【物語】竜の巫女 剣の皇子 36 決意
師走の真夜中。
ちびがすやすや眠る横で、ルチェイは目を覚まして起きあがっていた。
その瞳には冷たい闇がしんしんと映っている。
「ルーちゃんは髪の結い方を変えたのう」
朝餉の時にオゼがルチェイを見て言った。ルチェイは「はい、新年を迎えて成人すれば髪は結い上げることになるので。ちょっと早いのですが」少し頬を染めつつ答えた。
「ルーちゃんは髪を上げると美人さんになるねえ。ねえ、ソロくん」
モヨがソロフスに話を振る。ちびも『ルチェイはもともとかわいい。間違いない!なあソロ』これまた意地悪く彼に話をふるので、ソロフスは無言無表情に徹し食事を続けた。
ルチェイは顔を赤くしつつも姿勢を正した。
その午後のこと。
「トンゴさんの所にお泊まりですか?」ソロフスはオゼに聞き返した。
オゼは「そう。ルーちゃんは『勉強したいからちびと一緒に二日程篭もる』そうや」穏やかに答えた。
「そうですか……」ソロフスは言いつつ神妙な顔をした。オゼは「もう今年も残り2週間。早いものやなあ」雪に覆われたリーベサラ山を仰ぎ見た。山頂は灰雲に覆われて見えない。
「来週までには村に雪も降り出す……」
オゼはソロフスに伝えた。彼はそれに対し、静かに頷いた。
「ただいま」
二日後の夕方、ルチェイはちびと一緒にオゼの家に戻ってきた。
オゼとモヨは囲炉裏前にいてふたりを笑顔で出迎えた。
「ルーちゃん、夕餉にするかね」オゼの呼びかけに彼女は「いえ、私は先にソロフスとおはなししたいので。ちびは食べるそうです」ちょっとためらいがちに答えた。
モヨが「それなら後でもええよ。私らは先に食べておくから。ソロくんはお部屋におるよ」穏やかに応じた。
「すみません。ありがとうございます」彼女はふたりに礼を言うと、ソロフスのいる部屋に向かった。
ルチェイが部屋の戸口前で「ソロフス、ただいま。お邪魔してもいい?」と言うと、彼が穏やかに出迎えた。
「ソロフス、あのね……」ルチェイは俯き、彼の右手をそっと握った。ソロフスが静かにそれを見守る中
「……イルサヤ宮城に戻ろうと思うの」
彼女は静かに話し出した。
(つづく)




