29:挑戦開始
「彼方おっはよー! 」
「うん、おはよう。姉ちゃんもおはよう」
「ぅん……はょ」
姉ちゃんまだ朝弱いままなのか。まぁ、朝飯食べたらいつも通りになるしさっさとご飯食べましょうかね。
「おぉ……!!!」
絢爛豪華な広場に千には届かないけど、世界各国の名店から腕利きのシェフが腕によりをかけて作った料理がズラーッと立ち並んでいる。やっぱいつ見ても壮観な空間だなぁ。
「ほら、僕らで席取っとくから姉ちゃんは料理取ってきな」
「うん……!!」
ようやく目が覚めたのか、スキップしながら料理を取りに行った。……相変わらず子供みたいだ、変わんないなぁ。
「さ、僕らも行こうか。ここ意外と席埋まるの早いし」
「うんっ!!」
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く、食いすぎた……なんで腹八分目のタイミングて大好物の鯖が出てくるかなぁ、追加で白ご飯2杯もおかわりしちゃったよ。しかし……
「あ、雨音さん……めっちゃ食べてましたね……」
「ふっ、アレがいつもの適量」
「……シェフの何人かが顔面蒼白になるレベルが??」
「余裕。ふふっ」
美鈴が若干引いてるが、確かに姉ちゃんは食いすぎにも程がある……育ち盛りの高校生じゃあるまいし、大学生になってから多少は落ち着いた様に見えてたけど……まじで全っ然変わってないな。
「で、この後どうするの? わたしは彼方に付き合うよ?」
「ウ、ウチもっ……!! 斧のメンテナンスお願いしたいんだけど……大丈夫かな??」
むっ、これは2人とも着いてくるパターンだな? まぁ……無理に断る事もないし、いっか。独り言をブツブツ言いながら作業するより適度に話しながら作業の方がストレスも無さそうだしね。
「うん、いいよ。僕も今日は鍛冶場に行くつもりだったし。姉ちゃんは?見てても暇じゃないなら来る?」
「もちろん。彼方の作業してるとこ見るの好きだし」
「さいですか……」
という訳で、ギルドの鍛冶場へやってきた。姉ちゃんを見て周りの人達がものすごくザワついていたが、最低限の説明は上の人にしておいたし、これ以上は騒がれる事もないだろ。
しかし、やっぱ綺麗すぎるよなぁ……ほんっとに僕以外に鍛冶師なんているのか心配になるレベルで使われてないものばっかだし。
「……ま、いっか。ほら美鈴、武器出して」
「はーいっ!! それじゃお願いしまーす!!」
斧を受け取り、作業する準備を進める。研磨する為の砥石を鍛冶場に入る前に注文しておいたのでもうあらかた準備は万端だ。…おっ、炉にも火が入ってる。至れり尽くせりだ、大変ありがたい。
「よしっ、じゃやりますか!」
鉄と鉄がぶつかり合う音が反響する。一定のリズムでハンマーを振り下ろし、傷ついた斧を癒していく。それに呼応して光の粒のようなものが斧の周りを包み込み、強化を施す。
はぁ……ようやく集中して鍛冶ができるっ……!! あの拘束期間の間ずっっっっとアイデア考え続けてやっとそれを形にできるんだ……! それに……ふふふっ、やる気が漲らない訳がないっ!!!
「ねぇ、彼方。それが終わったらちょっとわたしの武器について相談したいんだけどいいかな?」
「ん? あぁ了解了解。もうちょい待ってね……そろそろ仕上げだからっ……!!」
砥石で刃の部分を整え、持ち手の部分にこれを付けて……よしっ完成。
「はいこれ。メンテのついでに強化もしておいたから」
「はぅ……」
「ど、どったの? なんかえらく顔が真っ赤になってるけど……あっ、もしかして暑かった? 換気しようか??」
「んへぅ!? あ、ああああありがと!!!だ、大丈夫っ大丈夫だかりゃっ……!!!!」
「うむうむ、確かに集中してる彼方はかっこよかった……近年稀に見るいい写真も撮れたし」
「???」
何を言っとるんだこの姉は……? まぁ…とりあえず次は……
「で?姉ちゃん武器の相談って何?」
「うん、わたし用に1本剣を作って欲しいの。ちゃんと素材分のお金も出すし」
「はいよ、んで?どんなのがいいの?」
印象的には細剣とか似合いそうだけども……
「大剣。わたしと同じくらいので、それでいて軽くて振りやすいやつ。例えるなら小さい頃一緒に観てた『魔女っ子騎士アビスアルト』の深木或樹ちゃんが使ってたやつみたいな感じのがいいな」
「……ですよねー」
そう、雨音姉ちゃんは見た目は高身長(僕よりデカい)かつ同性からもモテモテなイケメン系王子様女子かと思いきや……中身は小5くらいで成長がストップしており、成人しても木の棒拾ってブンブン振り回して走り回るのが大好きな、内面と外面のギャップが180度違う少し残念な美女なのだ。まぁいつまで経っても子供心を忘れないのはいい事だが……
「まぁ……それはそれとして、後はどんな特徴が欲しいとかある? 大体の素材はもうここにあるので何とかなるから姉ちゃんの要望に答えるだけなんだけど」
「ふぅむ……ちょっと考えさせて」
「はいよ。纏まったらまた声かけてね」
はーキンキンに冷えた水が美味いっ。……しかし、大剣を要求する姉ちゃんのステータスはどうなってるんだろ。印象だけならAGIとかTECが高そうな感じはするし、そもそも持てるだけのSTRとかVITはあるんだろうか? ……よしっ、『精密鑑定』発動。割と宝の持ち腐れになりかけている〈才能〉達を有効活用しないと……前の16階層の時だって『上級風水術』使うの忘れてたし……さて、どんなもんかな……?
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Name:兎ヶ崎雨音
Lv:61
出身:舞踊団
job:守護騎士
subjob:祈祷師
HP:900
MP:300
STR:2400
STM:600
TEC:250
AGI:18000
VIT:1000
LUC:700
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飲んでた水が鼻から吹き出た。
「ぶっ……!!! うぇっほ……げぇっほげっほ!!!!」
「だ、大丈夫っ!?」
「大丈夫、大丈夫だからっ……! は、ハンカチかなんかある??」
「あ、ウチ持ってるよー! ちょっと待ってて取ってくる!!」
はービックリしたっ……! しっかし、AGIの数値どうなってんだ!? 18000なんてそうそう無いぞっ!? というかプレイヤーが到れる境地じゃないっ……! ガッツリ強化されたネームドのNPCか負けイベでしか見たことないぞ!?
もし、仮にレベル1から100までの強化値の割り振りをそのステータスに集中させても恐らく6000か、運が良くても7000が限界値だし……
「はいこれ、ハンカチ。あとティッシュも」
「あ、ありがとう……ふぅ、助かった。ハンカチありがとう、洗ってから返すよ」
「ううん、気にしないで!! それ、ウチから元々彼方に渡すつもりだったプレゼントなの」
「えっマジ!? ありがとう美鈴!!!」
ははっ、身内以外の異性からプレゼントなんて初めてだっ!!! うわー嬉しいなぁ!!!
「そ、そこまで喜んでくれるなんて……!えへへっ……」
「本当にありがとう!! 大事にするよ!!」
いやーもう気分がノリノリだよ、今ならいいもの作れそうだわなんか。よし、早速秘密兵器の作成にっ……!!!
「思いついた。攻撃する時に刃を消せたりできない?」
「えっ?」
後ろから姉ちゃんが話しかけてくる。えーとなんだったっけ?
「え?、じゃなくて思いついたの。……あ、もしかしてなにか別の事やろうとしてた?」
「あー……い、いやいや大丈夫。任して任して……! 刃を消すかぁ……うん、いける大丈夫」
「ほんと!? ありがとうー!!」
大型犬が飛びかかるかの如く、急に抱きしめてくる。ちょっ……!?
「ね、姉ちゃんっ……! 恥ずい、恥ずいからっ……!!」
「ふふふっ、照れない照れない」
読んでくれてありがとうございます。




