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【物語】竜の巫女 剣の皇子 11 濁流

挿絵(By みてみん)


 ここはアーサラードラのイルサヤ城。その内裏も秋の冷え込む夜に包まれている。



 初の剣術……いや、ランニング修行を終えて、ルチェイは夕餉を済ませると寝床に飛び込んだ。

 体中が筋肉痛のルチェイに、遊びたいちび竜がじゃれてくる。


 ルチェイはちび竜を抱きかかえながら

「う~!ソロフスに負けないようにがんばるんだもん!おサルおサルって!ううう~!ギャフンギャフン言わせてやるわ!」

 大きな声でちびにわめき散らした。

 ちびも慣れたものなので『るちぇい、がんば!』抱きついて励ます。ルチェイもちび竜の、ふかふかの白い体を撫でて笑う。


 彼女はふと、静かな瞳になり

「だって……私には肝心なことができないんだもんね……お前もいつかは……私を……そうすれば……」

 静かに、つぶやいた。


 ちび竜はは青い瞳をきらめかせ『うん!るちぇい、がんば!』と笑い、彼女にほおずりした。


 ルチェイは困った顔で笑った。










 ここがどこか、僕には全くわからなかった。


 目が覚めたとき、リーベサラ山にいたことを思い出すことにもしばらくかかった。頭がガンガンして、体中が痛い。多分、転んだりしたんだろう。


 周りは朝靄で……どうやら今いるのは草むらのようだった。


 気がつくと手元に……かわいらしい、手のひらに乗るような小さなウサギがやってきて僕のケガした手をペロペロなめてくれた。

 僕はなんだかほっとしてウサギをなでようとした。

 すると、他にも小ウサギが5匹くらいやってきて、僕のケガしたところをなめだして……とたんに、激痛が走った!

小ウサギたちが僕をかじりだしたんだ。

 

 僕は声をあげて小ウサギたちをふりほどいた。


 小ウサギたちは、僕から飛び退くが……僕の方にまたやってこようとする。

 僕は「あっちいけ!」痛む体でこいつらを追い払った。


 そんな中、朝霧が晴れてきて……小ウサギたちの後ろに僕の体くらいの大きさのウサギがいた。

 僕は声もでないくらい驚いた。そのウサギには牙があったから。


 大ウサギが甘い声を出すと、小ウサギたちがピョンピョンはねて僕に飛びかかってきた。

 僕はその場から逃げ出した。


 頭の中で、小さい頃に母様から図鑑を読んでもらったこと、その中に『遠い山には肉食ウサギがいて、親ウサギは子に狩りの練習をさせるために巣に生きた餌を持って行く』と教えてもらった記憶が蘇る。 


 ここの山のことなんだ!あれがそうなんだ!


 なんてことだ!


 僕は痛む脚で必死に逃げる。それでも小ウサギの方が速い。僕は頻繁に飛びかかられては体のあちこちを囓られたり、ひっかかれたりした。

 僕が疲れて止まるまでこれが続くのかと思うとゾッとした。

 足がすくむが、止まるわけにはいかない。僕は泣きながらも必死で闇雲に茂みの中を逃げ惑った。


 息が切れて、どうにも苦しい……もうこのまま、ウサギに囓られた方がいいのかな……と思うようにもなった。

 頭も囓られて、目に血が入る。苦しい。


 その時、雨が降り出した。大雨だ。

 みるみる雨は僕とウサギたちを濡らし始めた。ウサギたちは雨が苦手なようで、飛びかかる力が弱まった気がした。

 僕は僕でコートに雨が染みこんで重くなる。僕は冬雨の寒さよりも、コートを脱ぎ捨てて、身軽になることを選んだ。


 大ウサギも僕に体当たりして、僕を転ばそうとする。でも僕は必死にそれをよけたり、泥をつかんで投げて反撃しながら逃げた。

ウサギたちは水や泥が嫌いみたいで、でも僕を食べようと追いかけてくる。


 そんな中、水の音がしたので僕がそちらに行くと、大きな川があった。急な大雨で濁っている。

 僕にはもうそこしか逃げる場所はないと思った。


 僕は川に入った。

 さすがにウサギも追ってこれないだろう……と、思った瞬間

 僕は濁流に脚をとられて流れに飲み込まれてしまった。


 思ったよりも速い流れに、僕は溺れそうにになった。


 もがいた瞬間、何かにぶつかって、また僕は気を失ってしまった。


 夢を見て


 一瞬、僕は気がついた。


 川の流れが弱くなって、空が見えて、僕は必死に触れた石にしがみついた。

 浅瀬に運良くあがることができた。

 僕は泥水をたくさん吐き出した。たくさん泣いた。


 呼吸ができることを本当に感謝した。


 寒いし、体中痛いし、もう苦しくてたまらない、眠い……

 僕は重い身体を岸にあげると……動くことができなくなってしまった。




(つづく)


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