表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
迷宮狂の詩  作者: 浅居りむ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/4

『符術師のFish story,』


『C級探索者だけど、俺は普通に探索したいのに最強の美人聖女の幼馴染が毎回ダンジョンに付いてきて俺をキャリーしようとするので、あっという間に最深部に行ってしまう件について』

作者:Lie


【毎日16時更新】

ここは剣と魔法の世界、ルナティ。

ひょんなことから前世では冴えない会社員のままダンプに潰され死んだ俺は神様との契約でこの世界に降り立ち、最強最高のスーパー剣士として仲間達と日々冒険に勤しむのであった。


……なんて、そんな都合のいい話があるわけもなく。

前世の記憶を持ったまま貰ったギフトは『手から綿あめが無限に出る』だった。

お詫びにと能力値を上げてくれたのはいいけれど、ルナティで実力を隠し綿あめ屋さんとして第二のスローライフを送りたい俺ことカイリだった。

だけども、幼馴染の聖女様とパーティメンバーがそれを許してくれない。


「カイリ!はやくつよくなって、やくめでしょ」

「カイリ君、ほらもっと戦って真の力を解き放つのです」

「フフ…カイリよ、手加減だけではつまらぬ。さらなる成長をもって、もっと私を震えさせておくれ」


果たしてカイリの望むスローライフは叶うのか?

ドキドキハラハラのダンジョン活劇、ここに開幕――!




【よむときのおやくそく】

本編はフィクションです

この小説を読むときは、心をおおらかにしてお読み下さい


タグ:

ダンジョン、最強、幼馴染、アンチヘイト、ハーレム、チート、転生、GL、BL、NL、男の娘、残酷描写あり、性描写あり、この話はフィクションです、AIはつかってません、無限スクロール






<new page>



【一章一話・覚醒】




《ダンジョン》


それは冒険者が憧れる迷宮


そこで俺はさらなる高みを目指すために


挑み続けるつもりだ




だけど…



「おはよー!カイリ!」


ガチャ



また今日も


幼馴染の聖女サマが俺を甘やかしにきた







(第二話につづく→)


作者から一言:

今日から毎日更新です!よろしくおねがいします!

この話がいいねと思ったら、評価して下さい!




 ◆ ◆ ◆




【第一章第二話・目覚めの挨拶】




「ほらー、カイリ!」



俺の部屋に入って、勝手にベッドに飛び乗るのは幼馴染のリィザだ。

毎朝丁寧に纏められた金の髪は朝日を受けてキラキラしている。


まるでシルクのような細かく白い肌に、蒼い黝簾石(タンザナイト)のような瞳を潤ませて、俺を見てる。

まるで絵画から出てきたかのような小さな天使、そのもので道行く人々は彼女の姿を見て振り返る。


それもそのはず。彼女は《聖女》として様々な人から崇められ、愛されている。


だけど俺は知っていた。

この優しい聖女サマの顔に隠れた、本当の恐ろしさを



――それは



「ほらおきて、カイリ!」

「うーん、あと5分」


「駄目よ、そうやってまた寝るんだから」


聖女リィザ様の恐ろしさ、それは…

幼馴染の俺に対する異常なまでの過保護だった。



「あーもう!分かったよ!」


俺はしぶしぶベッドから体を起こした。



「重い」


「せっかく起こしてあげたのに。カイリったらそれがレディに対する言葉?」


「あーはいはい、ありがとありがと」


そういって俺はリィザの金の髪を優しく撫でる。


どういうわけか、彼女は顔を赤くしてだまっているだけだった。




まったく、女の子は良く分からない。




起きた俺は窓を明け、朝の空気を力いっぱいに吸い込む。



ルナティの王都・クレナルヴィア。


今日もいい天気だ。


「早く下に降りて、朝ごはんを食べましょ。おばさまが待ってるわよ」


そう言ってリィザは笑った。


どうやら今回の探索も、彼女抜きには行けなさそうだ。


そんな予感がした。






(第三話につづく→)


作者から一言:

カイリと幼馴染の聖女リィザ

二人の冒険に待つものは…!明日も更新です!

この話がいいねと思ったら、評価をお願いします!




 ◆ ◆ ◆




 某月某日の居酒屋・神在月。

 夜の8時を過ぎた頃。

 カウンター席の端で真剣な面持ちで、座っている青年の姿があった。


「どうした、李」

「あ、シゲさん」

 今年19歳になる符術師(エンチャンター)の李が顔を上げて振り向くと、新山と東出が立っていた。彼らは挨拶を終えた後、李を挟む形でカウンターへと腰掛けた。一番賑わう時間なので、2人は注文を取りに来るまでゆっくりと待つ。

「小説を書いてるんだけど、難しいね」

「李お前、そんなもの書いてたのか」

「暇潰しにね。あわよくば、書籍化してコミカライズやアニメにでもなれば儲かるかなって」

「ほんま自分、欲望に正直やな」

 親子ほど歳の空いた相手にも関わらず、堂々と言ってのける李を見て2人の中年は顔を見合わせた。

「賞に応募とかするのか?」

「あー、少し違うかな」

 李はそう言って、手に持っていたタブレットをカウンターの上へと立てかけた。彼の左右に座る新山と東出は少し背中を曲げて目を細め、李の操作する液晶画面へと目を向ける。


「『SSをかけば』って、投稿サイトに載せてる」

「へぇ、タイトルは?」

「『C級探索者だけど、俺は普通に探索したいのに最強の美人聖女の幼馴染が毎回ダンジョンに付いてきて俺をキャリーしようとするので、あっという間に最深部に行ってしまう件について』って話」

「なげェよ」

「略して『Cダン』」

「略すなら最初から短くしとけ」

「仕方ないでしょ、流行りなんだし」

 李の言葉に素早い突っ込みを返したのは、新山の方だった。東出は黙ってタブレットから目を離し、自分のスマートフォンから小説を読み始めていた。

「李これ、1話がえらい短いやんけ」

「web小説だし、1話1000文字以下に収めてるよ」

「なんやそれ」

「僕に言われても知らないよ、全投稿の中央値が1話1000~2000文字なんだから」

 あっさりと李は、中年達の攻撃を躱してゆく。元々が計算高い青年なので計算済みである。対する大人達は納得がいかない、といった苦い表情を浮かべていた。


「なぁ、今3話目の朝飯食うトコ終わったけどよ。コイツらいつ探索に行くんだ?」

「あと準備に3話で、クエスト受注説明に2話で、ご飯描写をいれて計6話」

「アホか、多いわ」

「だって話数細かくしないと、毎日更新だしネタが持たないよ」

「もっと頭捻らんかい。コボちゃんもサザエさんも、毎日起承転結オチつけて連載しとったんやぞ」

「……コボちゃん?」

 不思議そうな顔をする李を見て「まぁええわ」と、東出が呆れたように息をついた。20前後も歳が離れた相手では、言葉や文化は時折通じない。最後に東出は吐き捨てるように「こんなん読んで何がおもろいねん」と、反撃を繰り出した。


「オチが分かる方が、読者って安心するみたいだよ」

「にしても、今どきの流行りが分からんわ……タイトルに捻りもあらへんし、風情が無さ過ぎやろ。即抜き目的のAVタイトルと変わらんで」

「大人ってさ、意味の分からないところで拘るよね」

「ワシらからしたら、こんな舐め腐ったものがオモロイいうとる奴らの方が意味分からんで」


 不貞腐れる李と、不機嫌さを隠そうとしない東出。険悪とまではいかないが、空気は良いともいえない。そんな2人の間に割って入ったのは、注文を取りに来た大将の低い声だった。

「まァそういうなよ、カンちゃん」

 2合瓶とビール瓶、コップを2つ。それぞれを手に持った大将が、3人の前に現れる。

「俺はCダン毎日読んでるが、おもしれぇぞ」

「そう? 大将有難う」

 大将の言葉に李は顔を輝かせ、新山と東出は驚いた。だが大将は「翡翠から勧められた」と、サラリと告げる。今手伝いに回っている2番目の娘の名前を口にして告げる大将の顔には、親バカ特有の笑みが浮かんでいた。

「仕込みの合間にサクッと読めていいし、なにより……」

 青年の両端に陣取るそれぞれに、いつも注文している酒を大将は置く。

「頭をからっぽにして読むのも、大切だと思うぞ」

「あらかじめストックしたり、毎日更新は難しいけどね」

「ま、継続は大事やな」

 コップにビールを注ぎながらそう告げる東出の声からは、棘はすっかりと落ちていた。李も素直に「うん」と頷き、自分の前に置かれた烏龍茶に口を付ける。

「更新やめたら、すぐにランキング抜かされるもん」

「なんやそら、めんどくさ……」

「やっぱり読んで貰いたいから、みんな必死なんだよ」



「生き延びるのが大変な世界やねんなぁ」

「なんか東出さんや、シゲさんがそれを言うと……軽いヘイトに思える」

 最後に呟いた李の声は「大将たこ酢」「ワシも」「あいよ」という、両隣のベテラン探索者の声と大将の返事によって掻き消される。

 それは誰にも聞こえない独り言として、神在月の喧騒の中にそっと落ちた。




 ◇ ◇ ◇




「しかし、剣と魔法の世界ねぇ……」

 暫く2人は李を挟んで、今度一緒に向かう丸亀競艇ナイターの話を熱心に交わしていた。

 真ん中の李はさして気にせず、音楽を聞きながらタブレットに小説を入力し続けていた。そんな中で翡翠が持ってきた小鉢を受け取った後に、新山がふと先の話題を口にする。


「ガキの時は、それなりに憧れてたけどよ」

「せやなぁ」

「使えるようになったら、なったでなぁ」

「せやなぁ……」

「でも儲かるんでしょ? 探索者」

「そら命賭けてんねんから、命に見合うモノ貰わんと割に合わんで」

 新山の言葉には全く同じ調子で返していた東出だったが、李からの質問には真摯に返す。一方の新山は、湿度でわずかに大きく浮いたコップの結露を親指でなぞっていた。彼は半分乾いた笑いを続けて漏らした。


「しかし……こんなに流行ってるんだな、ダンジョンモノって。もっとこう、リアルなのはねぇのか?」

「リアル?」

「シゲやんがいうとるのは、もっとお硬い文章のヤツやろ」

「おう、どうせなら池波正太郎系みたいなのが読みてぇ」

「そのいけなみ? って人は知らないけど……ランキングからどんどん、下の方を掘っていったら地味なのはあるんじゃない?」

 李はもう一度タブレットを立てかけ、先程の『SSをかけば』を表示させた。

 彼の言葉通り、ランキングにはかなりの数の小説がずらりと並んでいた。新山は老眼鏡を掛けて真剣にランキングの順位を下に追ってゆく。数多の小説がそこにはあった。だが更新日が数年前や、途中で止まってるものが殆んどだ。探し出すとキリがないと悟った新山は、試しにと250位の『迷宮に咲く華(毎週更新)』というタイトルをタコだらけのゴツゴツした指でタップする。

 真剣に読み始めた新山の雰囲気を察知した東出も身を乗り出すので、真ん中に座っていた李は席を立ち、彼と場所を交代した。

 東出は自分が頼んだビール瓶と残りが入ったコップ、後は胡瓜と蛸の酢の物が入った小鉢を順番に引き寄せる。小柄な東出も視線だけは素早く動く。大きな体躯の新山と一緒に仲良く背中を丸めて、タブレットにビッシリと表示された文字を追っていた。


「あー、こりゃ潜って逝ってる」

「逝っとるな」

「どうしてわかるの?」

 2人の沈黙は意外と短かった。

 李は新山から返してもらったタブレットを何度かスライドさせ、数話読み終えた2人の言葉を確かめようとする。だがびっしりと詰められたダンジョン物語の話を追っても、確信をもって告げた2人の真意が分からない。不思議そうに首を傾げる若者に、それぞれが説明を始めた。


「お前符術師やから、依頼品とかでダガーの刃や握りが何種類もあるの知っとるやろ?」

「うん」

「コイツはギザギザ刃を2本持っとるやろ、名前付きで」

「そうだね、月斬と陽裂き」

「敵さんの肉を切るとな、端に脂がついてなぁ……どんどん切れ味が落ちるんや。だから、凸凹がついとるって書いとる。あとは刃に溝彫ってる描写な、血抜き溝でもあるんやが。あそこに神経毒やら塗ったりもするんや」

「あ、あの溝ってそうだったの?」

 李が納得して明るい声を上げると「せや」と東出は、深く頷いた。

「ワシらは先行投資でお前みたいなヤツに、強化付与で長持ちするよう探索前に頼むけどな。新人の頃はそんな金あらへんしの」

「途中から剣に乗り換えたんだろうな、コイツ。そういう振り方してるわ。振りや突きも、身体を乗せる塩梅があるんだがなぁ……そこは書いてないし、最後の回がメイズラット(迷宮鼠)戦だからコイツは逝ったと割と分かり易いと思うぞ」

「文章読んでて、そこまで分かるもんなの?」

「ま、なんとなくはな」

「ブロガーとかも更新途切れとるやつおるやろ、ワシら大体は推測できるで」


 驚く李とは反対に、2人はしみじみと頷く。

「さしずめコイツは、リアル描写を求めて入って……実際に作者が逝ったパターンってとこか」

「さっきはすまんかったな、李。少しばかしワシも大人気なかったわ」

 ベテラン探索者は、素直に李へと頭を下げた。若き符術師も「大丈夫、怒ってないから」と、東出に言葉を添える。そして彼が差し出したタブレットを受け取った。

 2人の会話と李が鞄の中にタブレットを直す様子を眺めながら、新山だけは酢とからしが効いたたこ酢をゆっくりと味わう。


「やっぱりフィクションってのは、綺麗なままの方がいいんだろうよ」

「夢は夢のまま、夢見させておいたらええっちゅーことや。リアル求めてコイツみたいに、手ェ出したら終わるからの……」

 新山はしみじみと漏らし、東出はニヤリと笑う。

 ベテランの2人を見て、若き符術師は黙って残りの烏龍茶を勢い良くストローで吸い上げる。


 その昔、30階層過ぎで息絶えたという。父親の面影を飲み仲間であった彼らから見出そうとしたが――どう贔屓目に見ても、意地の悪い2人のさもしい中年にしか見えなかった。




 ◇ ◇ ◇




 その日の夜、深夜2時を回った頃だ。

 場所は香川県段上市の特区にある、集合住宅の1室に住む李はPCでゲームを楽しんでいた。

 手元は激しく動いてはいるが、ヘッドセットを装着しているので部屋では彼がフレンドと小声で話す声とボタンを押す音だけである。

 2人1組でペアを組んで生き残りを賭けるゲームの最中、李は拾ったアサルトライフルで敵を撃ちながらフレンドに話し掛けていた。


「They all had a lot to say, Justin. Your story doesn't feel real, they said.(皆言いたい放題だったよ、ジャスティン。キミの話にはリアルがないってさ)」

『Seriously? It's based on real life though.(マジか、実話なのになあ)』

「How's Holly?(ホリィは?)」

『Same as always. (変わらずだよ)』


 通話相手のフレンドは、ジャスティンという名前だった。

 彼は生まれも育ちもイギリスで、李とは同い年である。ジャスティンの父親は、探索者で現役だ。彼自身も現在、ウェールズダンジョンの探索者として生計を立てている。そんな2人はゲームで偶然知り合って以来、国は違えど特区生まれの2世同士として仲が良くなっていた。

 ジャスティンも李と同様、敵から奪った青竜刀を振り回しながらキャラを走らせ会話を続ける。


『She finds out my exploration schedule from somewhere and wakes me up every time. The busty female knight, the flat-chested thief, the unhinged mage — they're all still going strong, always carrying me.(彼女はどこからか探索日を聞きつけて、僕を起こしにくるし。胸が大きい女騎士も、胸が小さい盗賊も、メンヘラ魔道士も相変わらず元気で、いつも僕をキャリーしてくるよ)』

「Sounds like a harem.(ハーレムだね)」

『I'd really rather party with more rugged men, honestly.(僕はもっと逞しい男性と組みたいんだけどね)』

「I'm going to pretend I didn't hear that.(今のは聞かなかったことにしてあげる)」

『I'd appreciate it.(そうしてくれると有難い)』

「But come on… can't a guy just explore how he wants to?(でもさ……リアルくらい好きにさせてほしいよな)」

『Couldn't agree more.(本当だよなぁ)』


 次々敵を発見しては連携プレイで倒しながらも、2人の若者は笑い合う。

 李のPC画面には、彼が操作する美少女キャラの周りをぐるぐると。

 ふんどし一丁で青竜刀を掲げるマッチョの尻が、時折アップで映し出されていた。






※注釈※

fish story:ほら話。[釣り師の手柄話(大物を釣ったという誇張)から]

(出典:研究社『新英和中辞典』/Weblio英和辞典・和英辞典)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ