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【物語】竜の巫女 剣の皇子【第一部】  作者: ヤマトミチカ
みをつくし
33/41

【物語】竜の巫女 剣の皇子 33 かごめかごめ

挿絵(By みてみん)




 ルチェイはソロフスになんとなく避けられて、とうとう夜を迎えた。


 夕餉の後、ソロフスは部屋に引っ込んでしまった。

 ルチェイとちびはその部屋の前に立つ。互いに顔を見合わせて頷き「『ソロフス!お邪魔しますっ!』」ふたりで勢いよく戸を開け部屋に突入した。

 ソロフスは壁にもたれて本を開いており、ふたりの突入に目を丸くした。


「一緒に!おいしいお団子食べようよ!モヨさんと作ったのっ!」

 ルチェイは笑顔と共に、お盆に乗せたお茶菓子と飲み物を彼に見せた。

 ちびも『ソロの好きな栗きんとんもあるぞ!どうだ!すごいだろっ!』ニコニコしながら話した。

 勢いのあるふたりに囲まれ、とまどいつつも「ごめん、いいよ。いらない」ソロフスは静かに答えた。


 するとルチェイとちびは「『よくない!』」と、ソロフスの片手ずつをそれぞれの両手で、がっしりと握りしめた。彼は目を丸くしてふたりを見た。

「ソロフス!元気ないぞっ!」ルチェイは強く言い

『そうだっ!ボクらが!心配するじゃないかっ!』ちびも元気よく言った。

 ソロフスは目を見開いたまま「あ……ごめん。くらくらする……」ふたりに言った。

「『わわわ?ごめん!大丈夫?』」ふたりは慌てて彼の背中をさすった。

「ごめん。大丈夫。強い感情が一気に流れ込んできて、びっくりしただけ」

 彼も決まり悪そうに、苦笑いしながら答えた。


『ソロ。手で触れたものの感覚や感情がわかるのだな?』ちびの問いに、ソロフスは頷いた。ルチェイも「昔からなの?」と尋ねた。

「いや……もともと母が魔導師で、その影響かな。小さい頃は『妙に勘が良い』くらいだった。でも、剣技で魔導も使うようになったら『勘が良すぎる』ようになって」ソロフスは伏し目がちに話す。

「能力の『出力』を上げたら『入力』の度合いも同じになってしまったから」

 彼は布袋に入れた剣を取り出し

「この剣はいろいろあって、師匠が私にくれた。常に『印』を結んでくれているから、感知を和らげてくれる」

「その代わりに……」

 そこで彼は無言になった。


「ソロフスは、私に気を使いすぎいていると思うの。私がとても弱気になって、あなたに泣きついてしまったからだと思う。私もそこは反省したの、ごめんなさい」

 ルチェイは彼に頭を下げた。

「だからソロフスは私に変に優しくしなくていい。私は光皇女ひかりのみこになるために、曲がりなりにも修練を重ねてきた身。それなりに『受け止めること』も行ってきた。弱いかもしれないけれど、遠慮はしなくていい」

 真剣な顔で訴えた。


ちびも『そうだ。ルチェイはアーサラードラをまとめる一国の主となる者だ。本来ならばロゴノダの第五皇子なんぞは、ちょちょいのちょい!である。ボクも体は小さいが、次代の『世界の秩序』となるべくして生まれた竜である。頭も良くて!強いんだぞ!』

『我らを軽んじないでもらおうか』

 静かに睨みをきかせてソロフスを見つめた。そしてふたりは彼を抱きしめた。

『それよりも、なによりも、ソロフスのことが大好きだ』

「大好きだから、わかりあいたいの」


 ちびは『ソロフス。ボクを殴った時、痛かったんだろ?君自身が殴る痛みと、ボクが殴られる時に感じた痛み、恐れと怒りと憎しみと、哀しみの感情が』目を細めて言った。

 ルチェイも「私が辛いことを思い出して苦しい時、ずっと私に触れて支えていてくれたでしょ?とても辛い思いを見せてしまった……ごめんなさい。いつも手をつないでくれて、ありがとう。今度から気をつける」微笑みを見せた。


 ソロフスはしばらく無言でいたが「……ありがとう。ごめん」ほんの少し、涙を流した。

『よしよし♪』ちびがソロフスの頭を撫でると、彼は泣きながら笑った。

 ルチェイも「ソロフスはえらいえらい!」と褒め

「仲直りのあくしゅ、してもいい?」彼の目を見て言った。


 ソロフスはゆっくりと両手を差し出し、ふたりもそれをやわらかく握り返した。

 ルチェイもちびも手をつないで、みんなで座して輪になった。ルチェイに感知の能力はないが、なんだかソロフスと、ちびの手のあたたかさがいろいろ教えてくれた。

 みんな目がうるうるして、でも変におかしいから最後には一斉に吹き出してしまった。


「そうだ!お茶にしようよ」ルチェイが提案し、みんなにお茶とお茶菓子を配った。

 ちびはお団子と栗きんとんをひとくちで平らげ『うん、うまい。ソロも食え!』顔を輝かせて言った。

「ありがとう」ソロフスも温かいお茶を一口飲み「昔の話なんだけど……してもいいかな?」ふたりに尋ねた。ルチェイとちびは同時に頷いた。


「私は、本当に駄目人間で……」

 ソロフスは穏やかに夜話を始めた。





(つづく)




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