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終響のポリフォニー  作者: 更待レリア
1章(春)
10/10

10話:音楽の力

男が飛んでいった先を驚異的な身体能力で追いかける

「なんて跳躍力だ」

幸斗は時間を止めながら距離を詰めようとするが、停止時間が短いためほとんど距離は縮まらない

いつの間にか、ビル群を抜けて高速道路の下に行く

変わらず相手がどこに向かって逃げているかもわからない

(これじゃあ、いつまでも終わらない…)

これだけ走っていれば、やはり体力を消耗してしまうようで少しずつ距離が離れているように感じる



高速道路の下にある大歩道に出る

ここから先は縦長のまた別のトンネルのようなルートに入らなければならない

(もしかして、囲んで攻撃するつもりか?)

幸斗はトンネルの壁を使った反射攻撃を警戒しながら石の壁の道に入っていく

上や隣からは車の音が聞こえているが、もはやノイズとして幸斗の意識からは遮断されている

(きた!)

いよいよ相手側もしびれを切らしたのか黒球をジャンプ台で先に行くのではなく自分への攻撃に使ってくる

時間停止だけは変わらずクールが開けたらすぐに使っている

止めているうちに一個の黒球を捕捉する

その弾を踏みつける

(やっぱりか!)

幸斗の身体は男に向かって飛んでいく

「とどけぇ!」



次のページに行くと、光を集めるというページに辿り着く

「光を手に入れたものは一度だけ死んでももとに戻る」

まるでゲームのような残基性を感じる

より超常的なものを求め先に読み進む

「その時に光の玉を放ち、近くの光を持つ者に吸い込まれる」

(なら、収集性があるのか?)

「光を失った者は記憶をなくす」

命が一つ増えたとしても、結局は死んだことと大差ないことが分かる



幸斗の手は男の肩に向かっていた

だが、その長さは足りずに床へと落ちていく

(クソっ!)

落ちていく瞬間までも、幸斗は手を伸ばし続ける

まるで水を求め這いつくばっている男が目の前にオアシスを見つけたときのように



いつの間にか伸ばしている手の中には黒い球体があった

男が飛ばしたものかとも思ったが、予備動作もなければ、利用されることを認識している状態で使うわけがない

幸斗はその球体を握って跳ねようとするが、身体は浮き上がらない

それどころか球体は謎の壁によって握りしめることさえできない

自分の手元に葛藤している間に、幸斗の身体は地面に押さえつけられる

「ま、まて…」

痛みから起き上がるのに苦戦している間にも、男は遠ざかっていく

(もっと遠くに届けば…)

幸斗の感情が先にいる男に向かう

瞬間開いたままの手の中にあった黒い球体が飛び出していく

直線上にあった男の体は黒い球体に貫かれる

急速に男の体が修復され、光が産み落とされるときには、幸斗も意識を失っていた



「さてと、色々見えてきたし情報共有といこうか」

幸斗は陸空の声で目を覚ます

「どこから…」

「奏真も驚いているだろうから説明すると、声はバングルから聞こえているよ」

見ても特段の変化は感じられないが、たしかに音だけは黒いバングルから聞こえる

「バングルからは微細な音が出ていて普通の人には聞こえないが、能力を持っている人には聞こえるらしい」

「きっと知っているだろうから聞くが、能力っていうのはこの資料にある光の玉だとか言われるやつか?」

「そうだ、昔の人々はこれが音楽記号に由来しているってことは知らなかったみたいだけどね」

幸斗は質問するよりも先に、心臓を貫いたはずの男のもとへ行く

近づくと、身体からは一滴も出ておらず、呼吸もしていた

「倒したやつを起こしてごらん」

陸空に言われ、幸斗は男の方を叩く

男は目を開くと唸り声を挙げながら身体を起こす

「どなたですか?それにここは…いや、ここは高速道路の道か」

「記憶がある?どういうことだ、資料と違うぞ…」

「どういうことだ?」

幸斗が意味を聞く

「いやな、資料には倒したら記憶がなくなるはずなんだ、今の声を聞けばたぶん場所の記憶がある」

「いいや、ないさ、事実さっきまで戦っていたはずの白斗の記憶がない」

幸斗と奏真の疑問を陸空がまとめ上げる

「これは資料に載っていないが、記憶がなくなるのは能力を持っていた間の記憶だけだ、おそらく光の玉に見える能力は脳に干渉して能力を発現させている」

「脳に干渉している以上は、なくなれば脳に何らかの影響があるのか」

「正直俺としては全部教えてもらったほうがありがたいけどな」

「それは嫌だよ、面白くないもん」

陸空は断る

「もう一つだ、能力を失うときには僕らが見たような光の球体が見えるはずだが幸斗は見たか?」

「ごめん、気を失っていて見れなかった」

「大丈夫だ、能力は私が使える」

陸空が呟くと、突然幸斗の頭上にRoadが現れ、その中から黒い球体が出てくる

その弾は跳ね返ると男に当たり、また吹き飛ばされて気絶する

「どうしてお前が使える!」

「もしかして、光の行き先が陸空だったりしたのか?」

「いいや、ちゃんと光は白斗に入ったよ、これはバングル越しに共有されてる、このバングルを作った奏真も使えるはずだ」

幸斗は先程のような球体が出るように念じると、球体が出てきて跳ね返った

「たしかに使える…!」

「だろ?それとさっき倒すのに使った弾は出せるか?」

「やってみる…」

幸斗は先程の正体不明の球体を出そうと念じる

すると、くの字の枠の中に同じような黒い球体が現れる

「これは…なんだ?」

「フェルマータ」

奏真は特徴からある一つの記号を挙げる

「でもこんな形は見たことがないよ」

「これは少し短いフェルマータだね、珍しいから見たことがないんだと思う」

「そ、そうなんだね?」

幸斗は知っているのに知らない姿に戸惑う

「大丈夫だ、ここからもっと白斗は強くなる、このままでいい」

話が落ち着いてゆっくりとしていると、また男が起きそうになる

(やば…!)

幸斗は飛び上がると、時間を止めて逃げていく

「聴覚強化とバングルはうまく噛み合っているようだね」

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