シマヅゥ=トヨヒサ ルス 鎧を着た巨人を造る
巨大な巨人。まぁ巨人だから巨大なのは当たり前だが。
その巨体に見合った鋼鉄の鎧が造られ、着せられていく。
「どうだ。素晴らしいであろう」
「は。まこと魔王マイルズ様は我等とは想像もつかぬことを次々となされます」
トヨヒサルスは自らが仕える魔王マイルズに恭しくお辞儀をした。
「このような鋼の巨人を十体も用意なさるとは。次は如何なる策を実行するのですか?」
「十体全部を人類駆逐作戦に投入する」
この発言に、当然ながらトヨヒサルスは驚いた。
「十体?全部でございますか?」
「戦力の逐次投入という言葉を知っているかな?単体で送り込めば集中攻撃を受け、いとも容易く撃破されよう。だが、一度に多くの兵を同時に送り込めばそうそう易々と破られる者ではない」
「流石はマイルズ様でございます!」
さすマイ。トヨヒサルスは魔王マイルズを褒め称えた。
「鋼の巨人だけではなく、オークとゴブリンも投入しよう。作戦の指揮はスケルトンジェネラルに委ねよ」
「御意」
トヨヒサルスは主君に深く礼をして、人類駆逐作戦の準備に取り掛かった。
「・・・それが二週間前のことだ」
トヨヒサルスは自室の机。両肘をつき、両手を組み、司令官のポーズを取りながらそう言った。
「それで私の役目は人間達の掃討作戦でよろしいのでしょうか?」
眼の前に立つ、腰に剣を刺した骸骨の騎士は尋ねる。
「そうだな。とりあえず退却中の魔王軍の救出と、我らの領土に攻め込んでくるであろう人類同盟の追撃部隊に対する防衛線の構築でもやってくれ。その為に必要な戦力は出す」
「まるで我ら魔王軍が敗北したみいな発言ですね」
「そうだな。はっきり言おう。記録的な大敗だ。鋼の巨人十体。投入したオークゴブリン始め七割。確認できているだけでそれくらいだ。スケルトンジェネラル『三号』」
『三号』。と眼の前のスケルトンジェネラルを呼んだ。
「スケルトンジェネラル二号はどうなりましたか?」
「そこいらにいる量産型スケルトンと違ってそれなりに強い人間の剣士をベースに疑似魂を付与しているんだがそれの反応が感知できなくなった。と、いう事はまあ撃破された思って間違いない」
「どういうことでしょう?人間の中に勇者でもいましたか?」
そう尋ねられ、トヨヒサルスは頭を抱えながら言った。
「それなんだが・・・」
「魔法学科というのを知っているか?」
「いいえ」
きっぱりとスケルトンジェネラル三号は答える。
「そうか。では説明しよう。スケルトンジェネラル三号。まずは腰に携えた剣で俺を斬りつけてみろ」
「よろしいのでしょうか?」
スケルトンジェネラル三号は確認した。
「かまわん。思いっきりやってみろ」
「了解しました」
そう言って、スケルトンジェネラル三号は動かない。
「どうした、早くやれ」
トヨヒサルスは催促した。
「もうすみました」
「すんだ?」
トヨヒサルスの眼の前にあった黒檀製の重厚な造りの事務机が真っ二つになった。
そして、彼が座る真っ赤なクッションのついた椅子もまた。
さらにトヨヒサルスの頭のてっ辺と、尻の穴辺りから、真っ黒な血の様な煙が噴き出し始める。
「ぬぼおおおおおおおおおぼおおっっっ!!!!!」
トヨヒサルスは悲鳴をあげながら床を激しくのたうち回る。
「あの、大丈夫でございますか?」
スケルトンジェネラル三号は身を案じて声をかけた。
「だ、大丈夫だ。問題ない。偉大なる魔王マイルズ様も言っておられる。汝はここで滅びる運命ではないと」
「そのような者の声は聴こえませんが?」
トヨヒサルスはスケルトンジェネラル三号を無視して半壊になった(文字通り)の机の残骸から包帯を取り出すと、頭のてっ辺から尻の穴まで巻き始めた。
「なんかへんてこな半分こ怪人が出来上がりましたね」
「応急処置だ。こうして止血しておけば自然回復で治る」
「治療とかはしなくてもよいのですが?」
「私は上級魔族だからな。ある程度環境が整っていれば、この程度の軽症は簡単に治ってしまうのだ」
そう言って、トヨヒサルスは部屋の隅にあった木箱を持ってきて、その上に腰かけた。
「何をなさっているのですか?」
スケルトンジェネラル三号は尋ねる。
「ああ。君が机と椅子ごと私を切ってしまったからね。だからとりあえず木箱に座っているのさ。これは偉大なる魔王マイルズ様が我々に教えてくださった叡智の一つだ。これならば筋肉痛にならずにすむ。まぁ私は純魔族なので精神生命体だからな。人間やオークの様な筋肉がないからそんな心配はいらないが、まぁ単なる気分の問題だよ」
「私も筋肉はありませんが」
動く白骨死体のスケルトンジェネラル三号はそう言った。
「ところでトヨヒサルス様。関係ないお話をしますが、丸一日立っていて、全身に筋肉痛を覚えたり、地面に寝そべって服が汚れるのを気にするような者をどう思われますか?」
「なんでそんな事を聞くのだスケルトンジェネラル三号?」
「いえ。そんな些末事を気にしたり、歩哨の務めすらできぬような連中は人間共との戦争に役に立たぬと思いまして」
もっともな意見だ。トヨヒサルスはそう思った。




