27:両手に花
第3章開幕です。
第16階層攻略成功から2週間程経過した。目が覚めてからはとにかく目まぐるしい日々が続いた……特に飲み会とか飲み会とか飲み会とか。攻略が終わると大体いつもらしいのだが、とにかくバカ騒ぎして『生き残った』って言う実感を味わっているのだとか。
先輩も姐さんも大はしゃぎで、未成年だけどギャルな美鈴はともかく、呑めない僕はずっとテンション置いてけぼりだった。結局何軒も付き合わせられて、6軒目に行こうとした時点でまたぶっ倒れた。酒の匂いだけでもダメなのか僕は……
飲み会が一通り終わると次はギルドから呼び出しをくらった。16階層の情報とボスギミックやMobの生態を洗いざらい吐かされる事になり、ほぼ監禁……というか監禁された。そこでボスの異常行動であったりをひたすら質問攻めされ二徹目に突入した。後半口から魂抜けてたんじゃなかろうか……
終いにはギルド外の関係各所にタライ回しにされ、丸々1ヶ月は自由が無い生活を余儀無くされた。開放された時には僕もう精神と肉体どっちも半殺しにされた気分。もう向こう半月は何頼まれてもやんねぇからっ(泣)!!
……ピロンッ
むっ、メールか? お、お願いだから頼み事とかじゃありませんようにっ……!! 画面から目を背けつつチラっと見てみる。差出人は……なんだカーラさんかぁ…とりあえずなにか面倒事じゃない…か。なになに、【報酬について】? あぁ、そっかそういやすっかり忘れてたな……振り込み先も伝えて無かったしそれについてかな? 返信するだけなら全然苦じゃないしチャチャッとタクスこなしますかね。
メールを開くとドイツ語でワーッと感謝の言葉っぽいのが綴られていて読むのに一苦労したがまぁそこはいい。メール文の中盤くらいになんか不穏な文字列が見えたんだけどっ……!?
『なお報酬金と契約金含めた金額、おおよそですが約30億ドルは手渡しになります。代表のポリシーで報酬はいつも現金手渡しになっていますので……』
口からなんか出た。魂じゃありませんように……
今の為替見てさらになんか出た。嘘やん
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さて、そんな訳で億万長者になってしまった。受けった時の記憶も実感も無いんだけど、別に今は欲しいものとかは無いし宝の持ち腐れになってるんだけども、まぁ言っても現状素材買うくらいしか使い道無いしどうしたもんか。
さらにやる事も無いときた。次の階層の攻略はギルド主体で動くらしいし、依頼されない限りは今は動かなくてもいいかなぁ……と考えてる。実際疲れもまたま全然取れてないし、さらに言えば次の17階層は今の僕が行ってもって感じなのだ。だってあの階層なんでか謎解きがメインだし。
……なんでVRMMORPGでモンスターと戦わずに頭使って攻略しなきゃならんのだ!? いやまぁ頭は使うよ? 相性とかパーティの動き方とか攻略する順番とかね? でも強み消してるじゃん!? それだったらVRゲームとかARとかレトロゲームでいいじゃん! 没入型のノベル系フルダイブVRゲームならまだしも特にステータスに関係ない頭脳使って何が楽しいんだよ!? さらになんで謎解きする階層が複数あるんだ!? プレイしてる時頭抱えたよ!?
……思い出しただけで腹たってきたわ。はーもう忘れよ忘れよ、じゃなくてお金の使い道をどうするかだわ。まぁ一旦戻りますかぁ……帰る途中に思いつくでしょ多分。
あそうだ、先輩と美鈴にお礼の品を買おう。僕のわがままを聞いてくれてわざわざここまで来てくれたんだ、流石にお礼しないと申し訳ないし……そうと決まれば、早速ショッピングモールへGOだ!
……さて、そんなこんなで人の波にもまれること多分半日。命からがらショッピングを終えたわけだが、とりあえず目当てのものは買えた。先輩には前から欲しいと言ってた業務用の食洗器と冷凍庫、美鈴には最近流行ってるって聞いたコスメと欲しがってたブランド品を数点。
先輩はともかく、美鈴のは特に疲れた……姉ちゃんに連れまわされてしか行ったことのないビューティー系のお店に、僕みたいな男子一人で入っていくのがかなり辛かった……
ともかく……これでお礼の品は揃ったしまずは一安心かな。あとは渡すだけだし、一旦休みたい……かな。もう瞼が限界……開いてらんないわ。おやすみなさい……zzz
翌日。
クランに顔を出すがてら先輩と美鈴に会いに来たのだが……
「えっ、2人ともいないんすか?」
「えぇ……美鈴ちゃんは『武者修行だーっ!!』って塔に向かってっちゃったし、峯吉ちゃんに関しては連絡つかないのよねぇ……」
姐さんが心配そうにぼやく。というか、先輩が連絡つかないって相当だぞ? 一体どうしたんだろうか……
「分かりました。先輩には僕からも連絡飛ばしときます。あ、後これ姐さんにプレゼント、杖とリボンのブローチです。効果は御墨付きなんで是非使ってやってください」
「あらっ!!ありがとう彼方ちゃん!!」
姐さんとハイタッチしてクランを出る。ユーリィにも挨拶しておきたかったが、急用か何かで一時的にドイツへ帰国しているらしく、とりあえず部屋に手紙を置いてきた。正式にクランへの招待を承諾しますよってのと、何ヶ月か日本に戻りたいって内容をバーッと書き記しておいた。
それから先輩に電話してみたが繋がらないどころか電話番号が使われていないアナウンスが流れてきた。とりあえずメールは何件か送っておいたのでしばらくは返信待ちかなぁ。あとは美鈴だけども……
「……彼方」
「へぶぁっ!? ……って姉ちゃん!? 何でここにいんの!?」
考え事してる後ろから急に雨音姉ちゃんが抱きついてきた。ま、まじで誇張なく心臓が飛び出るかと思った……!!
「彼方に会いに来た。お見舞い行ってから全然連絡してこなかったし……寂しかった」
「あぁ……それは、ごめん。うん、申し訳なかったです」
「よろしい……なら、わたしとデートして」
「はぁ……でもちょっと寄りたいとこあるからそっち終わらせできてもいいかな?」
美鈴に会いに行かないと……お礼の品も渡せてないし。ちょっとだけ塔にも寄れたらなーと思ってたりもする。
「いいよ。それじゃ、れっつごー」
そう言って姉ちゃんは腕を絡めて肩に体重をかけてくる。重い……
「……姉ちゃん、歩きにくいんですけど」
「もーまんたい。ほら行こ?」
「……という訳でこれ、是非貰って欲しい」
美鈴に紙袋を渡す。僕らが着いた時にばったり出くわしたので事情をサッと話してみた。すると美鈴はなんだかニマニマしながらぎゅっと袋を抱きしめた。いや〜そんなに喜んでもらえるとは…かなり嬉しいけど、ちょっと恥ずかしいな……
「〜ッ!!! ありがとう彼方っ!!!」
「いえいえ……こっちも喜んでくれて嬉しいよ」
「はぁー!!どうしようかなどうしよかなー!!折角のプレゼントだしぃー飾っちゃおっかなー!!!でもでも使わないと勿体ないしなぁー!!」
その場でクルクル回ったり、ぴょんぴょん跳ねたりして大はしゃぎしてる。だ、だんだんこっちが恥ずかしくなってきた……!!
「おっ、レアな表情。ごちそうさまです」
「へ?なんの話し??」
「お気になさらず……」
姉ちゃんがスマホをチラチラ見ながらこちらを見てくる。定期的にこういう事してるけど一体何してるんだろうか?
「それじゃ、美鈴ちゃんもデート一緒に行こっか」
「へっ!?で、デート!!?誰と!?もしかして彼方っ!!?」
「そ、わたしも美鈴ちゃんと話したいし……ね?」
「い、いいの……!?」
まぁ……別に困る訳でもないし、これを機に2人がもっと仲良くなれるきっかけになるならいいのかもしれない。
「ま、まぁ別にデートって訳じゃないけど……夕飯くらいなら一緒に行こう。ユーリィに良いお店教えて貰ってたし、そこなら3人で丁度いいかも。どうかな……?」
「行く!もちろん行くよ!!! ありがとう!彼方!!」
「ほら、美鈴ちゃんと手繋いで。エスコートしないと」
「はい!?」
この姉なんて事言うんだ!?い、いくらなんでもそこまでは……って!?
「ほら行こ!! 雨音さんもほらっ!!!」
手を繋ぐどころか僕も姉ちゃんも美鈴に手を引っ張られてしまう。天真爛漫すぎるな……
「ふふ、やっぱりいい子だね」
「うん……そうだね」
読んでくれてありがとうございました。
ラブコメって難しい




