【物語】竜の巫女 剣の皇子 30 がんばる
ルチェイとソロフスがチョコロ村に滞在して3週目。
師走に入り、リーベサラ山頂は雪化粧を始めた。
そんな冬の朝のこと。
「勉強を教えて欲しいの」
ルチェイがソロフスに相談を持ちかけた。
彼女が借りているハルの部屋には様々な本やノートが置いてあり『自由に使っていい』と言われている。
「自分で読んでみたけど、わからないことが多くて」彼女は数冊の本とノートを彼に渡した。
ソロフスはそれらのページをめくりつつ「どれどれ、自然摂理系、と思想……。学生程度の知識でよければ」と快諾した。
最近、ルチェイはオゼの紹介で、ご近所のトンゴ・ニライの家に通っている。トンゴの息子がハルの夫なのだそうだ。
「いらっしゃい。今日はなにをしようか」
トンゴもルチェイをあたたかく迎える。彼の家は村の子供も通う私塾だ。大部屋には様々な分野の本が置かれている。子供達は、はじめはルチェイと一緒にきたちびにびっくりするやら、ちょっかいを出すやらの大騒ぎだった。
が、数日通うとそれも落ち着き、子供とちびは仲良く遊ぶようになった。
子供達はそれぞれの小机に向かい、思い思いの勉強をする。
「ほ~、ルーちゃんは歴史と政治に興味があるのか」トンゴがルチェイに声をかける。
ルチェイは彼に「はい、周りの国のことも理解したいんです」真剣な顔を見せた。
「歴史の本は事実の表現方法も読み解くといい」トンゴは分厚い本が並ぶ本棚を示した。ルチェイは頷いた。
お昼ごはんは子供達と食べる。トンゴへの質問も飛び交い、賑やかだ。
「またね~」と子供達にも挨拶をして、ルチェイはちびとオゼの家に帰ってきた。
ルチェイは裏庭にいるモヨを見つけて声をかけた。
「モヨさん、ただいま」
『ただいま~♪』
ちびも陽気な声で言う。
「おかえり。ルーちゃん塾はどうだったかい?」モヨも笑顔で迎える。
ルチェイは「モヨさん、相談があるんです」急に、もじもじしながら言った。
お手伝いと夕餉の後、ルチェイはソロフスと勉強を始めた。
「ここがわからないの」
彼女はソロフスにいろいろ質問をした。彼も一緒に考えたり調べたり、と付き合う。『ボクもやるぞ!』ちびも意気揚々と辞書を開いたが、5秒で爆睡してしまった。それを見てふたりは笑った。
しばらくすると、ルチェイがあまりにも静かになった。
「眠いの?」ソロフスが声をかけると、彼女はハッとして顔をあげ
「ううん、勉強がおもしろいの」と笑顔を見せた。
彼も「そうか」と、横で本を読むことにした。
「ソロフス」ルチェイが呼ぶので横を向く。彼女は「ソロフスは勉強が好き?」と、聞いてきた。
「興味があることは好き。私は自然のことを知りたくて学んで、他にも興味が広がっていった」彼は腕組みしながら話した。
ルチェイは「私も今そうなの。なんだか、いろいろつながると嬉しいよね」眠たそうな目を輝かせて言った。
「ソロフスは何の本を読んでいるの?」彼女が興味を示したので、ソロフスは開いている本を見せた。
「うわあ。数字がいっぱい。これ、計算するの?」ルチェイが内容を見て苦々しく言うので「暗算は頭の切り替えにちょうどいいんだ」彼はさらりと答えた。
ルチェイは唖然とした。
彼女はソロフスの手をがっしり握り「先生!それも教えてください!」声色を強めた。
ソロフスは笑い、立ち上がるとルチェイを思いっきり抱え上げた。
彼は目を大きく丸くするするルチェイに「がんばるのはいい。でも今夜はもう遅い。寝なさい!」そのままベッドに寝かせ布団を掛けた。
そして、彼女の頭をガシガシ撫でた。
ルチェイは頭から布団を被ってしまった。
ソロフスは「あなたはできることを十分にやっているよ。そう思う」穏やかに声をかけた。
彼女が布団から半分顔を出した。その瞳は潤んでいる。彼はルチェイの額に軽く口づけをして灯りを消し「おやすみ」と、部屋を出た。
(つづく)




