第4話 少年山賊 面面
明星の山。
ゆるやかな坂道が続く、暁月の都と甲賀の里の間にある山。
「心配されていたな」
奥方の不安げな表情が思い出される。
何故、修行中の忍びである者に、そこまでの心配をするのであろうか。
謎である。
秘密愛人の話も本気なのだろうか。
古問朗は、大人の冗談だと思っている。
果物を与えてくれたり、優しいだけだ。
優しいなら、古問朗には、加茂姉さんがいる。
大好きな姉さんだ。
比曽加と手巻には兄弟がいない。学習堂の鋼師が親代わりといってもいい存在。
たくましい鋼師からは、忍びの心得を学んでいる。
「安虎の言っていた住居は、ここですね」
地図の巻物を見ながら、比曽加が、小屋を指差す。
山の森深く、小さな山小屋。
「面面って、どんなヤツだろ」
手巻は、首をかしげる。
「山賊と遭遇した場所に近いですね…」
辺りを注意深く見回す加茂姉さん。
「余に、何用だ。怪しき者たちよ…」
若い少年の声が響く。
第4話 少年山賊 面面
明星の山。小さな山小屋。
「余に、無礼を働くものは、この霊獣オニタマが襲いかかるぞ」
「オニ…タマー!」
青い髪の少年と小さな丸い物体がいる。
面面。16歳。
霊獣オニタマちゃんを連れている、尊大な態度の男の子。
「お前が、面面か」
「お前と呼ぶな。面面殿下と呼べ」
ビシッと言い放つ。
少年山賊の面面は、いい暮らしに憧れて、尊大な態度の練習をしているらしい。
いい暮らしをしたいのは、古問朗も同じだ。
ラクな暮らしをして、遊んで暮らしたい。
それが、古問朗の野望だ。
真面目な加茂姉さんのいる手前、口には出せない。
「余に無礼を働くならば、相応の報いを受けるとおもうのだぞ!」
面面は、山賊のカタナを構える。
「オニタマー…!」
オニタマちゃんもこん棒を持つ。
「気をつけて交渉をしましょう…」
「姉さん。相手は、山賊だろう」
古問朗は、シノビカタナを構える。
「貴様。余に勝てると思うなよ」
ガキイイっ…。
面面の持つ山賊のカタナと古問朗の持つシノビカタナがぶつかり合う。
「オニタマー!」
コンコンっ…。
足元を、オニタマちゃんが、こん棒で攻撃してくる。
「古問朗…。話し合いを…」
「話を聞くのか。山賊が。あと小さいのが」
「問答無用なのだ」
「オニタマー!」
加茂姉さんの静止は無視される。
「余は、帝のような暮らしをするためにねらっていることがある」
面面のねらっていること。
帝の一人娘の暁乃宮興鳥姫と結婚することだ。
そのため、美しさと尊大な態度を磨いている。
「帝の娘と結婚ですか?それなら古問朗の方が上ですよ」
「うちの古問朗は、帝の奥方の秘密愛人をやってるよ」
比曽加と手巻は、堂々と打ち明けると同時に、助太刀に入る準備をする。
「何だと!帝の奥方の秘密愛人か?何という手口だ」
面面は、その手があったかと悔しがる。
そして、山賊のカタナを引き、古問朗の前にひざまづく。
「余を、仲間にしてくれ。いい暮らしを分けてくれ」
「ええ?オレは、秘密愛人には…」
秘密愛人。
突然、持ちかけられた花鳥后御也の誘い。
断わったのだが、続いているっぽい謎。
秘密愛人とは、いい暮らしができるものなのだろうか。
よくわかっていない。
ただ、心がまだ少年なので、愛人なんてできない。
好きとかすらもわからない。
「オレは、秘密愛人になれん」
「難しいのだな。余も、興鳥姫に近づこうとしたが、山賊のため無理だった…!」
「オニタマー…!」
悔しがる面面とオニタマちゃん。
「秘密愛人の道のりを、手伝おうではないか。余を味方とするのだ。必ずや、いい暮らしをしよう」
面面が、仲間に加わった。
明星の山。小さな山小屋。
「息子以外に金づるが、いるのかい」
大柄な山賊女性がいた。
面面の母、面子である。
「母上。この古問朗という男は、帝の奥方を秘密愛人としているようなのだ」
「秘密愛人だって…!すごい男だね。見れば、赤毛が目立つじゃないかい。ぜひとも、面面の友達になってほしいものだよ」
山賊女性は、身支度をはじめる。
古問朗の話が本当か、確認するため、甲賀の里へきてくれるという。
「安虎さんから、甲賀の里に避難してほしいということなのですが…」
「安虎…。ああ、あたしの旦那だよ。つまらなくて別居してたけどね」
加茂姉さんの話をつまらなそうに聞く面子さん。
「帝の奥方なんて惚れさせてしまう。カネの話が気になるから、甲賀の里に行ってやるよ」
面子さんが、仲間に加わった。
甲賀の里。入り口の洞窟。
「面面、無事だったか」
「父上。余は無事である」
ひしっ。
父と子が、抱きしめ合う。
「オニタマー」
オニタマちゃんも抱きつく。
「久しぶりだね。安虎」
「面子か。よくきてくれた。里で休んでくれ」
「はいよ」
夫と妻は、それなりの言葉をかわした。
「感謝する。修行忍者三人組」
入り口の忍び安虎が、お礼を言う。
その後、古問朗たちは、甲賀忍者の頭領の五右衛門さまに、無事連れてきたことを伝えに行く。




