【物語】竜の巫女 剣の皇子 28 望みは
ソロフスとルチェイはミカゼに乗って、オゼの家に戻ってきた。
オゼはソロフスを部屋に休ませ、付きっきりで部屋に篭もった。ルチェイとちび竜はモヨが手当をして、ゆっくり休ませた。
チョコロ村に来て十日目が過ぎた。
ルチェイは普段通り動けるようになり、ちびも彼女に付いて、飛べるようにまで回復した。
昼餉の時、ルチェイはオゼにソロフスの容体を聞いた。
「ソロくんはまだ寝てるよ。まあ、たまには寝てたらええ。悪くはなってない。大丈夫や」老人は穏やかに答えた。
ルチェイはしょんぼりしていたが、食事は残さずに食べた。
『早く良くなるといいな…ボクも心配だ…』隣に座るちびも、沈んだ声で言った。
それから二日後の朝。
「ソロくんがちょっと落ち着いたから、話してやってくれんかのう」
オゼがルチェイに声をかけてきた。
彼女がちびを誘うと
『ボクは昨日、ソロフスとお話したからいいよ』白竜は微笑んだ。
ルチェイがソロフスの休む部屋に入ると、彼は布団に丸まって寝ていた。
あまりに静かに寝ているので、彼女はそっと近づき、その顔を覗き込んだ。
ソロフスはそっと目を開け
「ごめん…痛かったね。痛いことをしてごめん」
そう詫びた。
ルチェイは「私が悪いの、ごめんなさい。あなたの方が痛かったと思う」
強く詫びた。
「オゼさんから強制的に寝かされているだけだよ…さすがに五日も横になってると、寝飽きる…」
ソロフスは笑うと、ゆっくりと上体を起こした。
「昨日ね、ちびにも謝ったんだ。本当に自分は…未熟だと思う。でも『真の名』がわかってよかった。ちびに『かっこいい名前でよかったね』って言ったら、あいつも笑ってたよ」
彼は、左腕に巻かれた包帯をそっと上着で覆いながら笑い
「あいつ、強いよな。私ももっと修練する」
そして
「……落ち着いたらロゴノダに帰ろうかと思っていて」
夜色の瞳を姫巫女に向けた。
「腕の怪我が悪いの?」
眉をひそめて言うルチェイに、ソロフスは穏やかに首を横に振り
「それは大丈夫」彼女に両手を差し出した。
少女が、おずおずと彼の両手を握り返す。
「私が…怖い…?」
ソロフスはルチェイに尋ねた。
「ううん、怖くない。大丈夫…」
「私はね…なんとなくなんだけど…。ゆっくり…あなたを大事にしたいと思っていて……
でも、どうも…それができていないと思っている。実際に力で押さえつけてしまい……ひどい痛みも与えて…すまないと思う」
彼は黒い瞳をほんの少し潤ませ
「それをオゼさんに相談したら『本人に聞いてみろ』と言われた」
そこまで話し、静かになった。
ルチェイはソロフスの手をしっかり握り
「あなたから『何を望むのか』と聞かれて、ずっと考えてたのだけど…いろいろあるの。
みんなのためになることをしたいとか、ちび竜を守りたいとか。
でも、今……あなたのことも守りたいと思ったの。そばにいたいの。
これを今、お願いしてもいい?」
真剣な顔で彼の顔を見つめた。
「……ありがとう。なんだか逆な気もするけど」
ソロフスは困ったように微笑み、彼女をそっと、抱きしめた。
(つづく)




