30:二代目の躍進
姉ちゃんのホールドから脱出し、逃げるように鍛冶場へと戻ってきた訳だか、姉ちゃんはいつまで僕を子供扱いするんだよ……仮にもそろそろ20になるんだぜ? いい加減1人前の男性として見てもらいたいもんだわ。
「……よしっ、始めますか」
頬をバチンッと叩き、気合いを入れ直す。まずは姉ちゃんの大剣からだな。材料は……アレとコレとソレと……あとはこれ、[夢蝶の翅片]だ。姉ちゃんからも了承は貰ってるし、いい感じに役立ってくれよ。
ベースは[黒鉄]と[雪鋼]でいいから……後は、姉ちゃん要望の刃が見えなくなるオプションだけど、確か注文の品一覧にあったはずなんだよなぁ。えーと……あれ? もうちょい下のページか?? あっ、あったあった、[鏡魔鋼]。見た目はただの綺麗な水晶のようにも見えるけど、魔力を流したらっ…!!
「わっ凄い! どんどん透明になっていくね!!」
「そうそう……って美鈴か」
後ろから美鈴と姉ちゃんが覗き込んできた。ちょっとビックリした……
「ごめん、邪魔しちゃった……?」
「いやいや、大丈夫大丈夫」
「彼方の作業してるとこ見たいなぁって、静かにしてるから」
「まぁ……でも多分見ててもつまんないよ?」
「そんなことないよ、ほらわたし達の事はいいからいいから」
言われるがまま姉ちゃんに背中を押され作業場に戻る。まぁいいか、さて次は……
大型の坩堝に[黒鉄]と[雪鋼]を入れ、高音に熱しておいた炉に突っ込む。『上級鍛造術』の中に『鍛冶炉操作』があるので何となく炉の温度が何度か手に取るように分かる。目標の温度まであと……2分くらいかな?
そんでもって他に使いそうな鉱物は……[氷鉄鉱]くらいか。こいつは最後に使うやつだから[鏡魔鋼]と一緒に先に粉々にしといて、邪魔にならないところに置いといて……柄には魔力を通しやすくする為の[吸魔晶]をベースに軽めの鉱物を何個か混ぜ合わせて…いやでもコストがなぁ……むむむ。
……おっ、きたきた。とりあえず考えるのはあとでいいや。溶けだして混ざりあったのを確認し、形へ一気に流し込む。考えるよりも先に身体が勝手に動くのなんの、さすが『上級鍛造術』だわ。
ここからは時間との勝負っ!! 一気に仕上げに入らねば!! 粉状の[氷鉄鉱]と[鏡魔鋼]を2:8くらいで混ぜ合わせて全体にまぶす! そして、ハンマーで全体を整えていくっ!!! リズム良く尚且つスピーディーに振り下ろし、ベストな感触を確かめる。
この時僕にだけ、というか鍛冶師がハンマーを振る時に赤、青、黄色どれかのエフェクトが出るのだが赤が振るの遅いが柔くなる、青がジャストのタイミングで特に何も起こらない、黄色が遅いが硬くなるといった感じだ。大体1:7:2くらいの配分で出せたらラッキーなのでしっかり狙っていかねば!!
「おぉ……彼方凄い。素人目線でも分かるくらい」
「かっこいい……!!」
もうちょいでっ……いい感じになりそうっ!! とにかく振る。まだまだ振る。どんどん振る。黄青赤青青青黄青青青赤青黄……よしっ、これでっ!!
最後の1回、ッカーン……と気持ちのいい音が鍛冶場に響く。ふぅ〜疲れた疲れた……で、最後は…柄だな。[吸魔晶]と[黒鉄]と[夢蝶の翅片]の加工がメインだからチャチャッとやっちゃいますか。
さっきと同じ様に溶かして固めて叩いて完成。[吸魔晶]は結構高価なので控えめにしたいが、やはり妥協はしたくない。薄く伸ばして[夢蝶の翅片]と共に柄にまきつける。最後に[鏡魔鋼]の粉を魔力を含ませた水に溶かした物を大剣全体に塗り、速攻で乾かす。よしっこれで……
「よしっ……後はお祈り案件っ!!」
武器のランクや性能が決まる瞬間は大体仕上げの時、つまりはこの柄を付ける瞬間だ。僕の見立てでは確実にAは超えていると確信しているが果たして……な、南無三っ!!!
カチリとくっついた音が鳴る。すると大剣全体から白銀の粒子が溢れ出し、大気中の魔力を急速に吸い上げていく。魔力の奔流が部屋全体を包み込み、次第に視界が真っ白な世界へと変わっていく。
光が徐々に淡くなって視界が開けていく。体感3分程だったがその間ずっと魔力を吸い続けていたのか……!?
「さ、さっきの光なんだったの……」
「う〜っ……ま、まだ目がチカチカするよぉ……」
「2人とも大丈夫だった!?」
「うん、なんとか。心配してくれてありがと」
「ウチも大丈夫〜っ」
姉ちゃんも美鈴も無事で何よりだ。ホッ、と胸を撫で下ろし散らかった床を少し掃除する。
あらかた片付け終わり、ようやく台座に置かれた大剣に目を向ける。まだ淡く光り輝いているが、それとは裏腹にまるで持ち主を探しているかのように胎動しているようだ。とりあえず『鑑定』してみないと……
Name:不壊の白大剣
Rank:SS(成長型)
説明:名も無き二代目が創り上げた新たなる時代の大業物。耐久値を消費する事で一定時間武器を透明にし、MPを消費する事で耐久値を回復する。装備者のAGIが10000を超えている場合STR、STM、VITの数値を2倍にし、攻撃時低確率で特殊固有技能〈大氷斬〉を発動する。
「……なにこれ」
ちょっとこれは流石に……というか何だこのスペック!? ここまでピーキーになるとは思ってなかったし、なんならこの武器姉ちゃんにしか扱えない……いや、姉ちゃんの為に存在するような武器じゃないか!?ここまで露骨な事があるだろか……
姉ちゃんに渡そうと柄を持つと、手にズキンッと痛みが走る。……お前が認めた持ち主じゃないと持つことも許さないか……!
「姉ちゃん、コイツのこと持ってみて」
「……? うん」
姉ちゃんが柄を握ると纏っていた淡い光が消え、本来の姿へ戻っていく。持ち主と認めたのか、はたまた元々姉ちゃんの武器だったかのように周りの魔力が大人しくなった。
「……この子、凄いね。わたしに呼応してるみたい」
「うん、なんか元から雨音さんの武器みたいに馴染んでる感じがする。……それにその武器、なんかウチと彼方の事睨んでるみたい。」
「うん、僕もそんな感じする。……この野郎、仮にも僕がお前を作ったんだから……親にする態度じゃないだろ」
姉ちゃんは何度か振ってみたり、試しに透明にしてみたりと色々検証しているっぽい。 白と薄水色が基調のデザインなので振る度に美しい青の斬撃が宙に描かれる。うん、とても綺麗だ。
「彼方、ありがとう。……大好き」
「はいはい……大事に使ってやってくれよ」
その後、姉ちゃんと美鈴は武器の性能を試したいと『塔』へ向かった。ついでに性能の検証がてら何個かアーティファクトを持たせておいたので帰りが非常に楽しみだ。……ま、僕はここからが本番なんだけど。
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さて、これから僕が作るのは『銃』だ。
『ユートピア・エンド』という世界に存在しない全く未知の領域であり、恐らくこれから出てくるであろう異獣やボスの殆どに優位に持っていける武器。理由としては20階層以降のボスは大抵属性を持っており、その属性に有利な属性を付与しないとまぁ戦いが成立しないのなんの……ので、今回作る二丁の銃には属性を付与……というか、要するに純粋な魔力を纏わせた弾丸を撃ち出すだけという『無』属性特化にするつもりだ。
『無』属性は全ての属性に対して攻撃防御共に等倍、そして威力は消費MPを参照、尚且つ常時通常攻撃が〈閃撃〉の銃。少ないMPでアレを連射できるのはかなりロマンがある。さらに黒織姫の〈閃撃〉は範囲が広くて正直威力は程々だったが、今回作る銃は一点集中の予定なので威力もかなり変わってくる……はず。
現状上手くいくか五分五分……いや、3:7くらいか。何度か試作してみたがまじでうんともすんとも言わない産廃が完成したところだ。『鑑定』も反応せず、ただの銃の形をした鉱石の塊といった認識だろうか……何がいけないんだろう?
一応部品の事とかは昨日勉強して頭に突っ込んできたんだけど……もっと精確に作らないといけないのか? それとも……単純に何かが足りないのか??
「……悩んでも駄目だな。一旦練り直すか」
気がつくとそろそろ夕方になりそうだ、とりあえず飯食ってシャワー浴びて着替えるか。
という訳で、汚れも疲れも洗い流してきたのだが……解決法がまるでサッパリ思い浮かばん……手詰まりだ。どうしよ……
……いや、もう思い切ってパッションで乗り切るしか無いのか?? でもこんなレアそうな素材だし、丁寧に使わないと……
「……彼方いる?? 美鈴だけど……」
「ん?あぁ、いるよどうしたの?」
「こ、これっ! 疲れてるかなーって思ったからジュース買ってきたの!! 一緒に飲まない……?」
「えっ、いいの!? ありがとう美鈴!!」
「ううん、いいのいいの。さっ、こっちこっち!!」
巷で流行りの回復ポーションに旬の果物を入れたジュースだそうで、かなり美味かった。そこから少し雑談しつつ、メンテした武器の感想を聞かせてもらった。ちなみに姉ちゃんは疲れてもう寝てしまったそうだ。
「……で、彼方の今作ってるやつってどうなの? 上手くいきそう??」
「いやー……それが、今完全に手詰まりでちょっと困ってるんだよね。なんかいい方法とかない??」
「えっ、ウチに聞くの!?」
「いやいや、もしかしたらなにか閃くかなーって思ってさ。なんでもいいから思い浮かんだことを言葉にして欲しいんだ」
なにか悩んだらとにかく色々話して考えを広げる、僕が割と大事にしていることだ。どんな話でも些細なヒントに繋がるかもしれないし、僕の頭にない事がポロッと出てくるかもしれないしね。
そこから小一時間、とにかく色々話した。武器の事も関係のない他愛もない話をダラダラと話して思考をリセットしていった。
「あっ、もうこんな時間! ウチそろそろ戻るね」
「うん、お疲れ様。あ、近くまで送ろうか?」
「大丈夫大丈夫っ!! 彼方まだやる事あるんでしょ?? だったらそっち優先して!」
「……分かった。今日はありがとう」
「いいえこちらこそっ!! それと1つ思い浮かんだんだけど、もっとファンタジーに考えてもいいと思うの!」
「へっ? ファンタジー??」
「そうっ! せっかく魔法みたいなものがあるんだから無理に形あるものじゃなくてもいいなぁって。彼方が作ってるそれって本当の銃でしょ? ファンタジーな世界観に拳銃で実弾って言うのもなんか変だなぁって思ったの」
「……」
「うーんとだからね……カチカチの理論じゃなくて、もっとふんわりでいいんじゃない? パッションパッション!!」
美鈴の言葉が脳内の確信に引っかかる。手繰り寄せれば確実な現状の正解にたどり着けると本能が告げてる。そうかパッションでファンタジーか……うん、キたかもしれない。
「……彼方?」
「ありがとう、現状での最高の答えが見えたかも」
「ほ、ほんと!?」
「あー……僕頭固すぎたなぁ。うん、最高だよ美鈴。その発想マジで大好きだ」
「ふーん……へっ!!!!????」
あーすごいわこれキテるわ脳汁すごいわ。やべぇいける自信しか湧いてこない。
「ちょっとすぐに形にしたいわ、それじゃあありがとうね。おやすみ美鈴。表にタクシー呼んどいたからそれ乗って帰りな」
「ぅん……」
美鈴を見送った後すぐさま作業を再開する。ぶっつけ本番になるがまぁいい、今の僕は自信しかないからなっ……!!
素材を溶かし各種部品の型に流し込む。気分がかなり上がっているのかハンマーを打つ手が止まらない。気を張っていた作業でさえノリと勢いに身を任せて自分の想像のまま自由に作業を進める。
「よしっ、ある程度は終わった。最後はお前だ」
[夢蝶の炉心]を加工していく。元々は銃のカバーにして空気中から魔力を吸い上げ弾丸に込めて放つ……つもりだったが、柔らかくなった頭で閃いたのは銃の弾倉にすることだ。それも実弾を入れるためではなくただ魔力を吸収し続けるだけの、傍から見たらただの筒にしか見えないだろうけどね。
要するにただの魔力の塊を弾丸にして放つ、物理攻撃ではなく完全に魔力依存の銃に方向転換したのだ。〈閃撃〉は魔力を限界まで纏わせた物体を撃ちだす攻撃なので、魔力だけ放つのが難しくなるがまぁそこは許容範囲内なので魔力のコントロールを頑張ればいい。
「……出来た」
全ての部品と炉心で作った弾倉、後はこいつらを組み合わせて成功するか否か……いや、成功するに決まってる。今回ばかりは神様にも祈らない、僕の絶対的な自信だけで手繰り寄せてみせる。
一つ一つ丁寧に組み上げていく。弾倉も魔力が溜まって言ってるようだし、最低限の成功はしている。
「……」
緊張してるなぁ……心臓の音すごいもん。果たして僕の想像力が勝つのか、はたまたシステムに遮られるか……いざっ!!!!
二丁の銃に弾倉をカチリと装填する。……何も起こらない、か。うんともすんとも言わないのかぁ……ちょっと、いや結構クるなぁ……
少ししゃがんでデカめのため息を吐く。銃を手に取り、最期のお別れのように空へ向けトリガーを引く。いい発想だと思ったんだけどなぁ……
瞬間、轟音が部屋全体に鳴り響く。
「うわっ……!!!」
目を空けると天井から朝焼けの光が差し込んできた。なんだ、もう朝になってたのか。……ん?光?太陽の?部屋の中なのに??
も、もしかして……! か、『鑑定』ッ!!!
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Name: 瑠璃立羽
Rank:SS+
説明:名も無き二代目が創り上げた、まだこの世に存在しない武器。TECの数値が高い程基礎攻撃力が上昇し、通常攻撃時に中確率で状態異常『夢際』を付与する。
『夢際』……付与された対象のAGIと攻撃成功率を7秒間10%下げる。
・この武器には〈鍛冶師の轟炎〉付与されています。
Name: 尖翅藍閃
Rank:SS+
説明:名も無き二代目が創り上げた、まだこの世に存在しない武器。MPを消費する事で物体を貫通する特殊な攻撃を使用できる。MPの数値が高い程通常攻撃時のヒット数が上昇する。
・この武器には〈鍛冶師の轟炎〉が付与されています。
読んでくれてありがとございます。
二丁の銃のイメージはブル〇カの臨戦〇キが使っている銃をイメージして頂けたら
『瑠璃立羽』は藍色と黒が基調で、『尖翅藍閃』は水色と白が基調のイメージです。




