9話:第一線
幸斗は言われた学園の近くの集合場所に行く
(こんなところに何があるんだ…)
目の前には巨大な廃墟があり、ツタが生い茂っている
(入ればいいのか?)
ドアをゆっくりと動かすと、やはり鍵がかかっていないようで中の様子が見える
耳をすませると、上から物が沢山ぶつかる音が聞こえる
人の気配があるためバレないように階段を登る
音の鳴っていた高さまで行くと、黒色の球体が飛んでくる
(ヤバっ…!)
とっさに伏せるとその球体は何度も壁を跳ね返る
(ひぃぃ、なんだよこれ!)
幸斗はすぐさま発射元を確認する
飛んできた一室を覗くと、たくさんの男が壁にもたれかかっており、たった一人だけが見下ろすようにそこに立っている
「誰か見ているな?」
ゆっくりと立っている男は足音も出していないにも関わらずこちらに気づく
「どうしてわかった」
幸斗はゆっくりと出てくる
「わぉ、まだちっちゃい子どもじゃないか」
男は幸斗のコンプレックスを刺激する
「いや、見た目で判断するのは良くないな、見られた以上は戦わなければならない」
男は先程の黒い球体を手元に大量に用意する
「やっぱりこいつだったか!」
球体は部屋の中を縦横無尽に跳ね返る
弾の密度が高く、小さいサイズの幸斗も避けられずに球体の一つに当たる
「わっ!」
途端に幸斗の身体が跳ね上がり、そのまま連鎖するように別の弾に当たり、壁に叩きつけられる
「なるほど、ここに倒れ込んでいる人はみんなこれにやられたのか」
「御名答、この球体自体に攻撃力はなくても壁に叩きつけられれば十分な威力になる」
(この超常的な力は自分と同じタイプか?)
男はまた先ほどと同じ構えをする
「さぁ!いつまで耐えられるかな!」
次の一撃が来る前に幸斗は時間を止める
三年もの時間が経過していればいくらなんでも体に染み付いてくる
(短くても止め方は完璧に覚えている)
直接的に攻撃を受けないように、狙い先から離れる
案の定攻撃はたくさんの弾が自分のいたところまで一直線に飛んでくる
しかし、時間停止時間が短いため反射する弾は完全には避けきれない
「素早い動きだね、まさに小賢しい動きといったところか」
「そりゃどうも」
次の構えがされると、また幸斗は自分のいたところから離れる
だが、黒い球体は一直線の動きはせずに、花火のように散らされる
先程より多くの球体が幸斗の身体を弾く
(対応が早い…!)
男はまた次の発射の構えをする
(今!)
幸斗は次は攻撃のために時間を止める
動きが戻ると男の頭に幸斗の足がある
「ぐへっ」
少々鈍い音がして、男が自分と同じように吹き飛んでいく
次に、残っていた球体が反射する
(さすがに避けられないか…)
結局幸斗も吹き飛んでしまい、それぞれが空間の反対側で倒れ込む
「お前はどうしてこんなことをしている」
中断したと思い相手に話しかける
「ただただ自分に粋がっていたヤンキーどもに仕返しをしただけだよ」
周りの男達を見ると、皆いかつい格好をしていて息も絶え絶えになっている
(さすがに命にはかかわらないだろうけど…)
「じゃあ私もやることをやらないとね」
陸空はビルの屋上にいる男の後ろに現れる
「さぁ、お前ら全部燃えろぉ!」
男の視線の先には燃え上がっているもう一つのビルがいる
「誰だ!」
陸空が床に落ちた音で男は気づく
すぐさま陸空に火球が飛んでくる
Roadを介して空へと打ち出す
「すごいよ!まさか君にも特別な力があるとは!」
男は興奮状態で言う
「だけど、今の俺はものすごく腹が立っている…」
男は陸空を掴む
痛みが来るより先に、陸空の意識が遠のく
「それで自分のトラウマに苦しんでろ」
しかし、陸空の意識の中には何も映らない
「何もないじゃないか」
陸空の痛みは現実に戻り、男に蹴りを入れる
「ぐっ」
手が離れる
「私には私の記憶がない…トラウマもないさ」
「やっぱ腹が立つな!」
Roadで宙に飛ばす
陸空がRoadを閉じる前に火球が飛んでくる
「悪あがきだね」
ビルの下から物音がした
陸空はこちらに登ってきた光を自分の中に取り込む
傷の一つもなくなった男のもとに警察と救急車がやってくる
陸空はその場から消える
「あんたはこの力を持つべきではない人間だったよ」
男のもとには黒い砂のようなものだけが残っていた
「いつからそんな力を?」
「三年くらい前かな、中学の時に手に入れて当時ムカついたやつをボコボコにしてやったよ」
男は笑いながら言う
「高校に入ってまた楽しめると思ったのに、まさか他にも特別な力を持っているやつがいるとはね」
「お互い、自分だけの特別じゃないみたいだね」
二人が息を整え終える
「さぁ、第二ラウンドをするかい?」
幸斗が挑発する
「いや、ここは私としては引き下がろうかな、警察が来る音がする」
男は近くの扉から部屋を抜ける
「待て!」
逃がすわけにもいかないので幸斗もその後ろについていく
音の鳴っている階段を登り頂上につく
「室内のほうが僕の能力が強いと思ってるでしょ」
言葉の後に男は黒い球体を出す
それをまた自分にぶつけるのかと思うと、彼自身の足元に飛ばす
すると男の体は飛び上がり、別のビルに逃げていく
「舞様、どうしたのですか?」
呼び出された綾乃は要件を尋ねる
「あのね、あの男の子、幸斗くんは私のお気に入りなの」
「は、はい…」
「だから、私以上に距離を近くしたり触れたりなんかしたら許さないからね」
舞は突然に脅しをかける
「わかりました…」
綾乃が住むのも幸斗や舞が住んでいる朱音神社がある朱音島である
そのため、舞の権力は島全体に及んでおり、特に元々は神社関係者であった綾乃は目の敵にされており、従うように強要される
「当然よねぇ、私のほうが偉いんだもの」




