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第5話 伊香忍軍からの刺客

甲賀の里。頭領屋敷。

「頑張りましたねえ。古問朗、比曽加、手巻、加茂」

五右衛門ごえもんさまに帰還を報告した。

まずは、入り口忍者の安虎にいる家族を無事に連れてきたことを褒められた。

山賊とはいえ、安虎の妻と息子。

安全に守ることは、忍びの結束のためにも必要なことだ。

「仲間が増えましたねえ」

「はい」

面面とオニタマちゃんと面子さんが仲間になった。

二人と一物体は、安虎の家にいる。

色々と騒いでいたが、安虎と仲良く暮らすと言っていた。

「修行忍者三人組も実力をつけてきたようですねえ」

「は、はい」

実力か。今のままでも十分満足している。

「今日は、疲れもあるだろうから休んでくださいねえ」

解散して、それぞれの家に帰ろうとする。

その時。


「大変です。五右衛門さまっ…」

忍びが、あわててやってくる。

「どうしましたかねえ?」

「化けカラスが、集団で里の上空をとんでいます」

「ほう…」


バサッ…バサッ…

バサッ…


甲賀の里の上空に化けカラスの群れが集まっている。

「これは、伊香忍軍の妖術の気配ですかねえ」

するどい目つきだが、五右衛門さまは、あわてない。


第5話 伊香忍軍の刺客


甲賀の里。

忍びたちが外に集まっていた。

化けカラスが上空を支配している状態だった。

降りてくる様子はない。

空中を旋回する。

「あの化けカラス。修行の滝で見かけたヤツに似てませんか?」

「似てるよ」

「自然の化けカラスじゃないのか」

古問朗たちは、油断なく空を見上げる。

「以前にも、出たのですか…?」

修行の滝で、自主鍛錬をしていた最中に見かけたことを、加茂姉さんに伝える。

その時は、花鳥后御也が、襲われた。

ケガもなかった。

自然の仕業だと思っていたのだが。

「どうやら、“伊香忍軍の刺客”でしたねえ」

五右衛門さまは、笑う。

伊香忍軍は、ネズミをあやつる術を使う。

鳥もあやつれるのは、知らなかった。

伊香忍軍は、宝石にしか興味を持たない強欲集団。

主に、帝の宝石を盗むことをくり返す忍者だ。

それは、盗賊そのものである。

甲賀忍者は、帝の宝石を守るため敵対しているが、里にちょっかいを出されたのは、はじめてである。

「…また化けカラスかしら」

花鳥后御也が、お付きの姉妹を連れて宿屋を出てきた。

「危ない。また襲われるぞ」

「わたくしを心配してくれるのかしら」

優雅に微笑う。

高貴な方に、ケガをさせるワケにはいかない。

古問朗は、宿屋から出ないように言う。

にこやかにうなづいた花鳥后御也は、宿屋に戻っていく。


バササッ…

合図かのように、化けカラスが、忍びたちに襲いかかってきた。

「化けカラスめ」

古問朗は、シノビカタナで応戦する。

クサリカマの比曽加。

クナイの手巻も同様だ。

加茂姉さんは、小太刀で戦う。

化けカラスは体格は大きいが苦戦する相手ではなく、甲賀忍者たちの勝利となった。


『甲賀忍者たちよ…』

一羽の化けカラスが、声を発する。

『我は、宝石をねらう伊香忍軍である。帝の奥方の“婚約指輪”を渡してもらおう。そのためにきた』

ざわざわ…。

甲賀忍者たちがざわめく。

帝の奥方は、もちろん花鳥后御也だ。

婚約指輪というものは、上流階級の品物だ。

結婚する際に、夫婦で持つ指輪。

帝のものとなれば、宝石も大きく美しいものなのだろう。

『明朝、再び、舞い降りる。その時、渡してもらおう』

化けカラスの群れは、空高く消えて行った。


甲賀の里。頭領屋敷前。広場。

「伊香忍軍が攻めてきましたねえ」

ズラリと、甲賀忍者たちが集まっている。

皆んな、五右衛門さまの話をしっかり聞いている。

「帝の奥方の結婚指輪は、渡しては駄目でしょうねえ。明朝に、そなえましょうねえ」

「心得た!」

甲賀忍者は、明朝の争いにそなえた準備のために解散した。

古問朗たちは、入り口忍者の安虎あんとらに呼ばれた。


甲賀の里。安虎の家。

「化けカラス大変だったな。面子たちのことで、お礼にお茶をご馳走しようと思ってな」

安虎が話す中、妻の面子さんが、三人組と加茂姉さんにお茶を差し出してくれる。

お茶を皆んなで飲む。

うむ、美味しい。

「伊香忍軍は、本当に、宝石をねらうのだな。入り口ばかり守って、帝の宝石の護衛任務をしていないから、知らなかった」

「オレも、あらためて知った」

「ワタシもです」

「帝の宝石をねらってどうするんだろ」

お茶を飲む。

修行忍者三人組は、なごむ。

「わたしは、護衛任務についたことがありますよ…」

お茶を飲む。

加茂姉さんは、暁月城の宝石護衛を、何度かこなしている。一人前の忍びだ。

妖術でネズミを操り、暁月城に侵入するのが伊香忍軍の手口らしい。

毎度、一つずつ宝石を奪っていくらしい。

「一つずつなのか。小心者だな」

安虎の息子の面面が、お茶を飲む。

確かに、一つずつ盗むのは、弱気に思える。

古問朗の秘密愛人に興味を示していた面面母子だが、実際に甲賀の里で過ごして、何事もない暮らしを望んでいる。

ラクなのが、自然体が、一番いいのだ。

しかし、偉そうにしゃべるのは、変わらない。

「伊香忍軍とやら。弱いのではないのか」

尊大な態度の面面は、さらに、お茶を飲む。

「弱くはないだろう」

父の安虎が、否定する。

今回の化けカラスは、数が多かった。

里にいる甲賀忍者全員で、対応したほどだ。

遠隔操作であろう。

かなり、上級な妖術の使い手が、複数人いると思われる。

「一つずつ奪うのなら、帝の奥方の結婚指輪は、必ず奪うつもりなのでは」

有言実行をされてしまうと、花鳥后御也の結婚指輪は、奪われてしまう。

何とか、守らなくてはいけない。

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