【物語】竜の巫女 剣の皇子 29 男の子
ルチェイとソロフスがチョコロ村に来て2週間ほど過ぎた。
霜月も下旬、吹く風も凍えるようになった。
「もう腕は自由に動かしてええよ」
オゼはソロフスの左腕傷を縫合していた糸を抜きながら言った。ソロフスは礼を言った。
そばにいたちびは、ソロフスに『もう痛くない?』と聞いてきた。
ソロフスは「痛いよ。お前は本気で噛みすぎなんだよ!骨が折れるかと思ったぞ」まだうっすら赤い傷を見せつけ、怒った顔で言った。
そして「ちびはまだ痛いか?」と聞き返した。
『もうとっくに痛くないよ。ボクは竜だぞ!馬鹿にするな』これまた怒った顔で言い返した。
しばらく互いに睨みを効かせた後、笑い合った。
『ソロフス。お願いがあるんだ』ふいにちびが言うので「何?」服を着ながら彼は聞き返した。
ちびは『ボクはソロフスと仲良くしたい。君のことを知りたいから今日は一緒にいていい?』満面の笑みを見せた。
ルチェイがちびを探していると、ソロフスの部屋から賑やかな話し声がする。
彼女は戸をノックしてみた。ちびが『ルチェイ!入っていいよ』と呼ぶので彼女はお邪魔してみた。
ソロフスが床に寝転んで本を読んでいて、ちびはその横にくっついて寝そべっている。
『ルチェイ、聞いてよ!ソロフスが遊んでくれないの!変な話しかしてくれないんだ!』
ちびは大声でわめく。
「だーめ。体長2メートルを超える巨獣とボール遊びする元気など、なーい」
そう言いつつも彼は、ちびの首の後ろを優しく掻いてあげている。
ちびも笑顔を彼の頬にこすりつける。
「……夜に出かけるか。それなら思いっきり遊べるし、星も見える」
ソロフスが提案すると、ちびも賛成した。
巨体のちびがソロフスにじゃれるので、彼も全身で相手している。見ているルチェイも顔がほころぶ。
「ふたりは仲良しなのね」彼女が感心して言う。
ちびは『うん、仲良し。ボクもソロフスもルチェイが大好き!』大きな牙を見せて笑顔になる。ソロフスは苦笑いだ。
『ソロフス。そう言えばオゼが君に、傷は良くなったからお風呂に入っていいと言っていたね。ボクも一緒にいいかな。そうだ!ルチェイも一緒に入ろうよ!』白竜は顔を輝かせて提案した。
姫巫女の顔が赤くなり、青年は「馬鹿!だめに決まってるだろ!」慌てて言った。
『なんで?ボクはルチェイとお風呂に入るよ?』
ちいさな白竜はきょとんとして、ふたりを見た。
真顔のソロフスは無言で、ちびのほっぺを両拳でぐりぐりした。そう、本気でぐりぐりした。
それからしばらく、ちびはソロフスにじゃれ続け……彼には十分な運動になったそうな。
めでたし、めでたし。
(つづく)




