【物語】竜の巫女 剣の皇子 38 帰路
チョコロ村に初雪が降った師走の夜中。
ルチェイは囲炉裏の前に座るモヨに声をかけ
「ソロフスに手作りの御守りをあげたら喜んでもらえました。ありがとうございます」と礼を述べた。
モヨは「お裁縫がんばったもんね。よかった」彼女を笑顔で褒めた。
「あとはご相談が。これの紐の結び方がわからなくて」
ルチェイはモヨに懐剣と懐剣入れの布袋を手渡した。「まあ、これは?」モヨは目を丸くした。
「ソロフスから『護身用で浄い剣だから』と、成人祝いにいただきました」彼女はちょっと困惑気味に話した。モヨは微笑み「この錦の袋は桜色で綺麗ね」と布袋を優しく撫でた。「布袋はアイサイ村の方が縫ってくれたそうです。赤い紐飾りはソロフスが結んだそうで……私より器用」
自身が縫った赤い御守り袋を思い、沈んだ顔になった。
モヨはますます笑顔になり「この組紐の菊結びは『延命長寿の願い』を込めたもの。赤い紐は『運命の相手』の意味かしら?ソロくん、意外と粋ねえ」ルチェイに話した。
彼女はそれを聞いて顔を赤くした。モヨは「全部言わんのがソロくんらしい」ため息をつき「武の者は、いつ何事が起きてもいいように生きる。だからその家の女も心がけがいる。懐剣はそのためのもの。例え男に何かあっても、女は女で生きていかんと。互いがしっかり立ち、支え合えば大丈夫や。女は度胸と笑顔、や」笑みを見せた。
ルチェイも微笑んで頷いた。
そして、宮城に戻る日を迎えた。明けてすぐだが空は晴れ渡り、道はひどく凍らずに済んだ。
ソロフスとルチェイとちびは、オゼとモヨにお礼を述べた。
「長いようで、一月ちょっとか……いろいろ大変やろうが、息災でな。ハルにもよろしく」
オゼは目を細めて言った。ソロフスは「太師、本当にありがとうございました」
ルチェイと共に深々と頭を下げた。
「わしも久しぶり若い者と話ができて楽しかった。陰ながら応援しとるよ。親父さんがお前さんに何か言うたら、わしの名前を出せ。むげにはせんやろ」オゼはカラカラと笑った。
ルチェイは「また遊びに伺ってもいいでしょうか?」と、ふたりに尋ねた。
「もちろん」とオゼとモヨは微笑んだ。
こうしてルチェイとソロフスたちは出立し、夕刻にはイルサヤ宮城に到着した。
はじめに出迎えた宮城の衛士が見たのは、姫巫女の凜とした姿と、その上空から舞い降りる、新雪の様に輝く竜の美しさであった。
(つづく)




