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終響のポリフォニー  作者: 更待レリア
1章(春)
6/10

6話:記憶と現実

幸斗は道場での練習の後に神社に呼び出される

道場は神社の直ぐ側にあるため時間はかからない

鳥居をくぐると、知らない男性が自分を迎える

言われた通りその後ろについていくと、神社に渡り廊下でつながった施設に向かっている

その中は宿のように複数の部屋に分かれている

「当面の間はこちらにお住みください」

唐突に家から離される

別に家には基本的に自分しかいないため大きな問題はない

自分の家とは比べ物にならない部屋が開く

中には一人の女性がいる

「舞お姉ちゃん!」

その人は剣舞の時に見かけていた女性である

自分の姿を見てこちらに駆け寄ってくる

「昔あったときと変わらずちっちゃいねぇ~」

舞は抱きつきながら、幸斗の頭を撫でる

「舞お姉ちゃ~ん、身長低いの気にしてるんだよ?」

「あららぁ、ごめんね?でも会えて嬉しいなぁ」

舞の大きな胸部が幸斗の顔を包み込み、幸斗の顔は綻んでいる

しばらく抱きついた後、舞は体を離す

「会えてよかったわぁ」

明るく高い声で喜ばれる

「でもごめんねぇ、あんまり長くこっちにいられないんだ、することがあるからね」

すぐに舞は部屋を離れようとする

「うん…」

幸斗は物足りなそうな顔をする

「大丈夫だよぉ、たくさんこっちに来てあげるからねぇ」

舞は幸斗の頬にキスをする

幸斗は呆気にとられる

「う、うん!」

元気に返事をすると、舞はそそくさと部屋を出る

幸斗はそのまましばらくその場に立っていた



「どうでした?」

渡り廊下には先ほどの男がいる

「ファーストコンタクトとしては最高ね、これでこっちの思いのままに動いてくれると思うわ」

むしろ満たされないほうがのめり込んでくれるだろうと、わざと会話を切っていた

「まだ、気が早いのでは?」

慎重にやらなければならないと舞を戒める

「大丈夫よ、ここからもっと囲んでいくから…」

男に言われても舞は邪悪な笑みを浮かべる



「どうだったかい?憧れの人との再会は」

後ろから陸空の声が聞こえる

「うわぁ!」

幸斗は陸空の物音には全く気づかなかったようだ

「お前がここまで驚くなんて、よほど心が奪われていたみたいだ」

幸斗は図星をつかれて黙り込む

「会ってみてどうだった?」

数年ぶりの再会の感想を聞いてくる

「やっぱり、かわいいし、声も良いし、何より見た目のお姉さん感がいいね」

顔の穏やかさと胸の大きさがあるのだろう

「なるほど、君の好みがわかりやすくて良い説明だね」

陸空はからかうつもりで言う

「だめだった?」

しかし全く幸斗にはからかいに聞こえなかったようだ

「いや?ただ、見た目に囚われすぎないようにね」

陸空も舞が話していた男のように忠告する

「それは…そうだね…ちょっと明るすぎるのは俺の理想のお姉さんではないかな」

見た目と声のズレ

そして動きの激しさ

少しの違いに見えるが、それでも幸斗には完璧ではないようだ

完璧でなかったら全くだめというわけではない

あくまでその少し感じた差にすぎない

「まぁ、それはそうかもだが、それだけじゃない」

それ以上を言おうとして陸空はやめる

おそらく幸斗は完全に夢中になっているのだろう

「これ以上は君が探すべきことだ、きっと彼女も君が守りたい人なんだろう?」

守る

その意志は祖父を目の前で失ったことにある

もちろん祖父の方が何倍も自分より強い

それでも何かの拍子に助かった命なのではないかと思ってしまう

「もちろんだよ」

幸斗は全てを守りたい

目の前でたくさんの人が死んだ

もう自らの弱さで死ぬ人、傷つく人をみたくない

その思いが幸斗をそうさせる

「そうか…自分の限界は知っておきなよ、じゃあな」

守るには力がいる

だがその力にも限界がある

一人で同時に遠方にいる二人を守ることはできないように

その時には仲間に頼れという意味なのだろう

陸空はRoadを作るとその中に消えていく

「限界か…」

幸斗は静かに手を開く

陸空の伝えたい意味以上に

自分の限界が早すぎる

限界が弱すぎると思う

中にある玉と一本の細い棒を見てため息をつく

「これが限界なんてショボすぎるよ…」



奏真は夜に自室で筋トレをしている

昔からずっと体を鍛えている

力がなければ守れないものがあるからだ

「コンコン」

ノック音がすると父が入ってくる

「鍛えてるとこ悪いけど明日は徳嶺さんの家に行くんだからちゃんと寝ておいてよ」

筋トレをしていることは父もよく知っていて、夜中にしていることも多々あるため、前もって早く寝るように言われる

「わかったよ…」

奏真が面倒くさそうな表情をしながら返答すると部屋から出ていく



ある神社の下に、暗い空間がある

空間の中にはたくさんのうめき声が響き渡っている

沢山の牢屋のようなものがあり、衛生環境も良いものとは言えない

その中にいる少女は声を少しも発さないまま、きれいに輝くはずの緑色の目は虚ろになっている

鎖に繋げられている少女の前で男は言う

「ようやく神の奴隷としての自覚が出ましたか…ですがさすがの賢さです、たくさんの厄をただただ逆らわずに受け入れているのですから…」

満足げな声と音のない声

闇を持つ男が一方的に金髪の少女を見下ろす

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