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【物語】竜の巫女 剣の皇子【第一部】  作者: ヤマトミチカ
つなぐ
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【物語】竜の巫女 剣の皇子 22 深夜零度

挿絵(By みてみん)



 ルチェイがうっすら目を開けたとき、部屋は薄暗く空気は冷たかった。


 少し離れて人影がある事に気が付いて、そちらにゆっくり目を向けた。

「ああ……起きたね……」

 部屋の壁にもたれかかって座るソロフスがつぶやいた。

 その声は、ちょっと弱々しく感じた。

 ルチェイはここにいる理由をぼんやりと思い出しつつ……。

「ここは?」と、ソロフスに尋ねた。

「私の寝室だよ。ハルさんの部屋は荷物が多いからこっちにした。今は夜だ」彼は答えた。

 部屋の角に灯りがあるだけなので、部屋は薄暗い。ソロフスの表情もはっきりは見えない。

「ルチェイ、喉は渇いてない?水を飲む?」そう話しかけるソロフスに、彼女は「ちびは?」と尋ねた。

 ソロフスはしばらく黙っていたが「ちびは違う場所にいる」と答えた。

「ちびは寝ているの?」

「ちびは固定している」

「?」

「あなたの力がまた弱まった。あの竜の方が強まる。あなたも竜の一部だ。だから縛っている……すまない」ソロフスはルチェイに近づいた。

「どうしたの?何があったの?」

 彼女は身体を起こしてソロフスに向いた。

「ソロフス!」「どうしてみんなは私に黙っているの!?何なの!?」

 ルチェイは彼の腕を掴んだ。

「何を知っているか教えて……!」叫びそうになる声を抑えつつ絞り出すように言った。

「知っているのはあなただ」彼は低い声で返した。「私が知っているのは、すでに眠っているあなただった……」


 竜殿の泉


 腐臭


 薄暗い中


 緑と赤と白の混じった液体


 細かく分かれて浮かぶひとり分の人体


『あの子がやっと帰ってきたとき、身体も心もぼろぼろでした。なにかに襲われたことは確かでした』

『あの子は力を過信し、それにより己を傷つけ、国の一部を無作為に破壊しました』

『あの子は自分で自分を封じました。そして……』

『再生するために竜の一部も使いました。これで戻れば……』


「私にも責任がある。聖上は『違う』と言ったが、私のせいだ。

私が会いたいとお願いしてしまった。その意味を全くわかっていなかった。

本当にすまなかった……あなたの10年をうばったのは……私だ」

 頭を下げたソロフスも絞り出すように言った。

「どうして……?なぜソロフスが謝るの?ちがうわ。あの時行くと決めたの……は、私……」「あの時……?」

 ルチェイの表情が明らかに変わった。目が大きく見開かれる。

「どうして……?私が約束したのは……ソロフス……」そう言いながら、ルチェイはソロフスの顔を見た。

 彼も硬い表情で、彼女を見つめる。

「今は環竜……742…………あの時……?冬…………」


 長い沈黙の後

「ソロフス……!どうして……!?」とルチェイが叫んだ。

 青年は強く、少女を抱きしめた。

「ここに、いてほしい……!頼む!」切れ切れに言った。

 ルチェイの身体が震えだした。

 「ああ、そうだ。私は……いちど……死……」


 全部思い出した。

 すべてを。


「こわい」

「いやだ」

「さわらないで」


 ルチェイはソロフスから離れようとした。彼はそれを阻もうとした。

しかし、彼女から腕をつかまれ、少女とは思えない力に彼は顔をしかめた。

  ことばにならない声を叫びルチェイは彼に掴みかかり、暴れた。

 ソロフスはそれをなんとかとどめ、彼女をうつぶせに押し倒した。

「だめだルチェイ。あきらめないで」

 彼は汗だくで言いいながら、舌を噛まないように彼女の口に布を押し入れた。



(つづく)


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