【物語】竜の巫女 剣の皇子 12 恩人
冬の押し迫るリーベサラ山のどこかの川岸で、僕は疲れ果てて動けなくなってしまった。
天候は小雨になってきたけれど、どんどん寒くなる。でも動けない。
『このまま僕は死ぬのかなあ……』
本当に、寂しくなってきた。
多分、僕は泣いていたのかもしれない。
しばらくして、僕は頬を突っつかれている気がして目を開けた。
視界の中に、大きな白いサルが二匹いた。馬より大きなサルだ。その頬が赤い。
そのサル達が僕の顔を覗き込んでいる。
以前、ルチェイが
『山にいる長命な動物は妖魔、山の守り神となるの。もし妖魔に遭ったら【私は敵ではありません、邪魔してごめんなさい】と言うといいのよ』
と、話してもらった事を思い出した。
僕はサルたちに
『僕はルチェイに会いに行こうとして迷ってしまいました。帰りたいけど動けないんです。邪魔してたらごめんなさい』
と、言ってみた。まともに声も出なかったけど。
すると、サル……一匹はひょうきん顔で尾が二叉の方が『ぽうぽうぽう』と優しい声で鳴いた。それを聞いた、もう一匹の鋭い顔の尾が三つ叉サルが『ぽうぽう』と返事をして、まるで会話をしているように感じた。
しばらく2匹のサルは鳴き合っていたが、ひょうきん顔のサルが僕をやわらかく抱き上げた。
とても鋭い爪を持っていて、手の平も毛皮も硬かったのに、優しくしてくれていることがわかった。
獣特有の臭いはしたが、僕は柔らく包まれて、あたたかくなってホッとした。安心した。
『ありがとう』
僕が心の中で言うと、サルは二匹とも喜んだ気がした。僕は母様と一緒にいる夢を見ながら寝てしまったらしい。
次に目が覚めたとき、僕は最初の夜にリュックを放り投げた場所に戻っていた。
周りにサルはいなかったけど、僕はまったく寒くなかった。
「おい坊主!こんなところにいたのか!山に登るなって言ったろう!」
声の方を見ると、はじめに僕に話しかけたじいさんがロバに乗ってやってきた。
じいさんは、ロンテン村に行ったものの、僕の事をみんなが知らない上に変な格好をしていたから気になって捜してくれていたらしい。
「まったく……!儂がたまたま通りがかったからよかったものの……!バカをして……!」こっぴどく怒鳴りながらも、じいさんは僕に毛布を巻いてロバに乗せ、自身は歩いてロンテン村に連れて行ってくれた。
その後、僕は3日間熱を出して寝込んだが、ずっと看病してくれたのもこのじいさんで
僕の『冒険の話』を聞いて一番笑い飛ばしながらも、最後まできちんと聴いてくれたのもこのじいさんだった。
彼こそが剣豪ニール・ヤード。
私の人生の師となる方だった。
私はじいさんとアカホッペヤマザルには一生頭があがらないのだ。
(つづく)




