?


「 えぇ確かにそうですね、では至急シェフを起こして作らせましょう。」


 こともなげにそんなこと提案するから、慌ててそれを制止し座らせる。宮廷の料理人達は昨夜は真夜中まで働いてたのだ、ゆっくり休ませてあげなきゃブラック認定になってしまう。


 というか私が城下町を散策してみたいのだ!

 前は馬車で通り過ぎただけだし、今日はお天気も良いからのんびりと歩いてみたい。


「 しかしセナ様が城から出るなら許可が必要です。お供の者も私だけでは少な過ぎますし ……。 グレン様をお呼び致しますか? 」


 ダメダメ、そんな事してたらいつまで経ってもここから出られない。


「 あなたが代わりにベッドに寝てたらバレるかしら?」


「 …… 100 % バレますね。付け加えるなら私の騎士生命が絶たれます。」


 冗談よ。そんな怖い顔しないで?


「 変わり身はやらないけどすぐ戻るから大丈夫よ! 軽く変装もするしちゃんと戻って来るから!お願いッ!! ︎ 」


 馬車で通った感じだと、朝早くに開いてたお店はチラホラだった。パパッと手早く食べて戻ればきっと誰にもバレないんじゃないかしら? 目の前で両手を合わせて何とか説得を試みるも、隊員さんは眉間にシワを寄せたままだった。


「 今の時刻は …… 8時ですか。二時間で戻れますか?」


「 3時間半!!」


「 3時間!!」


「 乗った!! 」


 おーし!とお互いハイタッチ!

 意外とノリの良い隊員で助かった。…… あっ、ハッとして咳払いしてる。


「 では私も着替えて参ります、流石に騎士の姿では目立ちますので。」


 えっ? あなたも一緒に行くの??


「 セナ様は城のエントランスでお待ち下さい。」


 一人でのんびり散策する予定だったのに、彼の意外な言葉に驚いて真顔で見返してしまった。ここで押し問答してせっかくの OK が取り消されるのは困る、私はおとなしく頷いた。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「 ねぇさっきのって、ほんとに魔法は使ってないの?」


「 ええ便利ですよね。あの魔法陣に入るだけで誰でも転移できるのですから。ただしラグドール城からは、私のようにフリーパスを登録してる者が一緒じゃないと飛べませんのでご注意下さい。」


 隊員さんにお城の転移フロアへと案内されると、その部屋の床には直径1メートルほどの魔法陣が沢山描かれていた。その一つに足を踏み入れると、私達はたちまち城下町へと転移する事が出来た。


 当初の予定では徒歩で城下町へと向かおうと思ってたから、これでずいぶん移動時間が短縮できた!


「 しかしセナ様 …… かなり化けましたね。」


「 そう? 変かな?? 」


「 いえ、決しておかしくはございませんが、一瞬どなたか分かりませんでした。」


 でしょ〜!なら作戦は成功ね!


 今朝こっそり部屋から出たときに、宮廷の仕立屋さんのところで大人しめのワンピースを借りてきたのだ。メイクを少し甘い感じにして、髪型は編み込みを両サイドから後ろにまとめる。鞄から眼鏡をいくつか取り出し、その中から赤に近いブラウンの細いセル眼鏡を選べば、鏡の前にはいつもの私とは別の雰囲気の人物が完成だ。


「 これなら目立たないでしょ?」


 どや!とポーズを取ると、隊員さんは口元を押さえ顔を赤らめた。


「 いぇ、あの …… これはこれで私はアリだと ……。」


 んー? いまいちな反応ね。うまく化けたつもりなんだけど、やっぱりバレちゃうかな?


 そういう隊員さんは、生成りのブイネックニットに黒スキニー?ぽいパンツスタイル。本体の出来がいいから、シンプルな服装だとより映えるわね。見栄えの良い子と一緒に歩けるのを、嬉しく思うのは目を瞑って欲しい。


「 さて、お店はどこにあるの??」


「 そうですね、何を食べるかによりますが、どんな物を食べたい気分ですか?」


「 えっ? お店って一つじゃないの?」


 私の驚いて見上げる顔を、彼は困ったように苦笑いした。


「 はい、ラグドール王国は世界中から人が集まりますので、ホテルの朝食も含めればかなりの数ございます。」


 そうなんだ ……。

 何を食べたいかと言われても、料理の名前とかもよく分かっていないのよね ……。


「 世界的に有名なホテルが少し先にありますが、そちらになさいますか?」


「 あぁそういうのはもういいわ。…… ねぇ!そういえば『暴れん坊』とか『やんちゃ坊』みたいな名前のお店って知らない?」


 私のその質問に隊員さんは眉をひそめた。

 ん? なんかおかしなこと言ったかな?


「 なぜセナ様が『食いしん坊』をご存知なのです?」


 おしい!食いしん坊だったか!

 前にサラ達が行ってみたいと話していたのを思い出したのだ。割とジャンクフードっぽい感じの印象だったけど、そういう所って朝食の時間は開店してないのかな?

 それに気のせいかしら? 何だか隊員さんの目の色が曇ったような気がする。


「 いぇあそこなら朝食を出してる店も沢山あります。『食いしん坊』は一つのお店の名前ではなく、飲食店街を総称してそう呼ばれているのです。…… ですがあそこはセナ様のお口に合うかどうか ……。」


 へぇ、面白そう!!そこがいい!!

 ぜひそこに行ってみたいです!!


「 そこが良さそうですね。…… 承知致しました。…… ではご案内致しましょう。」


「 えっと、なんか渋々って感じね? 他に行きたいところがあれば私はそれでもいいわよ?」


 明らかにさっきまでのテンションと違う態度に戸惑った。だけど隊員さんは苦笑いして「良いのです。」とスタスタと前へ歩き出した。


「 ギル? ちょっと待ってよッ!? 」


 せっかく二人で来てるのだから、お互いの食べたい物を選びたい。私がそう駆け寄ると、彼は驚いたように私の顔をまじまじと見ている。


「 ね!もしかしてホテルとかの食事の方が良かった? それか、その『暴れん坊』があんまり好きじゃないとか? だったら私はギルの好きなお店でも全然かまわ …。」


 言葉を止めたのは、彼が「 ブハッ!! 」と吹き出したからだ。 すぐに口元を押さえて堪えようとしてるけど、クックッと笑いが漏れている。


 なに? 私なにか変なこと言った??


「 申し訳ございません。…… ではこのギルめがセナ様をご案内します、その …… 『暴れん坊』へ。」


 何でそんなに笑うんだろ?

 まぁいいか、なんだかさっきとは違って柔和な表情になってくれたし。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「 凄い凄いッ!! ねぇギルは他に何食べたい!? 私あっちの屋台のお肉と、ここのピザを揚げたみたいなのがいい!! 」


「 あーそれでも良いのですが、あそこは芽キャベツとチキンのクリーム煮入りのが絶品ですよ? それにこの先にある生ハムの名店も外せません。」


 すでに私達はベトナムのフォーみたいな麺料理と、小さなじゃがいものグリルに、とろっとろのチェダーチーズをかけたものを食べている。

 私はギルとアレコレ悩んで、お腹いっぱいになるまでお店をハシゴした。


「 セナ様!お待たせしました。」


 ベンチに座ってデザートのアイスを食べていると、温かい飲み物を両手にギルが戻ってきた。


「 ありがとう!溶ける前に戻ってきてくれて良かった。」


 私はブドウによく似た甘酸っぱいフルーツ果樹のアイスをスプーンですくうと、手が塞がっている彼のために口へと運んであげた。


「 どう?」


「 いつもより数倍おいしく感じます。」


 外で食べるとって意味かしら?

 そうね! 確かに澄み渡った青空の下で食べるのは、開放感があってそれだけで嬉しい。食べ歩きって何でこんなに楽しいの?


 アイス屋さんには他にも色んな味があった。さすがにお腹がはち切れそうだったから、デザートは二人で半分こにすることにした。


 ギルが「あーん」と口を開けるのが面白くて、それを合図に何度もアイスを運んであげた。それからお互い温かい飲み物でホッと一息つくと、目の前は沢山の観光客で賑わっていた。


『暴れん坊』は想像以上に楽しい所だった!

 ちゃんと落ち着いて店内で食べれるお店もあるけど、どのお店も小窓や屋台みたいになっていて、テイクアウトできるお店が多かった。


「 しかし全てご馳走になってしまって、本当に良かったのでしょうか?」


 すまなさそうにするギルに私はニンマリと笑顔を向けた。


 実は昨日ダンジョンで倒した魔物のドロップ品を換金してもらい、ようやく私も現金を持つことができたのだ。

 だけどこの世界のお金の価値がよく分からない。それで今日色んなお店で実際に使うことにより、自分がどれだけの現金を所有しているか把握することができた。


「 こちらこそ、色々教えてくれてありがとね!」


 彼は勇者の護衛ということで、許可を取ってからここに来ていれば、王宮に支払いをつけることができる。だけど今回は無許可だからちょうど良かった。


 ギルがさっき買った小さい紙袋を開けるとふんわり甘い香りが漂う。これは最近城下町で人気のお菓子らしい。サクサクのパイみたいな細長い生地に、色んな味がコーティングされて売られていて、私達は一番人気のキャラメル味を選んだ。


 ギルが一本取り出し私に差し出したので、私はそのままそれを口で受け取った。だって飲み物が熱くて両手で持っているのだ、何でこれをギルは片手で持てるのかな?


 リスみたいにそれをポリポリと食べると、ギルは無言でもう一本取り出して、また私の口に入れる。おいしかったから私もそのままポリポリ食べると、ギルはまた紙袋からお菓子を取り出して差し出す。


「 ちょっと! 動物に餌をあげるみたいに次々に入れないでよ!」


 そう憤慨すると、ギルは「 バレたかッ!! 」と破顔して笑い今度は自分で食べ初めた。


「 おっ!コレもうまいなッ!」


 色んなお店を回っているうちに、彼は次第に打ち解けて、最初の堅い口調ではなくなっていた。


「 でも城下町にこんな所があるのね〜!もっと行きたいお店もあったけど、流石にもう食べられないわ!」


「 楽しんで貰えて良かったです。…… ちなみに他にどの店に行きたかったですか?」


 そうねぇ ……と、いくつかお店を答えるとギルはそれを聞いて顔を曇らせた。そしてしきりに他に目を引いたお店は無かったかと尋ねてくる。


「 そういえば、この一画に不似合いなお店が一軒だけあったわね?」


「 不似合いな店?」


「 えぇ、あの角の所に蟹料理のお店があるんだもの、びっくりしちゃった。」


 本当に何気にそう答えただけだけど、ギルはそれを聞いて弾かれたように立ち上がり声を荒げた。


「 なぜあの店が不似合いなのですッ!?」


「 ギ、ギル?? 」


「 セナ様まであの店を馬鹿にするのですかッ!? 」


 馬鹿にする? それはどういう意味??


 さっきまで楽しそうに笑っていた彼が、なぜ急に怒り出したのか、私はその理由がさっぱり分からなくて戸惑うばかりだった。

最後まで読んでいただき

ありがとうございます!


宜しければ、ブクマや評価などしていただけると

嬉しいです!

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