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終響のポリフォニー  作者: 更待レリア
1章(春)
3/10

3話:三

幸斗は霧がかった森の中を歩く

起こったことを警察に通報したが、いかんせん死体の数が多く、調査が終わって今日ようやく祖父の家に入れることになった

しかし、祖父の家の階段を登っていると全く別の階段を登っており、知らない小道にいた

引き返そうとも思ったが、振り向いても知らない階段しか残っていない

なんとか道にある柵を頼りに進むが、柵が一つでも壊れていればその先にある崖に落ちてしまう

いよいよ道が開けると小さな駅が現れた

「ここは…」

駅には改札もなく、駅員もいない

使われているのかもわからない駅の踏切を渡ると、石の鳥居が白から現れる

その先も見ようと足を進めていると、突然後ろから物音がする

「まさか今の音で気づかれるとは」

幸斗は音を聞いて少し次の一歩が遅れ、相手にもこちらが気づいたことを認識された

敵意を持った者なのかわからず、幸斗は恐る恐る振り向く

目の先には明らかに年上の男の人がいる

「あなたは…」

「僕は深墨奏真、ここの神社の管理をしている人間だよ、白石幸斗くん」

話し方からして敵意がないことがわかり、幸斗は胸を撫で下ろす

「あなたが俺をここにつれてきたんですか?」

いつの間にか名前を知られており、幸斗は疑問を投げかける

奏真と名乗った男は少し悩んだ顔をする

「残念ながらそれは僕じゃない」

「私だよ」

意識を向けていた方向とは違う方向から声が聞こえる

焦って振り返ると、目の前にまた別の男の顔が現れる

その男の足が床につくと、幸斗は逃げるように距離を離す

「なるほど、やはりそれだけ警戒されているのか」

幸斗が離した距離以上はその男も詰めてこず、攻撃の意思もない

「彼がおそらく君をここに連れてきた来道陸空だよ」

「どうも白石幸斗くん、呼びにくいから白斗でいいかい?」

唐突に現れた男に唐突に略称で呼ばれる

「待って、どうして、そしてどうやってここにつれてきたかを説明して」

そのまま相手のペースにされても困るので、とにかく質問を投げかける

「いいよ、とはいっても君に私のテレポート能力を使っただけなんだよね」

「いや、それがまずわからん、能力?」

「能力については君もよくわかっているはずだよ、君にもなにか特別な力があるはずさ」

奏真に自分の中に潜むなにかの告白を迫られる

「言わなくても私は分かっている、私は君たちの未来が見えるのだから」

自分が語るより先に陸空が語り始める

「でも、それだとテレポートはどうやったのさ」

奏真は陸空の発言に即応する

「まぁ、待て待て、僕も彼がなぜ僕のところに訪ねたのかまでしっかりと聞きたい、まずは彼の語りが終わるまで待とう」

奏真に宥められ、幸斗も大人しくなる

「あぁ、ありがとう、そう、私は単に未来が見えるだけではない、テレポートもすることができるのだがその根拠は何なのか」

それが事実であれば反則のような能力だが、聞いている二人は大して驚いていない

「それは、音楽記号、それが未来を見た自分の結論」

幸斗にとっては馴染みがないようだが、奏真は納得したような表情をする

「なるほど“Coda”か」

「さすがに察しが良いね」

幸斗の知らない言葉が飛び込んでいて呆然としてると、気づいた奏真が説明する

「簡単に言えば音楽を演奏する時に楽譜に書いてある記号だよ、君の年でもフォルテくらいは知ってるでしょ?」

「まぁ、それなら知ってる」

「それと同じようなものだよ」

「ならその“Coda”とかは記号って呼ぼうよ、音楽記号って呼び方は長いからさ…」

「確かにその方がいいかもしれないね」

三人での合意がある

疑問が一つ解決された中、新たな疑問が浮かぶ

「でもどうして音楽記号がこの能力の元なんだ?」

「それは過去のことだ、過去のことは私にはわからない、自分のことでさえも…」

最後の言い方は引っかかったが、おおよそ何が言いたいかは理解できた

「じゃあその能力の中に、テレポートがあって、俺を連れてきたと」

「そうだね、じゃあこれで君のことを知っていたのも納得できた?」

急速に情報がねじ込まれるが、なんとか頭の中に取り入れる

「で、どうして僕を?僕の能力なんて…」

「一瞬物の動きを止められるだけ、まぁ一見弱いだろうね」

陸空は幸斗が言わんとすることを先読みする

「でも、君は今よりずっと強くなる、それは私自身が保証しよう、そしてそうであるなら私は君と協力関係を築きたい」

「…わかった、たぶん断れないこともわかってるんだろうし」

「理解してくれて助かるよ」

「じゃあ、なんで僕のところへ彼を呼んだんだい?」

今度は奏真が質問をする番になる

「それは、君も能力者で、今この世界で起こっていることを紐解き、解決するために必要な人物だからさ」

幸斗の注目も優しげな表情をしている奏真に向かう

「君はこの事象の原因となるものを見て、中核となる能力を持っている、何かを吸収することができるようだが、それ以上は今認知できる限りの未来ではわからない」

「そっか…」

おもむろに、奏真は手元から二つの物体を出現させる

それは、腕輪の形をしていて、それぞれ金色と黒色をしている

「自分の能力が何なのか、これが一体何なのかはわからない、でもこれは君たちに渡しておくべきだと思っている」

「それで正しいと思うよ、私にもそのバングルをつけている未来が見えている、ということは必要になるものなのだろう」

一方幸斗は、黒光りしているバングルの美しさに目を奪われている

「幸斗はこっちに惹かれてるんだね、ならこれは君にあげるよ」

奏真が幸斗の様子を察知してバングルを渡す

「じゃあ、私はこっちだね」

陸空も金色のバングルを奏真の手から取る

「これで協力関係成立ってことで」

奏真が音頭を取る

「私はこれから行かなければならない場所がある、白斗、君は家の前に転送しておいてあげよう」

陸空は楕円の空間を作り出す

「なんだいこれ?」

「私の能力で場所同士をつなげる能力、名前は…」

「場所同士とつなげるなら道だね!」

幸斗が言う

「じゃあRoadとでも名付けようか」

陸空は名前を決めると幸斗をRoadに押し込む

「待って、次はどうやって会うのさ」

「大丈夫、またいつかの未来で会えるさ」

幸斗が消えると、陸空も消える

消えていった二人を見て奏真がつぶやく

「不思議な二人だ、また、ここでの話ができるみたいだね」

奏真は人のいなくなった神社の本殿を見る

「にしても、今日は湿度が高い、雨でも降りそうだね」

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