【物語】竜の巫女 剣の皇子 26 魔導剣士
ソロフスは祓詞を心中で詠唱しつつ紫眼の瞳を湛え、剣を静かに構えた。
ちび竜は唸り声を出しはじめ、彼を赤く燃える眼で睨む。
ソロフスの後方からそれを見たルチェイはちび竜が怒りで我を忘れそうなこころを感じた。
「ちび!やめて!ソロフスも!」
ルチェイは言ったが、ふたつの睨みあいは微動だにしない。
またちび竜が炎弾を連続でソロフスに吐き出した。
ソロフスは詞を詠唱し左手で受けた。
炎弾全て、彼の手前で大きく弾けて消滅した。
彼は瞬時に左手を握りしめた。表情は変わらないが額に汗が浮き出る。
ルチェイが「ソロフス!やめて!私を斬ればいい…そうすれば…」彼に言った。
「そんなことはわかってる。それが望みか?」
彼はルチェイの方を向かず言う。ルチェイは座り込んでいる地面の黒い土を握りしめた。
ソロフスは「そうだな…それもいいかもな」ゆっくり彼女の方に向き直った。その目は有無を言わせない力をたたえていた。
ソロフスがルチェイの方に歩き出した時
ちび竜がかん高い咆哮を上げて四肢で立ち上がった。押さえつける結界は赤光の放ち抵抗したが
糸は弾け、切れた。
ちび竜はすばやくソロフスとルチェイの間に飛び込み、彼に唸り声を上げる。
ソロフスは剣を構え、その場で互いの睨みあいが始まった。
彼は『壱之円は守る』と決め、心中での詠唱を続ける。
ちび竜がソロフスの剣にすばやく飛びかかり刃に食らいついた。彼は気を込め、左拳でちび竜を殴り飛ばした。
ちび竜は飛ばされ地面に叩きつけられた。
同時にルチェイの身体にも激痛が走る。
すぐに起き上がり身を翻したちびがソロフスに飛びかかるも、また彼は気を込めた拳を叩き付ける。
ルチェイを置いて、ふたつはひたすら攻防を繰り返す。
ちびが殴られる度にルチェイに激痛が走る。彼女も思わず呻いて倒れ込む。
ふと、ルチェイはこれがちび竜が直接受けているものだと実感しつつ…
その激痛の中に…深い哀しみと恐怖の感情を見つけた。
ちびは怖いんだ!
ルチェイは痛みの中、歯を食いしばり立ち上がると、ソロフスの方に向いた。
「ソロフス!やめて!ちびが怖がってるだけなの!お願い!やめて!」
彼に嘆願した。
ソロフスは表情も構えも崩さない。
ルチェイが混乱する中、ちび竜が物凄い勢いでソロフスに飛びかかり、彼の左腕に喰らいついた。
(つづく)




